原発輸出
<声明> 無責任体制を海外にも広げる
日本政府による日立・東芝の英国原発事業への巨額資金支援に反対
~市場をゆがめ、金融機関によるリスク審査を骨抜きに~
報道によれば、日英両政府は22日、原子力分野での協力について覚書を結び、この中で日立製作所と東芝が英国で手がける原発の新規建設を協力対象として言及しました(注1)。また、日本政府が、日立・東芝の英国・原発建設事業に対して、国際協力銀行(以下、JBIC)や日本政策投資銀行を通じて、総額1兆円もの投融資を行う方針であることも報道されています(注2)。
事故リスク、訴訟リスク、住民の反対運動による事業の中止など、原発ビジネスのリスクは非常に高く 、健全な経営判断では、原発が回避される要素が強いはずですが、巨額の公的資金を使っての投融資をコミットすることは、 市場判断をゆがめ、原発ビジネスを不当に優遇することになります。
日本国内では、福島原発事故は収束に程遠く、多くの人たちがふるさとを失いました。廃炉・除染・賠償費用が 21.5兆円以上に膨れ上がり、そのかなりの部分を税金や電力料金の形で国民が担わされています。本来、責任をとるべき東電の経営陣・株主・融資者は、まったく責任をとっていません。この無責任体制を海外にまで広げようというのでしょうか。
そもそも原発に関しても、原発輸出に関しても、日本国内では反対の声が強く(注3)、特定の企業の支援のために巨額な公的な資金をつぎ込む正当性はありません。
JBICは、国際的にも先進的な環境社会配慮ガイドラインを有し、融資するという意思決定前に同ガイドラインに基づく審査を行ってきています。同ガイドラインは、 NGO 、学者、企業、政府関係者などの参加を得た透明性の高いプロセスにより策定されたものです。さらに、現在、同行は、原発に関する指針を策定するためのコンサルテーション会合を複数回開催している最中です。その議論ははじまったばかりです(注4)。
日本政府が先ばしって、JBIC などによる融資を約束することは、環境社会配慮ガイドラインを無視し、現在策定中の原発指針をできる前から蔑ろにし、正常な金融機関のリスク判断を骨抜きにするものです。強く抗議します。
別紙)ファクトシート:イギリス・ウィルファにおける新規原発計画について(PDF)
注1)挙げられているのは日立傘下のホライズン・ニュークリア・パワーが建設を進めるが英中部ウィルファの原発および東芝傘下のニュージェネレーション(ニュージェン)が英中部ムーアサイドで計画する原発。
原子力分野で覚書 日立、東芝の原発建設支援( 2016年 12月 22日、毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20161223/k00/00m/020/034000c
日英、原発建設協力で覚書 日立・東芝の案件対象( 2016年 12月 22日、日経新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXLASFS22H69_S6A221C1EE8000/
注2)「英原発に1兆円支援 政府、日立受注案件に」日本経済新聞 2016年12月15日
https://www.nikkei.com/article/DGXLASFS14H8E_U6A211C1MM8000/
注3)「原発輸出、 58 %が支持せず─支持は 24 %」時事世論調査 2013年6月16日
https://jp.wsj.com/articles/SB10001424127887323504304578548021311724266
原発再稼働に反対6割 本社世論調査 政府の復興対応「評価せず」52% 2016/2/29付日本経済新聞 朝刊
https://www.nikkei.com/article/DGXKASFS28H1F_Y6A220C1PE8001/
注4)「原子力関連プロジェクトにかかる情報公開指針(仮称)」の作成について
https://www.jbic.go.jp/ja/efforts/environment/consultation
JBIC/NEXI の「原発指針」に対して NGO 4団体が共同提言を提出
https://www.foejapan.org/energy/news/160128.html
以上
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