原発輸出
緊急声明「ベトナムの原発計画白紙撤回を受けて:現実を見据えた冷静な判断に敬意
日本政府は無責任な原発輸出政策をやめるべき」
本日(11月22日)、ベトナムの国会は、同国中南部のニントゥアン省に建設することになっていた同国初の原子力発電所の計画を中止するという政府提案を可決しました。92%の議員が賛成したと報じられています。中止の理由としては、福島第一原発事故を受けた原発発電単価の上昇により、原発に経済競争力がなくなったこと、ベトナムの対外債務の深刻化、核廃棄物の処理問題(注1)、住民の環境意識の高まり(注2)などが挙げられています。同省2か所に予定されていた原発には、日本およびロシアが受注を予定していました。
私たちは、ベトナム政府および国会が、福島原発事故の実態を受け止め、現実を見据えた冷静な判断を行ったことに心からの敬意を表したいと思います。また、日本政府に対して、これ以上、無責任な原発輸出政策をやめるように強く求めます。私たちはまた、今回のベトナムの決定の過程において、日越両国の多くの心あるNGOや市民・学者たちが問題提起を継続してきた努力に対しても敬意を表します。
FoE Japanとしては、当初からベトナムへの原発輸出に関する調査や情報発信活動に取り組み(注3)、経済産業省の補助金や復興予算など多くの国税を費やした不透明な事前調査のあり方などを指摘してきました。
今年10月には、ベトナムにおいて国会議員も多数参加する国際ワークショップに参加。いまなお続く福島原発事故の被害、社会や環境に与えた影響、多くの人たちがふるさとを失っていること、「原発さえなければ」と書き残して自死した酪農家のこと、事故の被害額が13兆円を超え、東電が賠償を払いきれずに広く国民が負担していることなどを伝えました(注4)。
日本は、経済産業省の補助金(「低炭素発電産業国際展開調査事業」)や委託事業で、合計約28億円を日本原電に流し込み、実施可能性調査を実施しました(注 5)。このように、ニントゥアン原発は、日本側が官民で売り込み、税金を使い、トップセールスを繰り返して勝ち取ったものでした。この過程で、ニントゥアン省の建設立地現地の住民は、巨大事業に振り回され、移転を迫られ、将来設計を困難にさせられてきました(注6)。
私たちは、福島原発事故の甚大な被害で多くの人たちが苦しんでいる最中に日本政府がなお、原発輸出を推進することは、非倫理的であると考えます。また、日本が輸出すべきは、福島原発事故の被害を踏まえた、原発に頼らない持続可能な社会を構築するための哲学や、再生可能エネルギーや省エネ技術であると考えます。
注1)ベトナム・原発からの「勇気ある撤退」の理由とは
https://foejapan.wordpress.com/2016/11/19/vietnam-4/
注2)ベトナム、原発計画中止 日本のインフラ輸出に逆風
https://www.nikkei.com/article/DGXLASGM22H7Z_S6A121C1000000/
注3)日本からの原発輸出は見直すべき ――ベトナム原発建設予定地を調査
https://www.foejapan.org/energy/news/111121.html ほか
注4)ベトナムで原発に関し国会議員やNGOらと意見交換を行い、福島原発事故の被害について訴えました
https://foejapan.wordpress.com/2016/10/
注5)ベトナム原発の建設調査に国税二五億円――復興予算流用!使い道不透明 https://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/?p=3862
なお、この記事の後新たに追加調査の名目で3億円の調査が日本原電に発注されています。
注6)ベトナム 原発計画を撤回!?-オールジャパンの売り込み攻勢の影で
https://foejapan.wordpress.com/2016/11/10/vietnam-2/
国際環境NGO FoE Japan
〒173-0037 東京都板橋区小茂根1-21-9
Tel:03-6909-5983 Fax:03-6909-5986
https://www.foejapan.org/
ご支援のお願い |