原発輸出
声明 日印原子力協定締結に抗議
「核廃絶を願うすべての人々を裏切り、福島現原発事故の被害を無視する行為
」
本日、日印首脳会談が開かれ、日印原子力協定が調印されました。
私たちはこれを、核廃絶を願うすべての人々を裏切り、福島原発事故の被害を無視する行為として、強く抗議します。私たちはまた、国会議員に対して、核廃絶と脱原発を願う市民の声に耳を傾け、日印原子力協定を批准しないように求めます。
1.国際的な核廃絶の努力に大きな悪影響
日印原子力協定は、被爆国である日本が、 NPT や CTBT (包括的核実験禁止条約)を批准せず、核兵器を所有するインドの立場を認めたことにはほかならず、国際的な核廃絶の努力に大きな悪影響をもたらすことになります。 すでに広島・長崎両市長は昨年の段階で、原子力協定の反対を訴えています。両市長の反対要請は、全被爆者、全世界の核廃絶の願いをあらわしたものです。
昨年の日印首脳会議の際に採択された共同声明の中で、「必要な国内手続に関するものを含む技術的な詳細が完成した後に署名されることを確認した」と書かれていますが、詳細はまったく明らかになっていません。「核実験の際に協力停止」と報道されていますが、核実験を含む核競争をふせぐための国際取り決めが、NPTでありCTBTであったはずです。
なお、いままで日本は原子力協定締結の際、相手側の放射性廃棄物の再処理を認めてきませんでした。もし、日本がインドに対して、日本が協力する原発の使用済み核燃料の再処理を認めるとすれば、プルトニウムの取り出しを許すことになります。たとえ「軍事転用をしない」という約束をとりつけたとしても、インドがプルトニウムを取り出すという事実には変わりなく、今までの原子力協定の一線を大きく踏み越えるものです。世界にとっては大きな脅威になります。
2.南アジアの安定をおびやかす
パキスタンとの軍拡競争を繰り返しているインドに対して原子力協力を行うことは、南アジアの安定を大きく損なうものです。インドはIAEAの追加議定書を批准していますが、民生利用と軍事利用の核施設を分け、 前者のみをIAEAの査察対象としており、原子力の軍事利用に歯止めをかけられる保証とはなりません。
3.インドにおける原発のリスク
インドでは、たびたび原発の事故が発生しています。
最近では 2012 年7月に、インド西部ラジャスタン州ラワトバタの原発で、点検作業中に放射性物質がポンプから漏れだし、作業員4人が被曝した。ラワトバタの原発では同年6月に定期点検中に被曝事故が起き、作業員2人が放射性物質トリチウムを大量に吸い、被曝したとされていますが、その後、被曝者が38人に増えたという報道があります。
インドの原子力発電の安全管理体制の問題も指摘されており、IAEA は 2015 年インド原子力規制委員会(AERB)の独立性を法的に強化すべきとのレポートをインド政府に提出しました。インドの再処理施設(カルパッカム)は放射性廃棄物の放射線濃度をモニタリングする十分な施設を兼ねそろえていないという指摘もあります。最古の原発であるタラプールの放射能漏れは有名で、1992 年には放射能漏れ事故が確認されています。
しかし、これらの事故については、しっかりとした調査報告が公開されていない状況です。
また、広大な国土を有し、送電ロスが大きく、分散型の再生可能エネルギーの潜在能力が高いインドにおいて、大資本による原子力の推進は、持続可能な分散型エネルギーの発達を阻害し、住民にリスクを押し付け、地域の活力を奪うことになりかねません。
4.インド国内での反対運動の弾圧
さらに、インドにはすでに20基以上の原発がありますが、各地で繰り広げられる、地域住民の非暴力の反原発運動に対して、インド政府は暴力的に鎮圧しており、死者がでる事態も発生しています。
長年、インドでは根強い反核と脱原発の市民活動が行われてきました。原発の安全性への懸念、健康被害、原発立地における強制的な土地収用、文化的な喪失を理由に多くの市民が反対活動を展開しています。長年反対運動が続いて来たクダンクラムでは、 福島原発事故以降に反対運動が再加熱したが、反対運動の中心の一つであった村には戒厳令が敷かれ、ハンストや不服従行動に参加した 100 人以上の村人が逮捕されました。
5.福島原発事故は終わっていない
日本では福島第一原発事故の結果、多くの人々がふるさとを失う事態となりました。広範囲にわたり拡散され続けている放射性物質が国土を汚染し、事故の費用はふくれあがる一方です。このような状態で、無責任に原発を輸出し、他国の住民を危険にさらす非倫理性は到底看過できるものではありません。
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