原発輸出
【緊急声明】日印原子力協定「大筋合意」(覚書MoU締結)報道を受けて
~世界の核不拡散体制をゆるがし、福島原発事故の痛みを忘れた 無責任な原子力協力は許されない~
(写真下 原子力協定、武器輸出に反対する官邸前抗議集会)
本日、12月12日に開催された日印首脳会議において、原子力協定が「大筋合意」され(注1) 、原子力協定に関する覚書(MoU)が締結された(注2)と報道されています。
事前報道によれば、「使用済み核燃料を核兵器に転用しないという確約にめどがだった」(NHK注3)、「インドが核実験を実施した場合、日本が協力を停止する規定を盛り込む」(産経新聞注4)などと報道されていますが、MoUの詳細は現時点では明らかになっていません。
いずれにせよ、協定が締結に至れば、はじめてのNPT(核不拡散条約)非加盟国との原子力協定となり、日本が守ってきた核廃絶の国是を大きく損なうことには変わりありません。被爆国である日本が、NPTやCTBT(包括的核実験禁止条約)を批准せず、核兵器を所有するインドの立場を認めたことにはほかならず、国際的な核廃絶の努力に大きな悪影響をもたらすことになります。
もし、日本がインドに対して、日本が協力する原発の使用済み核燃料の再処理を認めるとすれば、原子力協定としてははじめてのことになります。たとえ「軍事転用をしない」という約束をとりつけたとしても、インドがプルトニウムを取り出すという事実には変わりなく、今までの原子力協定の一線を大きく踏み越えるものです。世界にとっては大きな脅威になります。
パキスタンとの軍拡競争を繰り返しているインドに対して原子力協力を行うことは、南アジアの安定を大きく損なうものです。
インドはIAEAの追加議定書を批准していますが、民生利用と軍事利用の核施設を分け、 前者のみをIAEAの査察対象としており、原子力の軍事利用に歯止めをかけられる保証とはなりません。
なによりも、福島原発事故を起こし、多くの被害者が苦しんでいるさなかに、斜陽ビジネスである原子力産業を救済するために他国に原発を輸出し、他国の住民を危険にさらす非倫理性は到底看過できるものではありません。
現在インドでは22 の原発が稼動していますが、多くの原発立地で市民による命がけの反原発抗議が展開されています。クダンクラムやジャイタプールなどでは建設に反対する住民の非暴力行動を、警察が暴力的に鎮圧し、死者やけが人もでています。
広大な国土を有し、送電ロスが大きく、分散型の再生可能エネルギーの潜在能力が高いインドにおいて、大資本による原子力の推進は、住民にリスクを押し付け、地域の活力を奪うことになりかねません。
私たちは、一部の企業の目先の利益追求のための、中央集権的で危険な原発輸出と武器輸出を進めることは、両国の社会および国際社会に大きな悪影響をもたらすものとして強く抗議します。
軍事や原子力ではなく、環境的に持続可能な社会の実現のための協力に転換することを求めます。
国際環境NGO FoE Japan
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注1)2015年12月12日 16:29 日本経済新聞「日印、原子力協定で「原則合意」 NPT非加盟国では初」
注2)Hindustan times India, Dec 12, 2015 13:37 IST “Japan sign MoU on civil nuclear energy, bullet train”
注3)2015年12月12日 11時53分NHK「日印首脳会談 原子力協定締結で大筋合意へ」
注4)2015年12月12日 8時58分 産経新聞 「日印、原子力協定で大筋合意 『核実験なら協力停止』規定、インドが譲歩 声明盛り込みへ」
インドの脱原発活動を行うリーダーたちと (2015.11.4撮影) |
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2015.11.25 イベント 日印原子力協定阻止キャンペーン - インドへの原発輸出反対!
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