日本のエネルギー政策
声明:民意からも現実からも乖離した第5次エネルギー基本計画の閣議決定に抗議する
本日(7月3日)、第5次エネルギー基本計画が閣議決定されました。
多くの市民団体が繰り返し要請したのにもかかわらず、公聴会などは開かれず、
パブリック・コメントについても「集めた」だけであり、締め切りから2週間あ
まりで閣議決定してしまいました。
国際環境 NGO FoE Japan
第5次エネルギー基本計画の閣議決定に抗議する
本日(7月3日)、第5次エネルギー基本計画が閣議決定されました。 私たちは、民意からも、現実からも乖離した今回の決定に強く抗議します。
1.非民主的な決定プロセス
エネルギー政策の立案に関しては、多くの市民団体が繰り返し要請したのにもかかわらず、公聴会などは開かれず、パブリック・コメントについても「集めた」だけであり、締め切りから 2 週間あまりで閣議決定してしまいました。パブリック・コメントを踏まえた公開の場での議論や、多少の文言の追加はあるにしろ、内容への反映は行われませんでした。 パブリック・コメントの対応表を見る限り、論拠を上げて脱原発の必要性を指摘する意見が多かったのに対して、それに対するまともな回答はありません。
策定のプロセスにおいて、審議会メンバーのほとんどは、脱原発を願う一般市民の声をほとんど考慮することなく、世論から乖離した発言を繰り返しました。「ご意見箱」によせられた意見についても分析や検討等はされませんでした。
このようなプロセスは、我が国のエネルギー政策の非民主的性格をあらわすものです。エネルギー基本計画の中では、繰り返し「国民の信頼の回復」という言葉が使われ、また、「一方的に情報を伝えるだけでなく、丁寧な対話や双方向型のコミュニケーションを充実することにより、一層の理解促進を図る」としていますが、まったくの空文です。これが是正されない限り、エネルギー政策に対して、国民の信頼を得ることはできません。
2.「ファクト」のねじまげと、無視された重要な「ファクト」
本計画では、原発は「運転コストが廉価」である、原発は「安定供給に優れている」、原発は「準国産」、再生可能エネルギーは「火力に依存している」、「世界で最も厳しい水準の規制基準」など、明らかな誤りが繰り返し記述され、原発維持を正当化するような誘導が行われています。一方で、以下のような重要なファクトは無視されてしまっています。
東京電力福島第一原発事故はいまだ継続中で、甚大で回復不可能な被害が広範囲にわたり生じている。ふるさとや文化、自然や人々のつながりが失われた。いままでの暮らしが失われた。各地で住宅の提供を打ち切られた避難者が困窮し、貧困化している。人々は分断されてしまっている。被ばくによる健康リスクと不安が生じているが、それを口にすることすらだきない空気となっている。事故原因の究明は終わっていない。廃炉・除染・賠償等の費用が膨れ上がり、政府試算でさえ 21.5 兆円、さらに上振れするといわれている。大量の除染土は行きどころがなく、公共事業で使うというような方針が出されている。
原発をめぐる根本的な問題:解決できない核のゴミ問題、事故リスク、コスト、被ばく労働、大規模集中型の電源ゆえの脆弱性…
国民の多くが原発ゼロを望んでいる。 2012 年に行われたエネルギーの未来に関する「国民的議論」においては、検証委員会は、「少なくとも過半の国民は原発に依存しない社会にしたいという方向性を共有している」と結論づけ、政府は、原発ゼロの方向性を盛り込んだ革新的エネルギー・環境戦略を策定した。世論の傾向はその後も大きな変化は見られない。
原発の建設費用が激増している。たとえばトルコで三菱重工などが計画しているシノップ原発(2基)当初2兆円が4兆円に。イギリスで日立が計画するウィルヴァ原発(2基)は3兆円に倍増。
東芝が、原発事業が原因で、経営破綻しかけた。
東京電力は、福島第一原発事故により実質破たんしたが、「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」を経由した公的資金や各地の電力会社からの資金により、延命している。それにもかかわらず、東電は原発事故被害者への賠償を値切り、 ADR の和解勧告を拒否し続けている。
現行の原子力規制基準やその運用は原発の安全を保障するものではない。
核燃料サイクルは破たんしており、まったく実現のめどがたっていない。
3.再処理の放棄でプルトニウムの削減を
プルトニウムの削減をプルサーマルの推進に求めることは、まったく本末転倒です。これ以上、プルトニウムを増やさないためにも、再処理から撤退すべきです。
4.抜本的なエネルギー政策の見直しを
私たちは、東電福島第一原発事故への深い反省や解決不可能な核のゴミ問題など、原発をとりまく厳しい情勢、気候変動はまったなしの課題であること、また近年のエネルギー情勢の変化を踏まえ、抜本的で民主的なエネルギー政策の見直しを行うべきだと考えています。
1)早期の脱原発を明記すべき
2)すでに破たんしている核燃料サイクルを中止すべき
3)原発輸出は撤回・中止すべき
4)石炭火力推進はパリ協定に逆行、新増設・輸出は中止すべき
5)持続可能な再生可能エネルギーの推進と、エネルギー需要削減を
6)地産地消で小規模分散型のエネルギー構造を
国際環境 NGO FoE Japan
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TEL: 03-6909-5983 / FAX: 03-6909-5986
※第5次エネルギー基本計画
https://www.meti.go.jp/press/2018/07/20180703001/20180703001-1.pdf
※パブリック・コメントの結果について
https://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000175672