日本のエネルギー政策
意見書「原発活用で地球温暖化対策はできません」
総合資源エネルギー調査会基本政策分科会
分科会長 坂根 正弘様
意見書「原発活用で地球温暖化対策はできません」
原子力資料情報室 / 気候ネットワーク / FoE Japan
eシフト(脱原発・新しいエネルギー政策を実現する会)
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前回11月28日の総合資源エネルギー調査会基本政策分科会の最後に、坂根分科会長は、地球温暖化対策目標の達成に原発活用をと、次回会合に向けてのコメントをしていました。しかし、地球温暖化対策に原発が貢献すると考えることは、誤りです。そのことは、京都議定書の目標達成に原発推進を織り込んだ失敗によって、すでに明らかではないでしょうか。
当時、2010年までに稼働と計画されていた21基の原発のうち、運転に入ったのは、2017年まで延ばしても4基のみ。8基は計画が中止されています。運転に入ったものも、何かトラブルがあればすぐに止まり、複数基の同時停止や長期停止も珍しくありません。
省エネルギーなど他の有効な対策を先送りにして原発を活用することで机上の数字合わせをしても、裏切られて目標達成計画の頓挫を迎えることは確実と言ってよいでしょう。柏崎刈羽原発の2~4号機は、11年間も止まったままです。12月22日に関西電力が大飯原発1、2号機の廃止を決定したように、今後、廃止あるいは建設中止となる原発も、増え続けます。福島原発事故を経験したことで、原発の活用はよりいっそう不安定なものとなっています。
また、原発とともに石炭火力をベースロード電源と位置付けることで、2012年以降の石炭火力発電所の計画は46基にものぼります。2030年のエネルギーミックスや国の温室効果ガス削減目標も大幅に超過する規模です。原発を推進すれば石炭火力を減らすことには、始めからなっていないのです。原発推進賛否の攻防に注目を集めることが、石炭火力建設の隠れ蓑の役割を果たしています。
何より原発は地球温暖化対策に最も大きな効果のある省エネルギーに逆行します。前述のように、省エネルギー対策を先送りする働きをするからです。
再生可能エネルギーについて出力調整用の発電所が必要と強調されていますが、資源エネルギー庁が「硬直化電源」と呼んでいたように、原発や石炭火力こそ調整用の発電所が絶対に必要です。原発や石炭だけを増やすことはできません。設備容量が過剰となり、電力会社は、ますます需要拡大に走ることになります。
さらに原発や石炭火力のような大規模電源を中心とした電力供給システムは、再生可能エネルギーの普及の妨げとなります。実際に、原発を優先的に動かすため、再生可能エネルギーの供給が制限されています。
加えて、原発が多額の税金を独り占めしていることは、省エネルギーや再生可能エネルギーの邪魔をし、その意味でも地球温暖化対策に逆行しています。日本のエネルギー研究開発予算の6割強が原子力に振り分けられているのです。福島原発事故前の「京都議定書目標達成計画関係予算」を見ると、1割以上が原子力に、しかも電源立地地域への交付金や高速増殖炉サイクル技術といった、およそ役に立たないものに投じられていました。
私たちは、そうした非現実的な原発活用論を改め、将来世代にツケを残さないためにも、省エネルギーと再生可能エネルギーを中心としたエネルギーシステムへの転換をこそ進めるべきであると考えます。
連絡先:原子力資料情報室 東京都新宿区住吉町8-5曙橋コーポ2階B TEL:03-3357-3800
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