eシフト
【声明】
原発ゼロシナリオ+省エネ/再エネ強化で持続可能な社会を
eシフト(脱原発・新しいエネルギー政策を実現する会)
先月29日、エネルギー・環境会議で「エネルギー環境に関する選択肢」が決定しました。将来のエネルギー・環境のあり方について選択肢として示されたのは、2030年時点の発電電力量における原発の割合を基準とした①ゼロシナリオ、②15シナリオ、③20~25シナリオの3つでした。
eシフト(脱原発・新しいエネルギー政策を実現する会)は、2011年3月11日に起きた悲惨な原発事故の経験を踏まえ、また原発の倫理性や経済性から判断し、以下のとおり声明を発信します。
1.脱原発依存を選択するには①ゼロシナリオしかありえない
2.②15シナリオは原子炉の新規建設を可能とする原発温存シナリオである
3.③20~25シナリオは原発推進シナリオであり、論外
4.3つの選択肢から、真ん中の中庸に見える②15シナリオへ誘導していないか
5.望ましい選択肢には、多様なゼロシナリオが用意されるべき
6.パブリックコメント、意見徴収会や討論型世論調査の期間が短すぎる
7.公正な情報提供が無ければ、意見徴収会や討論型世論調査の枠組みは不十分
8.国民的議論の実施方法について、市民の意見を反映させるべき
9.核燃料サイクル問題、再処理、もんじゅの決定が隠されている
1. 脱原発依存を選択するには①ゼロシナリオしかありえない
脱原発を実現するためには、2030年時点で0%という選択だけでは不十分であり、できるだけ早期に0%を実現することが必要です。今年の5~6月は、すでに原発0%を実現した実績もあります。0%シナリオの中に、いつ0%を実現するのかという選択があってしかるべきではないでしょうか。あえて、政府提案の3つの選択肢から選ぶとすれば、0%シナリオしかありえません。
2. ②15シナリオは原子炉の新規建設を可能とする原発温存シナリオである
2030年15%というのは、既設の原発を減価償却が終了する40年間まで運転を続行し、電力会社、原子力産業界、財界が経済的な負担を回避するための原発温存シナリオで、脱原発依存にはふさわしくありません。15%を守るために、立て替えや新設による新規原子炉の建設の恐れも含んでいます。
3.③20~25シナリオは原発推進シナリオであり、論外
2030年20~25%というのは、40年で廃炉にする原子炉を考慮すれば、数多くの原発を新規に増設するシナリオで、原発推進シナリオに他ならない論外の選択肢で、現実的ではありません。
4.3つの選択肢から、真ん中の中庸に見える②15シナリオへ誘導していないか
日本の慣習では、意見が分かれたときに足して2で割る案を選択する、中庸の案を選択させ無難に決めるという文化があります。この3つのシナリオの提示は、国民の多くを真ん中の②15シナリオへ誘導する、原発を続行するための恣意的な選択肢の提示に他ならないでしょう。
5.望ましい選択肢には、多様なゼロシナリオが用意されるべき
ゼロシナリオでは、脱原発の時期が明確になっておらず、電力システム改革や産業構造の転換など具体的な道筋が示されていません。また、省電力を1割しか見込んでいないため、化石燃料への依存度が高く、再生可能エネルギーの導入見込量も不十分です。さらには、温室効果ガス排出量は1990年比で2020年に0~7%削減と京都議定書第一次約束期間の削減義務である6%削減から時間を逆戻しするようなシナリオであり、2030年でも23%削減という持続可能な社会への道筋をつくるものではありません。
よって、ゼロシナリオのパッケージ全体を支持できるものにはなっていません。
政府が出した「ゼロシナリオ」に対して、さらに踏み込んだシナリオが必要です。エネルギーシナリオ市民評価パネル(エネパネ)では、そのためのエネルギーシナリオの論点を提示し、そのような論点を踏まえたNGOのシナリオを紹介しています。それらのシナリオでは、脱原発と気候変動対策を両立させ、持続可能な社会を目指して行くことは可能であることが示されています *。
電気のロスをなくし、無駄に捨てている熱を有効に利用していくことで、家庭や業務の分野だけではなく産業分野も含めて省エネを大幅に進めること、産業構造転換も視野にいれグリーン産業や雇用を生み出すような産業を大きく育てること、石炭利用を減らすこと、電力システムの構造を分散型地域エネルギーへとシフトさせていくこと、電力自由化や発送電分離を進めること、それらによって大幅に再生可能エネルギーを増やすことが可能なのです。こうした選択肢が示されてこそ、私たちはその選択肢を未来の姿として選び、希望を見いだすことができます。
6.パブリックコメント、意見徴収会や討論型世論調査の期間が短すぎる
今回の「選択肢」には、内容面の問題だけではなく、決定までのプロセスにも問題があります。今回、日本の原発依存脱却に向けた未来を決める重大な決定をするにも関わらず、6月29日の提示からたった一ヶ月でパブリックコメント募集を締め切り、1ヶ月にも満たない期間での情報提供、意見聴取会や討論型世論調査などを一部の人たちだけで行って、来月には結論を出すという強行スケジュールです。
昨年の原発事故以降、多くの国民が脱原発の声をあげており、官邸前には10万人以上の人が集まってその意思表示をしています。今までになかったムーブメントも起きている中、たった1ヶ月で“国民的議論”と呼ぶにはあまりにもお粗末なアリバイづくりです。メディアなどを通じて十分な時間をかけて周知徹底し、議論を深め、民主的な決定をしていくことが不可欠です。
7.公正な情報提供が無ければ、意見徴収会や討論型世論調査の枠組みは不十分
意見聴取や無作為抽出市民における討論型世論調査において、前提として説明される情報は大きな影響を及ぼします。福島原発事故において、被害住民が置かれている現状、被害額の大きさ、人が住めない汚染地域の出現、事故収束の方法やめどすら立たない原発事故、地震国日本における原発の危険性などに関しての情報を提供した上での議論を行わなければ、公平な国民的議論とはいえません。
8.国民的議論の実施方法について、市民の意見を反映させるべき
ドイツでは、十数時間にわたる原発是非の討論をテレビ放送した上で、2020年までに原発を0%とする方針を決定しました。
日本においても、公正な国民的議論を実施するためには、公共放送であるNHKが原発の是非に関する討論番組を十分な時間放送し、そのうえで国民の意見集約をおこなうなど、充実した方法が必要です。
現在提案されている国民的議論に加えて、市民が提案する国民的議論の方法を追加すべきだと考えます。
9.核燃料サイクル問題、再処理、もんじゅの決定が隠されている
今回の選択肢では核燃料サイクル問題を選択できる構造にはなっていません。
①ゼロシナリオのみが再処理中止を含み、②15シナリオや③20~25シナリオでは自動的に再処理の続行、六ヶ所運転が選択されてしまうという図式の問題があります。②15シナリオや③20~25シナリオは、いずれも非現実的であるばかりか、危険で使い道のないプルトニウムを取り出す使用済み核燃料再処理の継続さえ含んでいるのです。
極端:中庸:極端、という形で、真ん中の「中庸」の選択を誘導し、その場合は自動的に再処理が国民の選択とするというのが原子力委員会の提案ではないでしょうか。
政府は、再処理については後で政府が決めると言いつつ、最終的にこの論理を使う可能性が高いと思われます。再処理問題についても、国民に明示し、選択肢を用意すべきです。
私たちeシフトでは、こうした問題を多くの人たちと共有し、将来の脱原発と新しいエネルギー政策を実現させたいと考えています。
*報告書『エネルギー・環境のシナリオの論点』
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