脱原発・エネルギーシフトに向けて
原子力災害対策指針改定案~FoE Japanもパブコメ出しました
~SPEEDIの活用を 30km以遠にもヨウ素剤配布を 無用な被ばく招く一日遅れての避難指示判断
原子力災害対策指針改定についてのコメント
1.SPEEDIなど放射性物質の拡散予測の活用や、気象データ・大気中拡散解析は、緊急時モニタリングと併用して、活用すべきである。
平成27年3月4日の原子力規制委員会資料「東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故の教訓を 踏まえた防護措置とSPEEDIの運用について」には、原子力規制委員会の考え方が示されているが、それぞれ疑義がある。
「従来の考え方では、SPEEDI等によって推定できるとした予測線量をもと に、各防護措置について定められた個別の線量基準に照らして、どのよう な防護措置を講ずべきかをその都度判断するとしていた。しかしながら、 こうした防護戦略は、実際には全く機能しなかった。」
⇒実際には機能しなかったのは、①ソースタームが入力できなかった、②「混乱をまねく」として一般への公開を避け、自治体への連絡をしなかったという運用の問題が大きいと考えられる。SPEEDIへの過度の期待は禁物ですが、避難方向などの判断の参考にはできたはず。
直ちに必要な防護措置を実施できることから、予測的手法を活用する必要性がない。
⇒EALに基づく防護措置のことをさしていると考えられるが、SPEEDIを併用しない理由にはならない。
SPEEDI等の予測的手法によって、放射性物質の放出のタイミングや放出量、その影響の範囲が正確に予測されるとの前提に立って住民の避難を実施する等の考え方は危険
⇒SPEEDIを参考として併用すればよいのであり、むしろ「炉の状況により必要な防護措置をただちに実施できる」という思い込みの方が危険である。
以下のSPEEDIに関する記述は、削除するべきではない。
(p.6-7)なお、国は、例えば緊急時モニタリングによって得られた空間放射線量率等の値に基づくSPEEDIのような大気中拡散シミュレーションを活用した逆推定の手法等により、可能な範囲で放射性物質の放出状況の推定を行う。また、原子力事故の拡大を抑えるために講じられる措置のうち、周辺環境に影響を与えるような大気中への放射性物質の放出を伴うものを実施する際には、気象予測や大気中拡散予測の結果を住民等の避難の参考情報とする。
2.30km以遠の防護対策については、安定ヨウ素剤の備蓄・事前配布も含めるべきである。
30km以遠について安定ヨウ素剤の備蓄や事前配布も行うべきである。また、30km以遠においても、一時退避や避難が必要になることがあることを、明記すべきである。
たとえば、兵庫県が実施したシミュレーションでは、約100km離れた避難先でも高い被ばく予測が出ている。高浜町の住民が避難する兵庫県三田市では、甲状腺の等価線量が134.9ミリシーベルト、京都北部の舞鶴市民が避難する神戸市でも60.4ミリシーベルトとなっており、IAEAの安定ヨウ素剤服用基準50ミリシーベルトを超えている。30km圏外の篠山市は、独自に安定ヨウ素剤の事前配布を決めている。
原子力規制委員会が、「屋内退避で十分」としている根拠は不明であるが、平成26年5月28日の「緊急時の被ばく線量及び防護措置の効果の試算について」が、原子力災害事前対策等に関する検討チームに示されていた。
https://www.nsr.go.jp/data/000050020.pdf
もしこれが根拠であれば、以下の点でたいへん不適切である。
1)前提条件が甘すぎる
セシウム137が100テラベクレル、その他核種がセシウ ム137と同じ割合で換算された量、さらに希ガス類が全量、環境中に放出 されるような仮想的な事故を想定。
⇒「Cs-137 の放出量が 100TBq を下回っている」とは、あくまで安全目標である。福島原発事故の100分の1以下のレベルである。深層防護の考え方に基づき、施設側の安全対策がうまくいかなかったという前提で、安全対策をたてなければならない。
2)屋内退避の効果を過大評価すべきではない。
実験や実測に基づかず、文献のみに基づいている。また、木造家屋25%、コンクリート建物50%としているが、これが正しいとしても、たいした効果とはいえない。
また、建物の遮蔽効果は時間とともに低下していくことが報告されているが、それを踏まえていない。
3)屋内退避を長期間続けることは被ばくリスクが高まり、心身の負担が大きい
上記の通り、屋内退避の効果はさほどなく、屋外ほどでないしろ被ばくし続けることを意味する。また、住民にとっては心身の負担も大きく、場合によっては生活必需品や燃料、医療品の欠乏により、たいへんな困難に直面することもありうる。こうしたリスクを過小評価すべきではない。
3.福島県民健康調査で、明らかになってきている甲状腺がんの発生状況について分析すべきである。
現在の原子力災害対策指針は、被ばくを過小評価し、避難を最小限にとどめ、「屋内退避」に過度に依存した内容となっている。
一方で、原発事故との関連性についてはいまだ「不明」とされているが、福島県民健康調査で、甲状腺がん悪性と診断された子どもは、悪性疑いも含め117人に(2月12日、福島県県民健康調査委員会)2巡目で甲状腺がん疑い8人、一人確定。手術を終え、甲状腺がんと確定した子どもは86人。
これらの子どもたちの多くは、原発から30km以遠に居住していた。
2巡目甲状腺がん疑いの8人の詳細は以下の通りである。
性別:男の子4人、女の子4人
年齢:震災当時6~17歳、
腫瘍径:6~17.3mm
自治体:浪江町、伊達市、田村市、大熊町、福島市
前回検査:A 判定が8 人(A1 が5 人、A2 が3 人)
病理結果が発表された55例中、2例が低分化癌、74%がリンパ節転移
原子力規制委員会は、このような状況を十分分析し、現在のPAZ、UPZでよいか、また、プルーム対策をどうするのかを真剣に検討すべきである。
4.30km以遠の防護措置に関して、記述を明確化すべきである。
30km以遠の防護措置に関しては以下が追加された(p.6)
「原子力施設から著しく異常な水準で放射性物質が放出され、又はそのおそれがある場合には、施設の状況や放射性物質の放出状況を踏まえ、必要に応じて予防的防護措置を実施した範囲以外においても屋内退避を実施する。」
しかし、「原子力施設から著しく異常な水準で放射性物質が放出され、又はそのおそれがある場合」に関しては、どのような場合であるのか明確ではない。記述を明確化すべきである。
5.PPAに関連する記述を削除するべきではない。
以下についてはプルーム通過時の防護措置の必要性に関する重要な記述であり、削除すべきではない。
(p.3)プルーム通過時の被ばくを避けるための防護措置を実施する地域(PPA:Plume Protection Planning Area)の検討UPZ外においても、プルーム通過時には放射性ヨウ素の吸入による甲状腺被ばく等の影響もあることが想定される。つまり、UPZの目安である30kmの範囲外であっても、その周辺を中心に防護措置が必要となる場合がある。
プルーム通過時の防護措置としては、放射性物質の吸引等を避けるための屋内退避や安定ヨウ素剤の服用など、状況に応じた追加の防護措置を講じる必要が生じる場合もある。また、プルームについては、空間放射線量率の測定だけでは通過時しか把握できず、その到達以前に防護措置を講じることは困難である。このため、放射性物質が放出される前に原子力施設の状況に応じて、UPZ外においても防護措置の実施の準備が必要となる場合がある。
6.「空間放射線量率(1時間値)がOIL2の基準値を超えたときから起算して概ね1日が経過した時点の空間放射線量率(1時間値)がOIL2の基準値を超えた場合に、防護措置の実施が必要であると判断する」を削除すべきである。
(p.39)今回の改訂で、OIL2である20μSv/時を越える空間線量率が観測されて1日経過した時点での空間線量率が再度20μSv/時を超えた場合に、防護措置の実施について判断するとしている
しかしこれでは、20マイクロシーベルトを超えたとしても、1日経過した地点ではじめて1週間以内の一時移転という判断が下されることになる。
これでは住民は、強い被ばくにさらされた環境下で長時間放置されることとなる。
福島原発事故においては、翌日の夕方には、20km圏内に避難指示がだされた。
今回の改訂は、福島原発事故時から、大きく後退したものになる。
パブコメの出し方:インターネットでも、郵送でも、ファックスでも出せます。 https://www.nsr.go.jp/procedure/public_comment/20150305_01.html 【郵送およびファックスの場合】 意見提出書式(PDF) |
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