脱原発・エネルギーシフトに向けて
Q&A これでいいの?原子力規制委員会
2012年9月19日、原子力規制委員会(以下、規制委員会)が発足しました。この人事については、原子力事業者の委員への就任を禁じた原子力規制委員会設置法に違反することが日弁連、国会議員、市民から指摘されるなか、国会の同意なしで、総理大臣による任命が強行されました。
今後の原子力行政を担ういちばん重要な機関となる規制委員会ですが、すでに重要な問題が浮かび上がっています。その問題点をまとめました。
原子力規制員会の人事や組織の概要については、こちらをご覧ください。
>https://hinan-kenri.cocolog-nifty.com/blog/2012/10/post-0045.html
Q.規制委員会はどんな権限をもつの? |
A:原発を動かすのも、止めるのも、規制委員会の権限に
今年6月に改正された原子炉等規制法では、原発の設置許可や、基準を満たしていない原発の使用停止は規制委員会が行うとされています(第43条の3の6、第32条の3の23など)。
>https://hinan-kenri.cocolog-nifty.com/blog/2012/10/post-ee9b.html
これまでこの権限を負っていたのは経済産業大臣、理論上では国民や国会の監視の届く、選挙によって落選させることもできる立場の人でした。この巨大な権限を、民意がまったく届かない規制委員会が負うことは適切でしょうか?
Q.大飯原発の運転続行、大間原発の建設再開――規制委員会の判断は? |
A:「政治的なことには関与しない」と容認
規制委員会の田中俊一委員長は、「政治的なことには関与しない」と繰り返し述べ、再稼働などの判断は日本政府や事業者が負うものとしています。結果的には、大飯原発の運転続行や大間原発の建設再開を容認してしまっています。
規制委員会が科学技術的なことだけに責任を負うにしても、福島原発事故を踏まえた科学技術的な審査は終わっていません。そんな状況で、大飯原発の運転続行、大間原発の建設再開を容認すべきではありません。
Q.自治体が防災計画を策定するための指針は、どのようなもの? |
A:いま、原子力災害対策指針(防災指針)が、わずか1か月の審議で策定されようとしています。
30km圏内の自治体は、この指針に基づいて、年度内に原発事故防災計画を決めることになっています。
しかし、福島原発事故では、60km範囲の中通りにも重大な汚染が広がりました。「重点的に防災対策を進める区域」の範囲が30kmというのは適切とは思えません。国の避難指示の遅れにより、多くの人が無用な被ばくを受けました。年20mSvという画一的な避難基準のために、自主避難を強いられたり、避難したくてもできずに苦しんでいる人がたくさんいます。
長期的な避難どうしていくか?いまの避難政策で福島の人たちにどんな問題が起きているのか?しっかりと現状を把握するところからスタートすべきです。
先日公表された「放射性物質拡散シミュレーション」も次の点で大問題です。
・IAEAの異常に高い値を用いている
シミュレーションで使われた「7日間に100mSv」という値は、異常に高いものです。福島原発事故で政府が採択した避難基準(=年20mSv)ですが、あえて単純に平均をとって比較すれば、その260倍もの被ばく量です。
・地形を考慮に入れていない
・風速などの気象条件を平均化してしまっている
Q.どうしてそんなに急いで決めようとしているの? |
A:再稼働を急ぐためとしか思えません。新安全審査基準づくりも急ピッチ
再稼働に向けた新しい安全審査基準づくりも急ピッチで進められています。5年はかかると言われる基準づくりを、年度内に「骨子」を決め、来年7月までに策定する予定です。分野ごとに専門部会を立ち上げて、じっくり審議すべきです。ましてや「骨子段階」で再稼働を急ぐことは許されません。
再稼働について、田中委員長は「暫定基準による再稼働は無理だ」と述べました。暫定基準だけで再稼働した大飯原発はどうなるのでしょう?同じ基準で検討すべきではないでしょうか。
規制委員会は、重大議題を短時間で次々に決めています。たった5人の委員でそんなことはできないはず、事務局がしいたレールの上を走っているのが現状です。ヒアリング対象は、規制対象である電力・原子力事業者や、「原子力ムラ」の専門家たち、自治体に限られています。
Q.ふぉえー。市民や専門家の意見は聴いてもらえるの? |
A:市民の声に耳ふさぐ規制委員会、公安に市民を監視させる規制庁
原子力災害対策指針は国民の意見を聞く「パブリックコメント」にもかけず、被災者・市民の声もきかないで策定されてしまいます。市民側が出した要請書に対する答えもありません。事務局がブロックし、規制委員会自身も一切耳をかさない状況が続いています。
さらに、傍聴する市民を監視するために、公然と公安警察が入り込んでいた事実が発覚しました。透明性を期すために公開している場で、原子力行政を監視する責任、権利を行使している市民を、公安を入れて監視をさせるということは大問題です。
規制委員会は毅然とした態度をとるでもなく、「騒ぎをきいて初めて知った」(田中委員長)と極めて無責任な態度です。きちんと市民の声をきく場をつくるべきです。
We are Friends of the Earth ! |