脱原発・エネルギーシフトに向けて
Q&A 原発ゼロは実現するの?――福島原発エネルギー・環境政策の見直し
福島原発事故をうけて、原子力の利用の是非が大きく世界に問われました。3.11後、政府はエネルギー基本計画の見直しを表明し、いまも議論が続いています。計画の見直しはどのように進められ、9月に決定した「革新的エネルギー・環境戦略」とはどんなものなのか?わかりやすく解説します。
Q.見直し前のエネルギー政策はどういうものだったの? |
A:従来の政策は、原子力を基幹エネルギーとするものだったんだ。
2010年に改定されたエネルギー基本計画では、2030年までに原発を14基新設、一次エネルギーの半分近くを原子力に頼ることを目指すという、非現実的なものでした。さらに原子力は、「準国産エネルギー」であり、「ゼロエミッション電源」であるとされていました。
*2010年改訂の「エネルギー基本計画」
https://www.meti.go.jp/committee/summary/0004657/energy.html
Q.見直しの議論はどのように進められたの? |
A:大きな戦略を決める「エネルギー・環境会議」が設置されたよ。
2011年6月、大きな戦略を決めていくための閣僚会議「エネルギー・環境会議」が設置されました。さらに、具体的なエネルギーのあり方を議論するために「基本問題委員会」が、経済産業省・資源エネルギー調査会の下に設置されました。
基本問題委員会では、25名の委員が20回以上にわたる会合を重ねましたが、原発維持派と脱原発派の溝は埋まらず、2030年までに原発をゼロ、15%、20-25%、市場に任せるという選択肢の原案が、エネルギー・環境会議に提出されました。
このほか、内閣府の原子力委員会から使用済み核燃料処理の方法について、環境省の中央環境審議会から地球温暖化対策について、それぞれ原案が提出され、これらを受けて、6月末に「原発ゼロシナリオ」、「原発15シナリオ」、「原発20-25シナリオ」の選択肢がまとめられました。
3つの選択肢をもとに「国民的議論」をして、新しいエネルギー政策の方針が決定されることとなりました。
*関連審議会・委員会資料
https://www.sentakushi.go.jp/database/
Q.市民の意見はちゃんと届いたの? |
A:パブコメや意見聴取会など、国民が意見を届ける場が設置されたよ。
国民的議論の方法として、次の5つが提示されました。>国民的議論の進め方について
1)特設ウェブサイトでの情報提供
2)全国11箇所での意見聴取会
3)パブリックコメント(7月2日~8月12日)
4)討論型世論調査
5)自治体や大学、民間団体主催の説明会への協力
国民的議論にしては期間が短い、パブリックコメントの周知が不十分などさまざまな問題もありましたが、このように大々的に国民の意見を集めるプロセスが設置されたのは、かつてないことでした。
この「国民的議論」に多くの市民の声を届けようと、FoE Japanでもeシフトなど広いネットワークで「パブコメで未来を変えよう」というキャンペーンを展開、また民間団体主催の意見聴取会の開催を各地に呼びかけました。政府に対しては公平かつ透明性ある決定プロセスを強く求める声明を提出し、eシフトとして直接、古川国家戦略担当大臣(当時)に申し入れをしました。
パブコメは8万9000通以上が集まり、そのうちの9割近くが原発ゼロシナリオ、即時ゼロが8割近くを占めました。東京・福島で開催した自主的意見交換会では、脱原発を望む市民の声を直接政府担当者に伝えました。特に福島では「二度と放射能汚染を繰り返してはならない」という切実な思いが伝えられました。
討論型世論調査でも、詳細な情報提供や議論ののちに原発ゼロシナリオを選ぶ人が増えるという結果が出ています。
*国民的議論の結果について(第13回エネルギー・環境会議(9/4)資料)
https://www.npu.go.jp/policy/policy09/archive01_13.html#haifu
Q.「原発ゼロシナリオ」に決まったの? |
A:「2030年代までに原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入」とあるけど・・・。
国民的議論の取りまとめを経て、9月14日、エネルギー・環境会議で「革新的エネルギー・環境戦略」が決定されました。
この中で「2030年代までに原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」という一文が書き込まれました。未だに原発維持・推進を掲げる一部産業界の圧力がある中で、上記の国民的議論や官邸前などのデモでの国民の声が、無視できない形になり、政策を動かしました。従来の原発推進路線からすれば、大きな前進であると言えます。
一方でその中身は、再処理事業の継続や原発再稼働の宣言、原発輸出の継続など、原発維持へのゆり戻しの可能性を残す、矛盾だらけのものとなりました。また枝野経済産業相は建設中の原発については、「新設増設をしない」という基本方針には抵触せず、建設を継続するとの見解を示しました。
さらに一部の産業界などの反対圧力により、文書自体は閣議決定されず、「柔軟性を持って不断の検証と見直しを行いながら遂行する」という表現にとどまりました。
*FoE Japanの声明 >「矛盾だらけのエネルギー・環境戦略、『原発ゼロ』へ理念と道筋示すべき」
*eシフトの声明 >https://e-shift.org/?p=2435
Q.ふぉえー。原発ゼロは実現するの? |
A:原発ゼロを実現するための法改正や新たな法制度が必要なんだ。
現在ようやく掲げられた「原発稼働ゼロ」は極めて曖昧なもので、実現するための具体的な方策が示されているとは言えません。また、福島事故の教訓を踏まえ、原子力利用を根本から見直そうという前提に立ったものとはなっていません。
・ 「青森県との約束を尊重」として核燃料サイクルの継続を掲げている。
・ 改正原子力炉等規制法では、安全を確認した上での延長運転が規定されており、40年運転規制を厳格に適用、とあるものの担保されていない。
・ 「安全性が確認された原発は、これを重要電源として活用する」とされており、原子力規制委員会の判断で再稼働が進められようとしている。
・ 「新設・増設はしない」としながらも、現在建設着工中の3基(島根3、大間、東通1)については、設置許可がでているため新設にあたらないと解釈されている。
・ 相手国が希望する場合には、原子力技術の輸出をすることが明記されている。
・ グリーンエネルギーの拡大を目指し、それによって脱原発や脱化石燃料を進めていく、とされているが、脱原発を前提として生活のあり方も見直していくという国民の覚悟を反映せず、目標設定が不十分。
「革新的エネルギー・環境戦略」では、原発ゼロを一部掲げつつも、法的根拠のある結論ではなく実現を約束するものではありません。原子力規制委員会の人事・あり方の見直しもふくめ、原発ゼロを担保するための法改正や新たな法制度づくりが今後必要です。
Q.わたしたちにできることはなんだろう? |
A:一人ひとりが声をあげることが大切!方法はいろいろあるんだよ。
今後、この「戦略」をベースに、エネルギー基本計画や、グリーン政策大綱制定、温暖化政策の見直しが進められます。また、今後の原子力規制を具体的にどうしていくかを決めるのは、新しく発足した原子力規制委員会です。引き続き、一人ひとりが声をあげることが大切です。原発ゼロを求める市民の声で政策を動かしていきましょう。
★原子力規制委員会をウォッチしよう
規制委員会の動きや再稼働の動向も、きちんと監視していく必要があります。今後、毎週水曜日に定期会合が開催される予定です。FoE Japanなども、それにあわせて傍聴やアクションを行います。
規制委員会問題や再稼働問題に関するアクション等情報は「避難の権利ブログ」へ
FoE・フクロウチャンネル(FFTV)でも解説していきます。>番組スケジュール
★デモなどで引き続き「原発ゼロ」をアピールしよう
国民的議論の取りまとめ過程でも「官邸前などでの声」が書き込まれました。メディアでも取り上げられています。ドイツでも脱原発の再決定を前に、全国各地で25万人規模のデモが行われました。
★エネルギー政策見直しは、まだ続いています!
今回は大きな方針として示されましたが、原子力政策大綱の見直し、エネルギー基本計画見直し、地球温暖化政策見直し、グリーン政策大綱策定が、今後控えています。
原子力のあり方、そして省エネルギーや持続可能なエネルギーへのシフト、地球温暖化対策のあり方について、引き続き注視していきましょう。
*原子力政策に関する意見。パブリックコメントを出したあなたは、こちらもぜひ。
https://www.aec.go.jp/jicst/NC/qa/mail/index.htm
*基本問題委員会でも、募集しています。
https://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonmondai/ikenbosyu.htm
★脱原発の議員を選ぼう
近々あると言われる衆議院解散総選挙では、脱原発派の議員を応援し当選させる必要があります。
eシフトは、そのための情報共有ウェブサイトをスタートしました。順次情報を追加していきます。
「脱原発総選挙」>https://miraisenkyo.wordpress.com/
We are Friends of the Earth ! |