エネルギー政策・温暖化対策への提言
G7環境大臣会合コミュニケへのFoE Japan声明:
日本はG7議長国として、自国の対策強化と途上国への支援強化を行うべき
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富山で開催されたG7環境大臣会合は16日にコミュニケを採択し閉幕しました。この中で長期低炭素戦略をパリ合意期限の2020年を前倒しして国連に提出することに合意したのは評価できます。これにより政府は、2050年までの長期的な化石燃料脱却や脱原発の方針を明らかにすることを迫られます。パリ協定の目標にそぐわない現在のエネルギー政策を2050年まで維持しようとすることを世界は許さないでしょう。
その一方で、富山コミュニケは2020年までの行動の強化(削減目標及び途上国の支援の強化)には踏み込んでおらず、このままでは協定内容の実施は絵に描いた餅に終わってしまいます。ん。パリ協定の早期発効を呼びかけることで国際対策の政治的モメンタムの維持を図っていますが、協定中身の実施はいずれにせよ2020年からなので、早期発効でその効果が上がるということはありません。
現状のレベルの世界排出量が続いたとすると、あと10年で1.5℃目標達成の排出枠を使い切ってしまう状況であり、協定の2020年以降では間にあいません。少なくとも、すでに2020年目標を前倒しで達成している日本やヨーロッパは目標の強化を表明すべきでした。
脱炭素ではなく、高効率石炭火発のような低炭素技術に固執し、二国間クレジット制度のような国際オフセットなども用いて国際的に普及を図るとしていますが、どんなに高効率でも累積排出量には大きな差はなく、パリ協定の目標を尊重しリーダーシップを示すことにはなっていません。
2020年より前の先進国の支援、すなわち途上国への資金や技術の支援強化なしには、パリ協定下の途上国の目標達成は不可能で、富山コミュニケで具体的な支援強化に踏み込むべきでした。G7と並行して16日にドイツ・ボンで始まったパリ後の最初の国際交渉でも、いつどうやって先進国の支援強化がされるのか不透明で具体性がなく、途上国はパリ協定下での自国の計画の実施の見通しが立たずにいます。
半数の途上国が実施する対策だけでも4兆ドルが必要であり、また途上国が(主に先進国が起こした気候変動の)被害に対応するために必要な費用は2030年までに年間1400~3000億ドルにのぼることが最近の報告で明らかになっています。
気候変動の対策面では、富山コミュニケは世界への責任とリーダーシップに応えるには不十分な結果に終わったと言わざるをえません。日本はG7議長国として、自国の対策強化と途上国への支援強化を行うべきです。
※「G7富山環境大臣会合の結果について」(2016年5月16日、環境省)
https://www.env.go.jp/press/102546.html