エネルギー政策・温暖化対策への提言
「地球温暖化対策計画」閣議決定に対するFoE Japan声明:
脱原発と分散エネルギーシステム改革のビジョンをもった具体的な気候変動対策を
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5月13日、2030年までの国の温暖化対策をまとめた「地球温暖化対策計画」が閣議決定されました。しかしこの計画は、パリ協定で合意された世界の気候変動抑制目標に鑑みて非常に不十分なものであり、また福島事故を顧みず原発依存の気候変動対策を続け、産業界には規制を設けず自主的な取り組みに任せているなど、いびつなものです。
FoE Japanは引き続き、途上国を中心とする気候変動の「損失と被害」を最小化する観点から、また福島第一原発事故の痛切な反省から、脱原発と分散型エネルギーを柱に社会を持続可能にするシステム改革のビジョンを目指す気候変動対策を求めます。
気候変動の影響・被害は、世界各地で実際に起こり、かつ深刻化しています。FoE Japanは、アジア地域を中心に被害の現状と求められる対策について注目していますが、高潮や台風の進路変更、旱魃、豪雨、海岸浸食など気候変動に関連する自然災害により、途上国のコミュニティでの生活が奪われています。もはや猶予はなく、日本の先進国としての歴史的責任は重大です。
FoE Japanからも、主に下記の点をパブリックコメントで提出していますが、こうした意見はまったく反映されずに、主に「国民運動の強化」について加筆されるにとどまったことは非常に残念です。
1)パリ協定で合意された世界の気温上昇を今世紀末に1.5℃に抑えることを実現するための2020年及び2030年中期目標とすべき
2)2018年の国連のレビューを受け国内目標を強化することに触れるべき
3)「2050年には少なくとも80%削減(1990年比)」を明記した長期計画を、 提出期限の2020年より前に早急に策定することに言及するべき
4)原発は気候変動対策として使うべきではない(2014年の温室効果ガス排出量は、原発ゼロで減少に転じている)
5)産業界、電力業界について、自主的な取り組みに任せるのみでは不十分である。電力業界が推進する石炭火力発電増設はその累積排出量を考えるとパリ協定の目的に反するものであり、むしろ化石燃料依存からの脱却を促進する計画であるべき
今後は、早期にパリ協定を批准し、気温上昇を1.5℃に抑えていくために、先進国としての責務に見合ったより厳しい目標に改定していく必要があります。その方法としては、国民運動や二国間クレジット制度の強調ではなく、石炭火力発電の規制や省エネルギー、再生可能エネルギーを更に進めていく方向に転換しなければなりません。
▼「地球温暖化対策計画(案)に対するFoE Japan意見(2016年4月13日)
https://www.foejapan.org/climate/policy/160413.html
※「地球温暖化対策計画」の閣議決定について(2016年5月13日、環境省)
https://www.env.go.jp/press/102512.html
また、2015年12月に行ったフィリピンでの気候変動影響調査の動画:
2013年11月にフィリピンを襲った台風ハイアン。その後も度重なる巨大台風により復興が遅れています。さらに、防潮堤の建設計画がすすめられており、生計手段や住居の回復すらままならない住民からは疑問の声も上がっています。
▼日本語・10分バージョン
気候変動〜フィリピン・巨大台風の傷跡〜
▼日本語・4分バージョン
気候変動〜フィリピン・巨大台風の傷跡〜