プレスリリース・意見書
【プレスリリース】
科学や国際責任を満たさない日本の2030年温室効果ガス削減目標
国際環境NGO FoE Japan
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日本政府は本日、日本の目指すべき温室効果ガス削減目標2030年までに2013年と比べ26%削減する案を正式に専門家委員会に提出しました。これは国際的に認知された基準年である1990年で比べると −17%(※1)に相当し、今世紀末までに平均気温上昇を1.5℃未満に抑える(※2)ことは不可能です。また世界5位の温室効果ガス排出国であり産業革命から見て累積排出量が世界6位の日本の国際的責任を果たすものとは言い難いものです(※3)。
日本の目標案はこの後まとめられ、安倍首相により6月ドイツで開かれるG7サミットで発表されると見られています。これは5年越しに国連で続けられてきた2020年より後の気候変動対策の国際枠組みをつくる交渉の一環として国連提出が求められており、12月パリで開かれる国連会合で次期国際枠組み合意に含まれることになります。
世界の科学者たちは、先に各国が提出した2020年までの対策を合わせただけでは今後今世紀中の気温上昇が3℃を超える危険があると報告しています。過去30年間で世界の気象条件による災害数は倍増し、死者の4分の3が気候変動の影響に脆弱な中低所得の途上国に集中しています(※4)。
FoE Japanは以下の点について政府に求めます:
1. 再生可能エネルギー導入と省エネ対策の強化を行うこと。再エネ事業者の送電網への優先接続原則を再確認し、送電網の能力強化、追加的な省エネ対策が可能です。こういった対策で電源構成の4割を再エネでまかないかつ4割以上の省エネが2030年までに導入できるとする試算も出されています(※5)。
2. 石炭火力発電からの脱却。安倍政権のもとで昨年4月に閣議決定された基本エネルギー計画のもと石炭火力をベースロードとして重視する発表以降発表された建設計画を合わせると、1990年比で日本の排出量の10%に相当してしまいます(※6)。最新の技術でも天然ガスの2倍のCO2排出係数になる石炭からの脱却の姿勢を国は示すべきです。
3. 原子力に依存しない気候変動対策。福島第一原発事故の処理が今も続いており、原子力規制委員会の地震や火山リスクの評価方法の問題、立地自治体の不十分な避難計画や定まらない核廃棄物最終処理政策を考えるだけでも、再稼動はもとより設備寿命の延長やリプレース、新設が必要になる目標の決定が気候変動対策の名の下に行われるべきではありません。
FoEJapanは再生可能エネルギーの導入促進や省エネの強化と脱原発を伴った野心的な気候変動対策は両立すると考えます。日本のエネルギーを重厚長大で中央集約型のこういった古いシステムから脱却し、分散型で地域にも立脚した私たち市民のエネルギーにパラダイムを切り替えることで、日本の国際的責任に見合う野心的な温室効果ガス削減目標につながるはずです。
【問合せ】
国際環境NGO FoE Japan (担当:小野寺、吉田) Tel:03-6909-5983 Email:info@foejapan.org
(※1)米国目標2025年までに2005年比-26-28%及びEUの2030年迄に90年比40%削減目標と比べ低い
(※2)アフリカ54ヶ国、48後発開発開発途上国、及び44小島嶼国連合国が求めている目標(国所属数は重複)
(※3)https://www.theguardian.com/environment/2011/apr/21/countries-responsible-climate-change
(※4)Munich Re 2009 etc.
(※5)https://www.kikonet.org/wp/wp-content/uploads/2014/05/japan-climate-vision-2050-scenario-ja.pdf
(※6)https://www.kikonet.org/info/press-release/2015-04-09/emission_from_coal_power_plants