お知らせ
[開催報告]国際セミナー「国連気候変動対策の将来と市場メカニズム」
2月5日、日比谷コンベクションホールで、国際セミナー「国連気候変動対策の将来と市場メカニズム」を開催しました。約60名の方々にお越しいただきました。
3名の講師が登壇し、さらに海外からの中継参加もあり、講演だけでなくドキュメンタリー上映やパネルディスカッションも加え、14時半から17時までの間、熱心な議論が展開されました。講演の概要を報告します。
(1) CDMレビュー・既存メカニズムから学ぶオフセット制度の課題
・・・山岸尚之氏(WWF ジャパン/気候変動・エネルギーグループリーダー)
CDMに対する関心は2007年から2009年がピークであり、現在は期待感が非常に下がっている。その理由は、追加性、持続可能な開発の評価、地域的偏在、ガバナンス、需要と供給、政策導入素材とインセンティブの6つがあり、メカニズムの移行期に来ていることは確かである。
① 追加性:元々あったプロジェクトにCDMと言う名前が付くだけという考え方。
② 持続可能な開発の評価:CDMの中に持続可能な開発が謳われているが、十分に達成されていないという評価。
③ 地域的偏在:CDMは排出量を削減することが目的であるが、中国やインドなど排出量が多い後進国にプロジェクトが集まりすぎたという評価。
④ ガバナンス:CDMはCDM理事会と言う組織によって運用されているが、理事会の見解・決定に軸がないという評価。
⑤ 需要と供給:共有の方が大きくなりすぎてしまい、価格が落ちている。
⑥ 政策導入素材とインセンティブ:CDMはやらなかった事に対してどれだけ削減できたかの評価のため、やらなかったことが続いた方が良いのではという評価。
また、地球温暖化削減には約5兆ドル必要だが、これをグリーン化するために追加費用が約7000億ドル必要であり、これは政府資金では賄えず、民間企業がダイレクトに参加できる仕組みが必要である。
(2) 二国間クレジット制度と国際市場メカニズムの展望
・・・水野勇史氏(環境省・市場メカニズム室 国際企画官)
二国間クレジットは、二国間の合同会議で決定されており、会議の不透明さなど批判を受けているが、これまで10カ国の合同会議での決定事項はウェブを通して公開している。
JCMに対する取り組みは、署名が増え、ルールもでき、方法論およびプロジェクトも動きつつあると言う観点から、様々な国からアプローチをいただいている。遂行に当たっては、反対国と賛成国の議論によって明文化された規定の中で行なっている。
CDMの移行については硬直状態が続いているが、日本政府として国連交渉に参加および粘り強い説明で、JCMのような取り組みが納得していただけるように努力している。
(3) 市民から見たカーボンオフセット制度 >発表資料ダウンロード[PDF]
・・・小野寺ゆうり(FoE Japan/気候・エネルギープログラム顧問)
これまで本制度は、市民の間で議論できておらず、国内市民でも知見を深めるべきである。
例えば、CDM追加性の問題で、本当に削減できているか、結果として排出量を増やしていないかの評価や、「持続可能な開発」と言う視点から、温暖化プロジェクトを把握する必要がある。それは先住民の関係や権利が守られているか、生態系に対する影響などは、排出量が削減さえたかどうかだけの問題ではなく、プロジェクト自体の正当性を市民の間で評価する必要がある。