COP15 (コペンハーゲン会合)
REDD(森林減少対策)交渉、草案に組まれた大きな抜け穴
2009.12.12 次期枠組み・REDD交渉の進捗報告
LCA特別作業部会の非公式会合では、コペンハーゲン合意の一部になる可能性を含めて、途上国の森林減少対策(REDD)における合意文書作成作業が他のテーマと同様に進められています。文書作成作業はNGOには非公開であり、議論の詳細は不明です。
現段階のドラフトでは、冒頭に「全ての国が共同で、[2030年※]までに現状と比べて、途上国の森林面積の減少を食い止め、増加に転じさせることで、排出削減を目指す」という目標が書かれています。一見意欲的な目標のように見えますが、大きな抜け穴が隠れていることに注意しなければなりません。
REDDの本来の目的は途上国における熱帯雨林(天然林など保護価値が高い森林)の減少を抑制することです。しかし、この文章では「天然林の減少面積を食い止める」とせず、「森林面積を食い止める」と表現しています。これは天然林が減少しても、紙パルプ生産のためなどの単一樹種の人工林を造成すれば、森林減少にならないことを暗示しています。この文章では、経済的にアクセス可能な天然林はすべて伐採され、人工林に置きかえれるという結果につながりかねません。
こうした提案の背景には、前々回のバンコク会合でアフリカのある森林大国が「経済発展のためには天然林のsustainable exploitation(持続可能な開発利用)が必要」と発言したように、経済発展のために天然林を伐採したいアフリカ諸国や、そうした木材を消費しつつ将来的にはREDDクレジットを獲得したいヨーロッパの複数国の思惑が伺えます。
また9月のバンコク会合で、削除され問題となった「天然林を人工林へ転換することの防止」の予防措置(セーフガード)へ言及箇所は、11月のバルセロナ会合では復活し、現在のドラフトにもかろうじて残っています。しかしその記載位置は、これまでのREDDの実施における原則の部分から、Preamble(法律の前文)の位置に移動され、その効力が弱められた構造に変えられています。ドラフト冒頭の目標と同様、天然林伐採を継続させつつもREDDで排出削減クレジットを求める各国の政治的な目論みが伺えます。
来週から始まる閣僚会合、首脳会合を経て決定される合意文書にREDDが含まれる場合、天然林の森林減少防止を効果的に進めることのできる文書となるよう、現状のドラフト内容を一刻も早く改善し、抜け穴を完全にふさぐようFoE Japanは他のNGOと協力し交渉官に働きかけています。
※[ ]はこれから交渉される予定を示す