COP15 (コペンハーゲン会合)
伐採しても排出にならないの? ~議長案に排出量隠す新ルール~
2009.12.12 京都議定書・吸収源交渉の進捗報告
京都議定書には、自国の森林が吸収した量を「削減量」とみなし目標達成に使用できるルールがあります。11日、京都議定書第二約束期間の先進国の削減数値目標と、達成する手段のルール改定をまとめた議長案が提示されました。その中で森林吸収源ルールは、伐採量の増加に伴う排出を計上しなくてよいという提案が、複数の先進国の支持を得始めており、吸収源議論で大きな問題となっています。
この方式を“Projected Reverence Level”といいます。今後伐採する量とそれによる温室効果ガス排出量を正確に予測(プロジェクション)し、予測量より排出量が上回らなければ、その排出量は計上しなくてよしとする提案です。電力分野で例えれば、石炭火力発電所を今より増設し、1990年と比べて排出が増えても、排出予測値を越えなければその排出量を計上しなくてよいというのと同じです。
この方式が採用されれば、従来の吸収源ルールの抜け穴(>詳細)にはなかった新たな抜け穴となります。吸収源ルールに詳しいNGOの初期試算によると、この新しい抜け穴を先進国が採用することで隠されてしまう排出量は、京都議定書第一約束期間の先進国全体の削減量を帳消しにする量になり得えます。
この方式で特に得する国は、オーストリア、カナダ、オーストラリア、エストニア、フィンランド、ドイツ、ニュージーランド、スウェーデン、英国などが考えられます。これらの国に加え、他の複数国もこの提案を支持しています。
カナダは将来的に森林伐採率を現状よりも30%増加させる予定です。NZは現在の森林伐採率をほぼ2倍に引き上げることを計画しています。提案されたルールは、こうした伐採増による排出増加量を計上しないことを許可するべきだと暗に主張しています。EUも伐採量を増加させようとしていますが、どれくらいの伐採増加量と排出増加量になるかはまだ発表していません。
一方、日本は、第一約束期間と比べて森林吸収量が減少する予測にも関わらず、吸収クレジットを獲得できるルール設定を求めています。吸収源に詳しい国際NGOは、日本の提案は最も悪い提案の一つであると指摘しています。
こうした提案は受け入れ難いことです。FoE Japanは従来の抜け穴に加え、この新たな抜け穴を閉じようと政府に働きかけています。森林が吸収する量だけでなく、伐採による排出量や吸収量の減少もしっかり計上するルールを求めていきます。