COP21 (パリ会議)
[プレスリリース] COP21パリ会議開幕:
地球の将来をかけた国連気候サミットで将来の公平で平和な世界を!
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悲惨なテロの余韻も収まらない中、 11 月 30 日から 12 月 11 日までフランス・パリで開かれる国連気候変動枠組条約会議( COP21 )が開幕した。5年越しで続けられてきた交渉で気候変動対策の将来の国際枠組を定めるこの会議初日には安部首相含む世界の 150 首脳が集い、危機的気候変動問題解決へのコミットメントを表明した。
これまで 177 カ国( 11 日 25 日時点)が 2020 年以降の国別行動計画案を国連に提出しているが、その内容を積み上げた専門家の試算では将来 3°C 前後の気温上昇(最大で 4.1 〜 4.8°C )を招くと見積もっており、国連で合意された世紀末までに平均気温上昇を 2℃ 未満に抑えるという目標には程遠い。地球の気温はすでに 0.8℃ 上昇し間伐や台風による気象災害による被害が途上国を中心に広がる中で、パリ会議の結果は我々の将来に多大な影響を与えるものである。
この会議では5年前に各国が国連に提出した 2020 年までの行動計画の強化と 2020 年以降の国際的枠組が交渉される。パリ合意は将来の温室効果ガスの長期的な排出量削減強化につながることはもとより、歴史的に世界の累積排出量の半分を占め今日の経済体制を創ってきた先進国と急成長する新興国の公平な責任の分担、そして既に気候変動による被害を受ける人々やコミュニティーへの実質的な国際支援の強化、被害や誤った対策から社会経済的弱者の人権を守るものでなければならない。
※1 INDC(Intended Nationally Determined Contribution)
※2 https://climateactiontracker.org/global.html
問合せ: FoEJapan 小野寺ゆうり(Tel 03-6909-5983)
<パリ気候サミット結果の主な評価点>
長期目標:パリ合意ですべての国が地球と市民の安全をはかる長期の国際目標に合意すること
条約の下で2013-2015年に実施された国際対策のレビューでは、2℃未満の上昇とアフリカや小島嶼国連合および世界の市民社会の目指す1.5℃未満の目標の間では世界の食料生産への影響など実質的な違いを指摘している(※3)。パリ合意に気温目標が盛り込まれるだけでなく、1.5℃への目標の見直しが求められる。
※3 Report on the structured expert dialogue on the 2013–2015 review FCCC/SB/2015/INF.1
排出量削減(緩和):パリ合意でできる将来枠組みが公平で効果的な対策を推進するものであること
2℃未満達成のためには今後の世界のCO2の排出量を1兆トンに止める必要が有る(※4)。10月に出された条約事務局の報告(※5)はそれまでに国連に提出された147カ国(条約締約国の3/4)の行動計画案の効果を分析し2℃未満目標はまだ可能とする一方、現状の各国の案ではこのCO2排出枠の3/4が排出されてしまうと試算している。食料生産など最低限必要な排出量を引くと、2030年までに事実上枠を使い切ってしまうが、このCO2排出枠の半分が先進国で占められている(※6)。このためパリ会議ではまず第一に、先進国が2020年目標および2030年行動計画案の早急な強化に合意することが求められる。パリ合意は、すべての国が定期的に進捗を報告しその実施状況が評価され、効果的な追加対策がとられる5年毎のサイクルを設け、各国が計画の実施義務を負う条約(議定書)でなければらない。
※4 国連気候変動政府間パネル (IPCC) 第5次評価統合報告書 (2014)
※5 Synthesis report on the aggregate effect of the intended nationally determined contributions UNFCCC/CP/2015/7
※6 https://climate-justice.info/wp-content/uploads/2014/12/Infografia_climate_justice_print.pdf
排出量削減(緩和):化石燃料からの脱却や危険な原子力、大規模な植林、地球工学的手法に頼らない自然エネルギーによるエネルギーシステムの抜本的な変革を促進する
気温目標だけではそれが達成されるとは限らない。2050年までにエネルギーシステムの脱炭素化をはかるという政策目標に合意することにより、インフラ投資が火力発電など化石燃料に依存した炭素集約型から脱却し、自然エネルギーなどへ移行する世界への強いシグナルとなる。
一方で炭素中立、気候中立、ネット(純)排出ゼロなどの表記は逆に脱化石燃料を遅らせ、広大な森林や農地がその排出を吸収するために使われることになる。気候変動の影響を厳しく被る途上国の地方農業者がさらに排出削減のための対策により食料供給や土地収奪の問題に直面させられるというのは本末転倒だろう。
こういった排出相殺型(オフセット)の目標達成は途上国で実施した削減量と取引する国際炭素市場を通じて行われることになるので、大口の排出国、とりわけ先進国の国内対策を遅らせ排出削減の責任を途上国に肩代わりさせることにつながる。パリ合意が日本の進める二国間クレジット制度など国際的な炭素取引制度を推進するものにならないよう求める。
影響への適応:気候変動の影響に苦しむ人々への国際支援を長期的かつ効果的に強化する
しばしば温室効果ガスの排出削減対策ばかりに注目が集まるが、それに匹敵するパリ会議の重要な使命が途上国での気候変動の影響・被害への対策を効果的に支援する国際体制をつくることだ。これにより、これまで国別の対応に委ねられていた影響対策の世界的な行動枠組みが初めて造られることになる。100カ国上が行動計画案に気象条件の変化による開発への影響、水資源、農業、健康といった社会経済の根幹にかかわる影響に適応するための対策や増大する異常気象による災害への対応を盛り込んでいる。影響への国際対策のグローバルな目標を設け、これらの行動計画の実施が定期的に国連に報告・集約され、世界の影響や被害、対策の現状を評価する一連のサイクルが確立されなければならない。
また先進国は途上国が受ける影響への対策強化を温室効果ガス排出削減の進捗と関連づけることに反対しているが、将来の気候変動の影響と必要になる対策の規模はこれからの温室効果ガスの排出量に応じて変わる訳で、温室効果ガス削減計画のサイクルと影響対策のサイクルとが連動して影響対策への支援が検討されることは極めて理にかなったことだ。
さらに2020年以降の制度と並行して2020年までの対策強化が交渉されているが、条約の下に設けられた適応委員会など影響対策の知見を集めた専門家プロセスを新設することで2020年を待たず議論を行動に移すことが’望まれる。
気候資金:パリ合意の目標達成のためすべての国が急速な排出量削減と広がる気候変動の影響に立ち向かうためには途上国の必要に見合う技術・資金支援が必要だ
多くの途上国は最優先課題の開発と貧困からの脱却を犠牲にして気候変動対策を行動する余力はない。さらに気象災害が増大し余力を防災に振り向けざるを得なくなっている。パリ合意のなかで先進国が技術・資金支援を約束しなければこれらの行動計画案のかなりの部分が実施されずに終わり、パリ合意の目標は達成できないことになる。6年前先進国は2020年までに途上国への支援を年間1千億ドルに引き上げる約束をした。この目標を達成するためのロードマップと2020年より先の先進国からの支援が拡大されることが明記されていなければ、パリ合意ができてもその多くが絵に描いた餅に終わることになろう。
また同時に重要なのは、パリ合意のなかで排出量削減と影響対策のサイクルが設けられ、各行動サイクルで途上国で必要となる資金や技術ニーズの評価がされることだ。行動計画に見合う支援レベルが確保されることは長期にわたるパリ合意の継続した実施を担保する鍵である。
もう一つの重要な点は既存ODAを気候対策に振り向けることは途上国にとって事実上開発資金を削られることになることだ。気候変動を起こした歴史的責任に鑑み条約の下で先進国はODAに対し「新規で追加的な」資金支援を約束してきた。今回アメリカは強硬にこの義務の廃止を求めているが、口頭で先進国による支援のリーダーシップを繰り返すだけでは途上国は納得しない。先進国が新規かつ追加的な資金支援を明記することが求められる。
長期的影響と回復不可能な損失・被害:気候変動による影響へ適応する能力を超えた経済的・非経済的な損失や人的被害に対応する国際体制の確立
大規模な干ばつや集中豪雨などの異常気象、また海面上昇や気温上昇、海水酸性化など長期的に起こる現象により人々は土地や生計手段を失い、貧困を悪化させ、強いては難民化する状況が既に世界的に起こりつつある(※7)。国連科学者機関の昨年の評価報告(※8)では気候変動の影響に適応することには限界があることが指摘された。気候変動による回復不可能な社会的損失や人的被害など対応能力を超えた影響が存在することがパリ合意の協定文書で認知されねばならない。また国際メカニズムが3年前国連条約会議で設立されたが対応は限定されており、長期的な対応機関の設置がパリ合意に盛り込まれるべきである。
※7 https://www.unhcr.org/cgi-bin/texis/vtx/search?page=search&docid=561e5ea06&query=climate%20change
※8 国連気候変動政府間パネル (IPCC) 第2作業部会第5次評価報告書 (2014)
人権の尊重:気象災害による難民や(排出量削減対策によるものを含む)影響を受ける社会弱者の基本的人権の確保
アフリカ東中部、中米やシリア周辺の中東は歴史的な干ばつで農村部の人口が土地を捨て都市部に流入し、ヨーロッパやアメリカの最近の難民問題を生んでいる。最新の報告ではこういった気象災害により年間2600万人が難民となっていると試算しており(※9)、難民となるリスクは70年代に比べ倍増したことを伝えている。気象災害による大規模な人口移動が既に始まっており、対策を通じてこれら気候難民の基本的人権や安全が守られなければならない。また農地をバイオエネルギー生産に転換したため地元の食糧供給が妨げられる、森林が炭素吸収に使われたため先住民族の権利が侵害される結果になるなど排出量削減の対策や事業が基本的人権を犯すものであってはならない。気候変動枠組条約にも京都議定書にも人権の一言は入らなかったが、長期的な国際対策の枠組みとなるパリ合意では持続可能な開発、先住民族の権利や基本的人権を尊重することがしっかりと位置づけられねばならない。
※9 国連難民高等弁務官事務所 UNHCR, THE ENVIRONMENT&CLIMATE CHANGE (2015.10)
関連イベント
2015.9.30 国際協力×気候変動 SDGsからCOP21パリ会議へ
2015.10.3 化石燃料恐竜フォトアクション
2015.11.28-29 アースパレード2015
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「科学や国際責任を満たさない日本の2030年温室効果ガス削減目標」(2015年4月30日)
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