COPレポート ボン会合 (2011年6月)
6月6日~17日、ドイツ・ボンで国連気候変動枠組条約の下で通常年2回開かれる補助機関会合(SB)、京都議定書附属書Ⅰ国のさらなる約束に関する特別作業部会(AWG-KP) 第16 回会合第II 部、および条約の下の長期的協力行動に関する特別作業部会(AWG-LCA) 第14 回会合・第II 部が開催されました。
4月にバンコクで開催された作業部会第Ⅰ部では、条約下の作業部会(AWG-LCA)で初めて議長国となった米国を中心とした先進国グループは、「カンクン合意」(昨年カンクン会合で決まった合意)の実施に向けた交渉議題案を推し、一方で途上国は、カンクン合意は2007年に採択されたバリ合意の枠組の一部であり、カンクンで交渉しきれなかった案件も含むべきと主張し、交渉議題をめぐる議論のみに一週間の会合がほとんど費やされました。
京都議定書の第一約束期間の終了を目前にし、空白期間を生じさせないためには、年末に南アフリカで開催されるダーバン会合(COP17)で次期枠組みの合意が必要です。残された時間がわずかになる中、今回のボン会合では確実な議論の前進が求められました。
今回の会合では、これまでの交渉において4年間に渡って続けられてきたバリのフォーマットで14以上の交渉グループに別れ実質的な交渉に入りました。
ボン会合のポイント
1.2011年中の新しい削減目標の設定
温室効果ガスの削減を義務付ける唯一の国際法である京都議定書の第一約束期間は2012年に終了します。次期約束期間に関する2013年以降の目標が早急に合意されなければなりません。
アフリカをはじめとする多くの途上国は、削減目標に法的拘束力を持つ京都議定書を最重要視しています。一方で日本、ロシア、カナダは2013年以降の約束期間を拒否し続け、米国が推す「プレッジベース」のいわゆる自主目標の削減約束に従おうとしています。
ダーバン会合は、法的拘束力を伴う次期約束期間を合意する最後のチャンスとなるので、そのための最終的な交渉の場となるべきでした。
2.不十分な先進国の新しい削減目標
最新の科学的な分析では、先進国が掲げている次期目標だと世界の平均気温上昇は2.5~5度にも至り、破壊的な気候変動の影響を回避できないと示しています(UNEP)。目標自体が低いのみならず、途上国で削減するカーボンオフセットや削減義務を減らすための抜け穴ルールに期待しており、自国内での抜本的な削減を想定していません。
一方で途上国全体(3.6ギガトン)の削減目標の方が先進国全体(1.9ギガトン)よりも上回っています。
3.新しい気候資金「グリーン気候基金」
カンクン会合で合意された「グリーン気候基金」の詳細は、現在「移行委員会」が開催され議論されています。しかしながら、すでに世界銀行の役割や対象事業、資金調達、適応と緩和のバランス等に関する懸念があげられています。
特に、現状では資金調達において民間資金に過度に期待するしくみが想定されており、不安定な市場や民間の関心分野の偏りにより、資金不足やニーズとの乖離、また間違った気候変動対策による環境社会影響が生じることも懸念されます。
>議題をめぐる進まない議論
>ボン会合の論点
>ダーバンに向けて
発表資料
●発表資料(和訳)
>2011.06.14 クライメート・ジャスティス・ナウによるCOP17議長への声明