COP20 (ペルー・リマ会合)
【プレスリリース】宿題を残した国連気候変動リマ会議終わる
ペルー・リマで12月1日から12日まで開かれていた国連気候変動枠組条約締約国会議(COP20)及び京都議定書会合(CMP10)は、来年のパリでの2020年より先の将来枠組みの合意を目指し、各国が来年提出することになっている約束草案の内容を中心に協議した。先進国がパリ合意の中核としたい先進国・途上国共通の緩和目標の詳細をリマで固めることに多くの途上国が抵抗し、大枠での合意に留まった。しかし約束草案の提出内容の決定がなされたことはパリへ向かう一歩前進と言える。緩和の詳細はバリ合意の中で適応や途上国支援とともに包括的に交渉されることになる。またこの決定に伴い要素案が今後の交渉の土台となるパリ合意案として認識されたことは、来年に向けた交渉のハードルを一つ越えたことになる。一方、リマ決定では国連2℃未満目標のシナリオから大きく外れている現状をどう変えて行くのか、具体的な行動はない。先進国の2020年目標強化は今年も手つかずのままに終わった。また決定内容は先進国による適応などの途上国支援義務を実質外しており、こういった方向がパリ合意にまで反映されると途上国の人々の将来に大きな影響を与えることになる。
一週目は、パリ合意を京都議定書を置き換える緩和の枠組と位置づけた先進国が、決定文書案に含まれる適応や途上国への資金支援の表記を削除もしくは弱める修正を繰り返した。これを見た途上国は、先進国からの追加的支援なしに緩和義務を負わされかねないと警戒し、新興国と結束を固めることになった。 日本を含め(一部を除く)先進国側は、途上国支援を今後とも増やして行く意思を表明したが、リマ交渉が約束草案を緩和に絞るかどうか(スコープ)の議論に終始したため、途上国にはそう写らなかった。このため約束草案の提出内容の詳細に合意できず、パリ会議前にされるべき各国の約束草案の精査が大幅に弱められたことが悔やまれる。各国政府は来年2月以降の交渉会議で約束草案の排出レベルを2℃未満目標の道筋と比較、衡平性の分析など実質ある精査ができるよう強化してもらいたい。
約束草案交渉の中心は条約の下で規定されている先進国と途上国の差別化の議論である。この会議でも先進国と途上国の間の対立の深さが改めて表面化した。4年前のコペンハーゲン会議以来、先進国は一部途上国も先進国と同様な緩和義務を負うことを主張しており、昨年ワルシャワ会議の約束草案検討でも結論が出ず、議論がリマ会議に持ち越されのはその一例だ。気候変動の被害により脆弱なアフリカ諸国や後発発展途上国は新興国も緩和対策を強化するよう求め始めているが、先進国の途上国支援義務を外すことには反対している。リマ会議でこれら途上国が新興国の差別化維持の主張に同調したのはそのためだ。
新興国の温室効果ガス排出抑制は急務であるが、脆弱な国々への適応支援強化や適応できない被害への国際対応能力の強化(損失と被害国際メカニズム)、それに伴う資金を含めた途上国支援は当面先進国の義務のはずだ。4年前合意された各国の2020年目標では今世紀末までに3℃以上の平均気温上昇となる。 被害が進めば難民やインフラへの被害、さらには政情不安を招く。気候支援は、多くの資源や市場を途上国に依存する日本は経済安全保障への投資という観点からも重要なはずである。
先進国の発言と実際の行動には大きな開きがある。2020年までに世界の排出量を下降に向かわせなければ2℃目標は失われてしまうが、危機感と緊急性に応えるリマ会議とならなかったのは残念だ。
>プレスリリース(PDF) 宿題を残した国連気候変動リマ会議終わる(2014年12月13日)
>プレスリリース(PDF) 2015年パリ交渉に向けリマ国際会議が本格化(2014年12月9日)
FoE Japan気候変動担当顧問 小野寺ゆうり