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共同声明:国際協力機構(JICA)と三菱東京UFJ銀行の緑の気候基金(GCF)認証に対する抗議声明
2017年7月5日
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主に開発途上国の温室効果ガス削減や、気候変動影響への適応プロジェクトなどを支援する緑の気候基金(Green Climate Fund, GCF)の第17回理事会において、日本の国際協力銀行および三菱東京UFJ銀行が認証機関への登録を申請していることをうけ、日本のNGO複数団体で声明を発出しました。
申請を行っている上記2機関は、これまで多くの温室効果ガスを排出する石炭火力発電への巨額融資も行っており、開発の段階で人権侵害なども発生しているプロジェクトもあります。
上記の懸念などから、GCFに対し、二機関への認証を承認しないように求めます。
私たち、本声明の署名団体は、緑の気候基金(Green Climate Fund: GCF)理事会に対し、国際協力機構(JICA)と三菱東京UFJ銀行(BTMU)の認証の承認をやめるよう、強く求めます。
JICAとBTMUの認証を承認することは、GCF理事会が、世界的な石炭火力発電所の拡大及び化石燃料への融資にお墨付きを与えることを意味します。そのことは、低排出へのパラダイム・シフトと気候強靭性な開発を促進するというGCFの使命に抵触するものです。
私たちは、世界の気温上昇を2℃より十分下回る水準に抑制するというパリ協定の目標の達成を危うくする石炭採掘・石炭火力発電やその他の化石燃料開発事業に資金支援を行っているという事実に基づき、JICA及びBTMUの両方の認証申請を却下するよう、GCF理事会に強く求めます。JICAと三菱東京UFJ銀行のエネルギー部門の融資においては、十分な社会・環境の保全が欠如しています。
少なくとも、GCF理事会が、JICAと三菱東京UFJ銀行に対して、JICAと三菱東京UFJ銀行の炭素関連資産のリスク状況、「1.5~2℃未満」シナリオに沿うよう気候変動リスクに対応するための投資方針、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が勧告した、投資ポートフォリオを脱炭素化するための評価基準と目標を発表するよう要求することを私たちは強く求めます。
化石燃料開発に巨額の資金支援を行っているJICAと三菱東京UFJ銀行が認証機関になれば、 気候強靭性 な開発に向けてパラダイム・シフトを担う国際機関としてのGCFの評判に深刻なリスクを生じさせることになります。さらに、GCFの認証機関に対して気候関連融資情報及び炭素資産リスクを低減させるための明確な目標の公開を要求することは、GCFの十全性を維持するための力強いステップとなるでしょう。
JICAと三菱東京UFJ銀行による国際的な化石燃料開発への支援状況については、以 下の通りです。
国際協力機構(JICA):途上国における「クリーン・コール」の推進
JICAは、2003~2017年にかけて、インド、ベトナム、バングラデシュの石炭火力発電に対して、37億米ドルもの資金支援を行ってきた。さらに、JICAは、インドネシアの地域コミュニティが強く反対している、100万kWのインドラマユ石炭火力発電所事業にも資金を提供している。 1,2
JICAは、炭素削減戦略として、いわゆる「クリーン・コール技術」を支援している。しかし、最先端の石炭火力発電技術を用いたとしても、1キロワット時あたりの炭素排出は、他のいかなるエネルギー源より大きい。新しい石炭火力発電を進めることは、「2℃より十分下回る水準に世界気温上昇を抑制する」という目標に沿わないということをJICAは認識しなければならない。
JICAの認証を却下することは、GCF認証機関による「クリーン・コール」への支援は受け容れられないという明確なメッセージを送ることになる。
三菱東京UFJ銀行(BTMU):十分な方針なしに化石燃料に巨額の資金支援BTMUは、2011~2016年の間、日本の化石燃料関連企業トップ17社に対して、156億 米ドルの融資・引受を行っている。 3
BTMUには、環境・社会・ガバナンス(ESG)方針や、化石燃料投資部門の規制が全くなく、37の国際的な銀行の気候変動リスク管理を評価した報告書「化石燃料ファイナンス成績表2017」において、最低ランクの「F評価」を与えられた4。 BTMUの親会社である三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は、2014~2016年の3年間、推計で95.7億米ドルを巨大な化石燃料企業へ融資している5。
この数値には、北極圏石油開発、タールサンド、超大深域石油(Ultradeep oil)、LNG輸出、石炭発電と石炭採掘に関与する最も汚い化石燃料企業への融資を含む。MUFGは、パリ協定が採択された後もなお、石炭発電への支援を大幅に引き上げている。MUFGは石炭発電企業への融資を、2015年の8億4500万米ドルから、2016年には21.6億米ドルへと増額させており、これは最もCO2排出量の多い石炭という燃料への貸付を156%も増やしたことを意味する。
最近も、深刻な社会・環境上の懸念のある複数の石炭火力発電所への融資を決めた例がある。2017年3月、BTMUは、ベトナムのビンタン4石炭火力発電所の拡張事業への融資を決めたが、この事業が進めば、既存の発電所によってすでに発生している海洋の生物多様性の喪失や大気汚染の被害がさらに深刻化する可能性が高い6。2016年6月、BTMUは、インドネシアのバタン石炭火力発電所への融資を決め、2017年3月には、同国のタンジュン・ジャティB石炭火力発電所の拡張事業への融資を決めた。これらの事業はいずれも、住民の生活を破壊し、海洋生態系や人々の健康に悪影響を与え、人権を侵害していることから、地域コミュニティによって反対されている7,8
巨大な化石燃料開発に巨額の支援を行っており、化石燃料融資を制限する明確な方針を持ち合わせていない三菱東京UFJ銀行(BTMU)には、GCFの認証機関となる資格はない。
1 JACSES, List of Coal Power Plants funded by JBIC, NEXI and JICA (2003-2017)
2 脚注1参照
3 Energy Finance in Japan: Funding Climate Change and Nuclear Risk (2016), Available from: https://40w95614sn5m1jd0sb353zli.wpengine.netdna-cdn.com/ja/files/2016/10/energy_finan ce_in_japan.pdf
4 https://www.ran.org/banking_on_climate_change_2017
5 脚注4参照
6 https://dtinews.vn/en/news/021/49785/coal-power-plants-could-endanger-marine-protectionareas. html
7 https://www.foejapan.org/en/aid/160606.html ; https://www.jbic.go.jp/en/information/press/press-2016/0603-48595
8 https://www.foejapan.org/en/aid/170228.html
署名団体:
350.org Japan
国際環境NGO FoE Japan
気候ネットワーク
レインフォレスト・アクション・ネットワーク日本代表部
グリーンピース・ジャパン
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
熱帯林行動ネットワーク(JATAN)
東アジア環境情報発伝所
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