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アメリカのパリ協定離脱表明を受けて
2017年6月2日
日本時間6月2日未明、トランプ米大統領が2015年に採択され、オバマ政権下でアメリカが批准したパリ協定離脱の意を表明しました。
今日の気候変動に最も加担してきたアメリカの歴史的責任と義務を放棄し、科学と事実を否定し、更には米国内を含め世界の数え切れない人々の命と将来世代に深い影響を与えるこの問題を無視する米現政権の決定に強い憤りを表明します。
2001年にブッシュ米政権が京都議定書から離脱した当時と、現在の世界の状況は一変しています。日本を含め世界の政府は気候変動の計り知れない脅威を認識し、トランプ政権の意向にかかわらず更なる対策と、影響を受ける人々への支援の強化を進めなければなりません。
気候変動は世界各地にすでに深刻な影響を及ぼしています。2016年だけで紛争による避難民の3倍にあたる2400万にのぼる人々が気象災害で住む場所や職業を失い、難民化しています1 。歴史的干ばつが続くアフリカや中東では、飢饉に直面した人々や紛争を避けようとする人々とあわせ660万人にのぼると見積もられています2 。気候変動は衝突や紛争を加速させ、すでに社会に大きな負担となっているのです。その気候変動の影響を最も受けるのがアジアです。先週スリランカの南部を襲った集中豪雨で200名前後の人々が命を落とし、また60万人以上が家をおわれています。過去の気象災害がどの程度人為的な気候変動によるものであるのかも、米科学アカデミーなど近年の研究により明らかになりつつあります3。
アメリカは気候変動に最も責任のある国ですが、パリ合意に至る交渉のなかで先進国の歴史的責任を拒否し、各国の行動計画達成を義務から外し、脆弱な国への支援目標設置を先送りさせ、拡大する被害への責任や賠償請求の放棄を求めました。アメリカを留めるためにパリ協定の実効性は大きく弱められたのです。
世界が合意した1.5℃以下に気温上昇を抑える目標への、アメリカのパリ協定離脱の影響は決して軽微ではありませんが、2020年までの3年間という時間は決して取り戻せないものではありません。一方で、既に年間220億ドルに達している気候変動の影響への対策の負担4 にあえぐ途上国への国連緑気候基金等を通じた先進国による支援が急務でもあります。
今回のトランプ政権の表明は、おそらくパリ協定や国際対策からの完全な離脱を表すものでもないでしょう。協定からの離脱の成立には4年間を要します。先月ドイツで開かれた国連気候変動専門家会合では少数の米交渉官が参加し、2018年に合意を目指す協定運用ルール策定の交渉に関与し続けています。国内外の同政権への圧力がこれで忘れ去られるということはあり得ません。
さらに、米国内だけでなく、世界各地でパイプライン、石炭火力やシェールガス開発などに反対する非暴力不服従行動 、化石燃料からの投資撤退、気候変動訴訟など、市民の手で気候変動を止める運動が、地元レベルで巻き起こっています。これら内外の圧力が遠くない将来、アメリカを国際社会に引き戻す力となるでしょう。
私たちはアメリカや多くの国々で気候変動を止め公平な社会を求める多くの人々の運動に強い連帯を表明します。
注:
1. 2017 GLOBAL REPORT ON INTERNAL DISPLACEMENT (GRID 2017), IDMC
2. https://www.telegraph.co.uk/news/2017/05/23/66m-migrants-waiting-cross-europe-africa-report/
3. Attribution of Extreme Weather Events in the Context of Climate Change (2016), National Academy of Science
4. https://www.un.org/sustainabledevelopment/blog/2016/05/unep-report-cost-of-adapting-to-climate-change-could-hit-500b-per-year-by-2050/
FoEインターナショナル声明(英語)
FoE USA コメント(英語)
Demand Climate Jusitce (気候正義を求める国際ネットワークによる声明(英語)
★関連ページ 2016.11.6~18 COP22現地報告ブログ
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