南極保全
2013年CCAMLR会議、今年こそ海洋保護区に合意を!
10 月 23 日~ 11 月 1 日に、オーストラリアのホバートで「 南極の海洋生物資源の保存に関する委員会( CCAMLR )」の年次会合が開催されています。本会議において、南極海の中でも特に貴重な生態系を有すロス海と南極東岸海域に海洋保護区( MPA )を設置することが討議されます。
7月にドイツで開催された CCAMLR 特別会合では全会一致に至らず合意できず、今回の会議に結論が先延ばしにされています。ロス海に関しては、 米国とニュージーランドが 160 万 km2 の「完全に保護される」海域を含む 230 万 km2 の海洋保護区を設置するという提案をしました。この提案に関して昨年から議論されてきましたが、 7 月の特別会合では全加盟国からの指示は獲得できませんでした。 その結果、本会合前に 132 万 km2 の海洋保護に縮小された新しい提案が出されました。
しかし、 FoE Japan の参加する国際 NGO ネットワークである南極海連盟( AOA )は、ロス海は地球上で最も汚れのない「最後の海」として、 360 万 km2 の完全な保護海域の設置が必要だと考えます。
ロス海 … ほぼ無垢の状態に近く、食物網が人間の活動による深刻な打撃を受けていない、外洋の大陸棚生態系としては最後の海域のひとつです。地球上で最も人為的な影響を受けていない外洋といえます。科学研究の場としても極めて重要であり、気候変動や海洋酸性化が環境にどのような影響を与えるか、大規模な、健全な状態の生態系で検証することを可能にする、比類ない海域です。 ロス海を保護区指定することはここ数年にわたり、多数の科学者や各国政府のほか、世界の NGO からも支持されており、この事実もロス海という生態系の貴重さを象徴しています。 |
一方、 南極東岸海域 には、オーストラリア、フランス、 EU が 160 万 km2 に条件付きの海洋保護区を設置する案を提案しています。
南極東岸海域 … 数千年にも渡る氷河の流れにより、東南極沿岸の大陸棚・大陸斜面は深く削られ、切り立った渓谷が形成されました。そこには数百万ものアザラシやペンギンが暮らし、ナンキョクオキアミやコオリオキアミ、コオリイワシなどをエサとしています。アデリーペンギンや、近年、個体数減少が急速に進んでいるというコウテイペンギンの集団営巣地も多数、存在します。流氷上ではヒョウアザラシやカニクイアザラシの母獣が出産します。その他にも数多くの海鳥やアザラシ、クジラなどがエサを獲りに訪れます。中でもいきものたちが多く集まるプリッツ湾は、オキアミのほか、南極海の頂点捕食者の一角を成すライギョダマシ(メロの一種)の生息地としても有名です。 東南極は広大で謎に包まれた海域も多く残っています。海洋学的特性と海底環境とが織り成す力学的な関係、いきものの種類などを明らかにするために、研究がつづけられています。未解明の部分が多くとも、その物理的環境の希少さや、多くのいきものたちにとって重要な生息地であることを考えれば、南極東岸海域が保護されるべきであることは一目瞭然です。 |
すでに過去 2 回の会議がこの海洋保護区提案の合意のために費やされてきました。今年こそ、南極海の生態系保護に実質的な一歩を踏み出す決断の時です。日本を含む CCAMLR 加盟国のリーダーシップ力が期待されます。
● 南極海ウォッチにご協力ください!
将来世代に人類共通の財産である南極海を残すため、世界中の市民がこの CCAMLR の動向を注目していることを加盟国政府に伝えるオンライ署名を実施しています。
日本の市民も南極海保護を求めていることを日本政府に伝えましょう!
南極海ウォッチ: https://www.foejapan.org/climate/antarctica/petition.html