南極保全
【プレスリリース】
南極海用保護区提案は合意に至らず?日本政府は提案支持の表明を
豪タスマニアのホバートで10月20日から31日まで開かれていた25カ国(EU含む)による南極の海洋生物資源の保存に関する委員会(CCAMLR)は、南極海の海洋保護区設置案合意に至らず、再度、翌年へ議論を継続となりました。既に4年間国際交渉で精査されている米・ニュージーランド提案のロス海と豪仏EUによる東部沿岸の海洋保護区設置二提案は、特定種の保護から生態系ベースのh保存へと向かう重要な一歩であり、日本政府もすでに提案に支持を表明した多くの加盟国に加わり、保護区設置を定める為の保存管理措置の起草を求めるべきです。
2002年国連生物多様性条約締約国会合は生物多様性減少を2010年迄に低減する目標を採択し、国連ミレニアム目標に加えられました。同年開かれたヨハネスブルグ地球サミット(WSSD)では2012年までに代表的な海洋保護区のネットワーク設置を含む海洋の保護と管理強化が行動計画に盛り込まれています。予防原則に基づく海洋生物保護と合理的利用(rational use)を謳うCCAMLRは2011年に海洋保護区設置の枠組みと手続きを採択し、2010年に豪仏EUによる南極東部沿岸7つの区域を含む171万平方キロメートルの海洋保護区のネットワークが提案されました。翌年米とニュージーランドがロス海に220万平方キロメートルの海洋保護区設置を提案、いずれも採択されれば世界最大の海洋保護区となります。
4年間続くCCAMLRでの国際交渉で提案国側はノルウェー、日本など南極海漁業国に譲歩し、規模をそれぞれ3割及び4割縮小し合意を目指していますが、ロシアと中国が反対し今回も合意に至ることはできませんでした。中国は今回、CCAMLR条約は海洋生物資源の合理的利用が目的であり、保護区設置は加盟国の漁業権を侵害し法的根拠に欠けるとする姿勢を打ち出し、海洋生態系保護で実績を重ねてきた同委員会の将来の方向を変えかねない中国の姿勢にCCAMLRに参加する市民環境団体は強く反対しています。
科学調査活動に積極に関わりメロ調査漁業を行う日本の動向は海洋保護区交渉でも重要です。日本は将来の保護区設置の際の論点整理と合理的利用を担保する為のチェックリストを提案し、当初の懸念を超え提案・反対国双方から支持を得ましたが、保護区設置交渉自体の合意を促すには至っていません。
詳しくはこちら>PDF版
(タスマニア発 小野寺ゆうり)
●関連情報:
南極海連合AOAの30万人の国際署名に参加しよう!
https://antarcticocean.org/ja/
FoEJapan ウェブサイト
https://www.foejapan.org/climate/antarctica/index.html