- 日本の資金支援が与える影響
- 鉱物資源と私たちのくらし
- 土地収奪 フィリピン・バイオエタノール事業
政策提言 個別事業モニタリング 気候変動と開発 資料室 参加しよう
土地収奪 ~フィリピン・バイオエタノール事業~
開催報告 現地報告会「日系バイオ燃料事業とフィリピン農民の直面している課題」
1月19日、地球環境パートナーシッププラザで、「日系バイオ燃料事業とフィリピン農民の直面している課題」が開催されました。
フィリピン北部イサベラ州から来日されたドミエ・ヤダオ氏(イサベラ州農民組織代表)が現地の土地収奪の現状を説明してくださいました。
首都マニラから北部404kmのところに位置するサン・マリアノ町は、面積146,950ヘクタールを有するフィリピンで最大の町です。北部シエラ・マドレ自然公園の一部であり、フィリピンで最大の保護地区でもあります。人口44,718人の大半が農業を営んでおり、町の経済は農業によって支えられています。
60年間、この土地の農民や先住民族は米やトウモロコシ、バナナ、野菜、果樹などを栽培してきましたが、「土地権利書」などのない公有地のままである耕作地が多く、バイオエタノール事業のためのサトウキビ栽培へと転換させられています。
事例を挙げると、サン・マリアノ町のパンニナン村に住んでいる先住民族カリンガの一家が長年耕作してきた土地は、2004年、土地権偽造のシンジケートにより異なる個人の名義で、不当な土地権利書が作られ、(農地改革の土地分配の制度の下で)土地所有裁定証書を付与されました。2010年には、別の個人により、土地権利書の偽造が行なわれ、先住民族の一家を追いたて、バイオ・エタノール企業へ土地をリースしようとしています。
サトウキビ栽培の農業労働は日当制ではないため、農業労働者の賃金が低賃金になったり、サトウキビ栽培において怪我を負った人の補償が十分になされなかったりしています。農民は収奪された農地の早急な所有権の回復やイサベラ州の農地や森林地からのバイオ・エタノール事業の撤退などを要請しています。
ヤダオ氏は報告の最後にこう訴えました。
「私は地元で起きている問題を伝えるため、来日しました。できるなら、伊藤忠商事等の日本企業に直接会って、こうした問題を伝えたかったです。
なぜなら、伊藤忠商事がパートナーを組み、地元で事業を進めているフィリピンの現地企業は、日本企業に対して、現地で起きている深刻な問題を正確に伝えていないからです。」
バイオ燃料は石油のような枯渇性資源を代替する非枯渇性資源として注目されており、二酸化炭素の総排出量が増えないと言われていることから、環境にやさしいというイメージがありました。しかし、今回、現地の方の生の声を聞き、バイオ燃料事業は土地の問題や雇用の問題など様々な問題に関わり、深刻な状況になっているとうことを知りました。
参加者から、次のような声が寄せられました。
「フィリピンの国内の問題や日本企業の関与など複雑に絡み合った状況を前に、どうしたらいいのか、今は解決の糸口が見つけられませんが、知ることが第一歩なのかなと思います。」
「企業側が当事者の方たちの主張をかわしてばかりで真摯に受け止めていない。国や軍も企業側の立場になってしまっていて、国の中に彼らを守ってくれる立場に立ってくれる有力な団体が出てきてほしい。」
ドミエ・ヤダオ氏、貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
(FoE Japanインターン 三上理沙)