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土地収奪 ~フィリピン・バイオエタノール事業~
住民が抗議デモ「農地返還、賃金支払、大気・水質汚染への対処を!」
現地企業は要請書の受け取りを拒否
2012年8月14日
8月7日、1,000名超のイサベラ州住民がカワヤン市でデモを行ない、バイオエタノール事業が引き起こしている様々な問題の解決や、フィリピン政府による真に農民のためになる農地改革を求めました。
この日の行動を呼びかけたのは、イサベラ州農民組織(Danggayan Dagiti Mannalon ti Isabela:DAGAMI)。市の中心部を歩き、ECOFUEL本社前に陣取って、抗議の声をあげました。DAGAMIは事業者に要請書を提出しようとしましたが、ECOFUEL社が受け取りを拒否するという消極的な姿勢も見られました。
ECOFUEL社は、伊藤忠商事と日揮が出資してバイオエタノール事業を進めてるる GFII社(Green Future
Innovation Inc.)の現地パートナー企業で、原料であるサトウキビを栽培・供給しています。
ECOFUEL本社前での抗議活動 [2012年8月/DAGAMI撮影] |
「GFII社やECOFUEL社といった外国資本が入ってサトウキビ栽培を始めたことで、これまでも横行していた土地権利書の偽造が激化しました。ECOFUEL社から土地賃貸料を稼げると見込んだ土地投機、つまり、農地収奪が起きているのです。」 DAGAMIのリーダーの一人は、バイオエタノール事業によって悪化している土地収奪をこう訴えました。
企業側が受け取りを拒否した要請書 [2012年8月/DAGAMI撮影] |
DAGAMIは抗議行動中、特にデルフィン・アルバノ町の農地収奪について、GFII社とECOFUEL社に要請書を提出しようとしましたが、ECOFUEL社は受け取りを拒みました。
要請書では、知らぬ間にサトウキビを植えられた農地について、1週間以内にサトウキビを撤去するよう求め、撤去しない場合は、農民自らの手でサトウキビを抜き、水田に戻す意思を示しています。
数十年にわたり耕してきた農地が、農民に分配されることは、農地改革省の書類や調査でも明らかになっています。
農民は、前の地主かつ地元有力者が無効な土地権利書を使ってECOFUEL社に賃貸した農地の返還を、これまでも求めてきました。
参考 >[現地報告]農地収奪・作物転換の現状
ECOFUEL社のサトウキビ農地で働く農業労働者も、1日60~80ペソ(約120~160円)しか受け取っていないケースがあることを挙げ、低賃金、賃金未払い等に対する抗議の声をあげました。
2011年7月にトラックの横転事故に遭い、今も右腕を上げることができない30代の女性は、十分な医療支援を求めるレターを手渡そうとしましたが、ECOFUEL社は受け取りを拒みました。女性は現在も治療が必要ですが、今年4月中旬に突然、「すべての支援を打ち切る」とECOFUEL社から言われ、病院での治療・診察代などを工面できず、治療を続けることができない状況になっています。
参考 >[現地報告]農業労働者の人権は尊重されているか?
横断幕には、「伊藤忠商事、日揮、GFII 社、 ECOFUEL社のバイオエタノール事業は州民 にとって災いの元。ゴミにしてしまえ!外国 企業の土地収奪を止めよう」と書かれている [2012年8月/DAGAMI撮影] |
さらに、バイオエタノール工場が試運転(今年5月)・操業(同6月)を開始して以来つづいている悪臭や水質汚染等も指摘されました。特に、工場の立地するサン・マリアノ町マラボ村の住民からは工場の閉鎖が叫ばれました。
今年7月末、大気汚染源と水質汚染源の排出について環境管理局の許可無しに工場を操業したとして、環境天然資源省からGFII社に法違反の通知も出されました。法的な許可無しに操業していたのかと、住民から一層の非難の声があがりました。
参考 >工場の操業開始―地元住民の懸念の声、続々と
日本企業で同バイオエタノール製造・発電事業に出資している伊藤忠商事・日揮は、これまでにも国際NGO調査団や日本NGOから農地収奪や農業労働者の労働条件等について、問題を喚起されてきました。
参考 >NGO調査団の最終報告書 >「早急な問題解決を」日本企業に対応を求める文書提出
しかし、遂にバイオエタノール工場の操業前に問題が解決されることはなく、工場操業に伴う新たな問題が地元住民の生活をさらに脅かしています。
日本企業は要請書の受け取りを拒むような姿勢を見せている現地パートナー企業に情報・対応を依存するのではなく、地元住民の声を真摯に受け止め、確実かつ早急な問題解決に自ら取り組むべきです。