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土地収奪 ~フィリピン・バイオエタノール事業~
フィリピン・イサベラ州バイオ燃料事業
現地NGO 国際NGO調査団の最終報告書を刊行
“Not One Idle Hectare: Agrofuel Development Sparks Intensified Land Grabbing in Isabela, Philippines”
「1ヘクタールも見当たらぬ遊休地:アグロ燃料開発が土地収奪激化の導火線に(フィリピン・イサベラ州)」
2011年 8月26日
8 月22日、食料主権に関する人民連合(PCFS)が、フィリピン・イサベラ州サン・マリアノ町における国際NGO現地調査団(IFFM)の報告書を刊行しました。IFFMは、同地方で激化している土地収奪の問題が、日本(伊藤忠商事、日揮)とフィリピンの合弁会社であるGreen Future Innovations Inc.(GFII)によって行なわれているフィリピン最大のバイオ燃料事業に関連したものかを調査したものです。地元の小農民組織であるイサベラ州農民組織(DAGAMI)の要請に基づき、PCFSとイボン財団・国際部が、アジア農民連合(APC)やフィリピン農民連合(KMP)と共同で、今年5月末~6月初めに行ない、FoE JapanもIFFMの調査メンバーとして参加しました。
「1ヘクタールも見当たらぬ遊休地:アグロ燃料開発が土地収奪激化の導火線に(フィリピン・イサベラ州)」――と題された同報告書は、最終的に11,000ヘクタールのサトウキビ栽培農地の確保を目指す同バイオ燃料事業が、これまでに3,000ヘクタールの土地確保しか行なわれていないにもかかわらず、以下のような状況から、すでに、食料自給を蝕んでいるだけでなく、土地収奪や社会経済上の不均衡を悪化させていることを示しています。
・ 小農民が合法的に耕作してきた土地や、先住民族の先祖代々の領域として認知されている土地が、サトウキビ栽培農地へ転換可能であるという解釈を推進する形になっている。
・ 土地賃貸契約の交渉が不透明なため、当該地を耕作している人々から土地を奪う結果になっている。
・ Socialized Industrial Forestry Management Agreements(SIFMA)の土地でサトウキビ栽培を促進し、SIFMAの契約事項の明らかな違反を奨励する形になっている。
・ 仮に小農民らが土地を耕作し続け、米、トウモロコシ、バナナといった生産物を地元の市場で売る場合の稼ぎよりも、相当低い代償分にしかならない搾取的な契約の下、小農民から土地を賃貸している。
・ 現在、非常に搾取的な条件の下でサトウキビを植えている農業労働者は、食料安全保障や生計を脅かされている。
・ 環境破壊を悪化させ、現地の生態系が持つ自然の気候変動の緩和能力を破壊している。
>報告書の全文はこちら(PDFファイル55ページ・英文)
IFFM後に呼びかけられたオンライン署名では、日本を含む世界62カ国から約750筆(275組織からの署名を含む)の署名が寄せられ、GFII等に出資する日本企業、フィリピンの国会議員、フィリピンの関連政府機関等に対し、サン・マリアノ町の農民、農業労働者、そして先住民族の生活・人権を尊重し、適切な調査等を行なうよう、訴えかけがなされました。
日本企業を含む、同バイオ燃料事業の関係者は、こうした訴えに耳を傾け、真摯かつ早急な対応が求められています。