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ベトナム・バンフォン1石炭火力発電事業
日本の公的金融機関によるバンフォン1石炭火力発電事業支援決定に抗議 - 世界39か国78団体がJBICなどに支援撤回求める
2019年4月26日
JBIC前での抗議(2019.2.14)
4月19日に日本の公的金融機関である国際協力銀行(JBIC)および日本貿易保険(NEXI)が、ベトナム・バンフォン1石炭火力発電事業への支援決定を発表したことを受け、世界39か国78団体が、JBICおよびNEXIに対し、事業への支援を撤回するよう求める緊急要請書を提出しました。
バンフォン1石炭火力発電事業は、2基の660メガワット(MW)の超臨界圧の石炭火力発電所を、カインホア省ニンホアのニンフックコミューンに建設する計画です。住友商事が出資する同事業に対し、JBIC、三井住友銀行、三菱UFJ銀行、みずほ銀行、シンガポール銀行OCBCおよび中国の中国銀行(Bank of China)が融資を、日本の民間銀行の融資部分に対しNEXIが付保します。
これまでFoE Japanは現地のNGOや、他国の団体と共同で事業の問題点や懸念についてJBIC等に伝えてきました。様々な問題が残されたまま、融資に踏み切ったことに厳重に抗議するとともに、融資撤回を求めます。詳しくは要請書をご覧ください。
>署名団体一覧・注釈を含んだ要請書はこちら(日本語)
>英語はこちら
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内閣総理大臣 安倍晋三 様
経済産業大臣 世耕弘成 様
財務大臣 麻生太郎 様
株式会社国際協力銀行 代表取締役総裁 前田匡史 様
株式会社日本貿易保険 代表取締役社長 板東一彦 様
住友商事株式会社 代表取締役 社長執行役員CEO 兵頭誠之 様
地域住民や国際社会の声を無視し、新規石炭火力に支援を続ける日本
JBIC、NEXIはバンフォン1石炭火力発電への支援撤回を!
JBIC、NEXIはバンフォン1石炭火力発電への支援撤回を!
2019年4月26日
私たち以下に署名する団体は、日本の公的金融機関である国際協力銀行(以下、JBIC)および日本貿易保険(以下、NEXI)によるベトナム・バンフォン1石炭火力発電事業(カインホア省ニンホアタウン、ニンフックコミューン、1,320MW(660MW×2基)の超臨界圧石炭火力発電所(以下、バンフォン1)への支援決定に強く抗議し、支援決定の撤回を求めます。また、日本政府に対し、一刻も早く石炭火力発電事業への支援を中止することを要請します。
OECDルール違反
日本も加盟しているOECD の公的輸出信用アレンジメントでは、石炭火力発電事業に関するセクター了解において、500MW超の石炭火力発電所については、公的支援の対象は1) 超々臨界圧、もしくは2) 温室効果ガスの排出が750g CO2/kWh未満のものに限られると規定しています。 バンフォン1はこのどちらにも当てはまらず、支援の対象外です。
JBICは、バンフォン1の最初の環境社会影響アセスメント(ESIA)が2011年に完了し、ベトナム当局により承認されていたことから、セクター了解の対象外(移行期間) に該当するとしています。しかし、ESIAは2015年に改訂され、さらに最新のESIAが完了したのは2017年11月です。最新のESIAは古いものに比べて倍のページ数があり、様々な情報の追加が行われていることからも、2017年より前に行われたESIAをもって、移行期間の例外要件を満たしているとは言えません。
石炭火力発電所建設は人々の健康に影響をもたらす
新規石炭火力発電事業への支援は、気候変動をさらに加速させ、発電所建設地の周辺コミュニティに生計手段の喪失や、大気汚染の悪化などの影響をもたらします。
バンフォン1は、ESIAによれば、大気汚染物質も大量に排出する発電所です。バンフォン1は、日本のみならず、中国やインドなど他の途上国の最新の石炭火力発電所に比べても、多くの大気汚染物質を排出します。
国際環境NGOグリーンピースのグローバルポリューションユニットのアナリスト、ラウリ・ミルヴィエルタの試算によれば、日本で建設される最新の石炭火力発電所に比べ、バンフォン1は少なくとも5倍ものPMを排出します。また、NO2は、少なくとも9倍、SOxも5倍の量を排出します。
さらに、ESIAの中で水銀が十分に考慮されていません。JBICによれば、水銀の値は検出限界値以下であり、ESIAには水銀の値が「0」と記されています。しかし、0にはなり得ません。水俣条約でも推奨されている国連環境計画の水銀キットを用いると、仮に水銀の排出対策が取られた発電所が、インドネシアとオーストラリアで産出された典型的なタイプの石炭を燃焼した場合、年間50kgの水銀を排出します。利用可能な最良の技術(BAT)を用いて水銀をコントロールした場合でも、水銀による環境影響は甚大であり、ESIAの中でしっかりと考慮されるべきです。また近隣のコミュニティに対しても、水銀が住民の健康に対してもたらすリスクについて周知されるべきです。そのために、水銀の値を再計算し、さらなる住民説明会が必要です。
『環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン』(以下、ガイドライン)においては「適切と認める場合には、他の国際金融機関が定めた基準、その他の国際的に認知された基準、日本等の先進国が定めている基準またはグッドプラクティス等をベンチマークとして参照する」としています。バンフォン1は、明らかにこれに違反します。ガイドラインでは、環境レビュー中に適切な環境社会配慮がなされていない場合には融資を拒否する可能性も規定していることから、JBICはバンンフォン1への融資決定をガイドラインに則り、撤回すべきです。
住民を無視した建設計画
さらに、バンフォン1の建設により影響を受ける地元住民は、説明会などに呼ばれておらず、事業のESIAも、地域住民に適切に公開されていませんでした。事業が地域の環境や社会に多大な影響を及ぼしうるにも拘らず、十分な情報が地域住民などのステークホルダーに提供されていませんでした。 こうした状況は、「環境社会影響評価報告書の作成に当たり、事前に十分な情報が公開されたうえで、地域住民等のステークホルダーと協議が行われ、協議記録等が作成されていなければならない」と規定するJBICのガイドラインに違反しています。
日本は脱石炭を
また、JBICを含む日本の官民は、バンフォン1に止まらず、ベトナム・ブンアン2、コソボ・コソヴァe RE、インドネシア・インドラマユといった新規石炭火力発電事業への支援を検討、またはすでに関与しています。すでに気候変動で苦しんでいる人々がいるにもかかわらず、また再生可能エネルギーなどの代替技術があるにもかかわらず、石炭火力発電所を輸出しつづけることは許されません。
G20が目前に迫る中、4月18日付の英国・フィナンシャル・タイムズ・アジア版において、国内外の市民団体らが議長国である日本の安倍晋三首相に対し、気候変動対策へのリーダーシップを発揮し、国内外での石炭火力推進をやめるよう求めていました。また、JBICに対し、バンフォン1に融資しないよう求める意見広告も3月19日付の同紙に掲載されました。
世界中で、また日本国内でも、気候変動の影響は目に見えて悪化しています。昨年日本でも度重なる猛暑や、集中豪雨による土砂災害で多くの方が亡くなりました。昨年10月に発表されたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)のレポートからも、これ以上の気候変動の被害を抑えるために、私たちに残された時間はとても短いことがわかっています。一刻も早く温室効果ガスを大量に排出する石炭火力発電から脱却する必要があります。
現在、世界中で気候変動対策を求める人々の動きがさらに拡大しています。先進国の一部は、脱石炭に向かって動き始め、各国の若者たちは気候変動対策を求めスクールストライキを起こしています。
しかし日本はいまだに先進国の中で最も公的資金を使い石炭火力を推進しています。このような状況は日本の気候変動対策における国際社会でのさらなる孤立を深め、外交リスクにもつながります。さらにこれまで大量の温室効果ガスを排出し発展を遂げてきた日本には、気候変動に対する歴史的責任があります。石炭火力の輸出ではその責任は果たせず、むしろ人々を気候危機に陥れます。
私たちは、日本の公的機関JBIC、NEXIに対し、バンフォン1からの撤退を強く求めるとともに、日本政府に対し、いかなる石炭火力への支援からも撤退することを求めます。
CC: 外務大臣 河野太郎 様
国際協力機構 理事長 北岡伸一 様
三菱UFJ銀行 取締役頭取執行役員 三毛兼承 様
みずほ銀行 取締役頭取 藤原弘治 様
三井住友銀行 頭取CEO(代表取締役) 高島誠 様