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ベトナム・ブンアン2石炭火力発電事業
【声明】ベトナム石炭火力事業で三菱商事が孤立、大手海外銀行や共同事業者らの相次ぐ撤退で - 日本の官民も脱石炭への舵きりを
2019年12月20日
日本企業、民間銀行および公的金融機関が関与する石炭火力発電事業から、海外銀行・企業が撤退したという報道を受け、FoE Japanは国内の他環境団体と共に声明を発出しました。声明内で触れられているベトナム・ブンアン2、またビンタン3石炭火力発電事業の事業予定地では、既存の工場や発電所により深刻な汚染問題が進行しています。日本の官民は世界の脱石炭の流れに沿って、石炭火力発電事業からの投融資撤退を一刻も早く決定すべきです。
詳しくは声明をご覧ください。
PDFはこちら
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12月17日、英国のスタンダード・チャータード銀行が、石炭への利益依存度が高い企業への投融資を2021年から段階的に取りやめる方針 を明らかにした。これに伴い、同銀行は、融資を検討していた、三菱商事の100%子会社が出資する合弁会社OneEnergy社 がベトナムで推進するブンアン2石炭火力発電事業(注1)からも撤退すると報じられている。これは、同事業への融資検討からの撤退が報じられたシンガポールのOCBC銀行 に続いて2行目となる 。
海外銀行2行の撤退を受け、ブンアン2事業への融資を検討していると見込まれるのは、日本の公的金融機関である国際協力銀行(JBIC)と大手民間銀行である三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行、三井住友信託銀行 、そしてシンガポールのDBS銀行のみとなった。
さらに、三菱商事と合弁を組んでいた香港に拠点を置く電力会社CLPホールディングスも、12月17日に脱石炭方針を発表した 。同方針によれば、改訂した気候変動ポリシー(『Climate Vision 2050』)に基づき、同社は新たな石炭火力発電事業への投資は行わず、既存の全ての石炭関連資産を2050年までに段階的にゼロまで減らしていくとしている。この新方針に照らせば、CLPホールディングスはブンアン2事業から撤退することを意味し、三菱商事のみが事業者として残されることとなる。また、CLPホールディングスが出資するOneEnergy社は、ブンアン2の他にベトナムでビンタン3石炭火力発電事業 (注2)にも出資しているが、同社はビンタン3からも撤退することになる。
世界中が気候危機に見舞われる中、脱石炭の流れは加速している。特に石炭火力発電事業および炭鉱開発事業については、石炭火力関連事業に関する与信ポリシーを改訂あるいは強化する金融機関、保険会社らも増えてきている。今回のOCBC銀行、スタンダード・チャータード銀行、またCLPホールディングスの決定は、まさにこの世界の潮流に沿ったものであり、日本の各企業がこれまで打ち出してきた脱石炭方針のなかで例外規定を設け、新規の石炭火力発電所を実質進めている状況とは対照的である。
石炭火力発電から再生可能エネルギーへのシフトがホスト国側にとって利益になることもすでに示されている。今年9月に英シンクタンクのカーボントラッカーが発表したレポートによれば、ベトナムにおいても2022年までに既存の石炭火力発電の操業コストより太陽光発電の建設コストのほうが安価になると分析されている 。気候変動影響も深刻になり、再生可能エネルギーの経済性が向上している中、これ以上ベトナムで石炭火力発電事業を進めるのは、企業にとっても大きなリスクとなる。
さらに、ブンアン2石炭火力発電所が建設される予定の地域には、すでにブンアン1石炭火力発電所や2016年に深刻な大規模海洋汚染を起こして魚の大量死を招いたフォルモサ社の製鉄工場、またフォルモサ社の発電所(石炭およびガス)が存在する 。これらの施設からの排水や排気、石炭灰による環境汚染が、すでに住民の健康被害につながっている可能性が多数報告されている中、ブンアン2事業は地元での環境・健康被害のさらなる拡大を招くことが懸念される。
COP25で化石賞を二度も受賞することになった日本がいつ脱石炭へと舵を切るのか、世界が注視している。パリ協定に基づき、世界の気温上昇を1.5℃以下に抑え、人類の生存を脅かす危機を回避するには、石炭火力発電所の新設は世界中どこにもできないというのが科学的知見である。一方で、日本の海外への石炭火力に対する公的支援額は世界第2位であり 、また2017年〜2019年の間、日本の3メガバンクによる石炭火力発電事業者への融資額は世界トップ3を占めていることが明らかになるなど 、日本の官民は世界の脱石炭の流れと完全に逆行している。
三菱商事、日本の民間銀行および公的金融機関は、ブンアン2石炭火力発電事業及びビンタン3石炭火力発電事業、そしてその他の石炭火力発電事業からの投融資撤退を一刻も早く決定すべきである。
注1:
【ブンアン2石炭火力発電事業】
ベトナム中部ハティン省の経済特区に建設が予定されている石炭火力発電所。2020年に建設開始、2024年に稼働開始予定。
事業規模:1,200メガワット、超々臨界圧
総投資額:22億ドル(約2,500億円)
事業者:Vung Ang 2 Thermal Power Company(VAPCO)。 VAPCOは、OneEnergy Ltd.が100%出資する特別目的事業体(SPV)。
融資機関(見込み):三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行、三井住友信託銀行、DBS銀行、国際協力銀行(JBIC)
注2:
【ビンタン3石炭火力発電事業】
ベトナム南部ビントゥアン省に建設が予定されている石炭火力発電所。2020年に建設開始、2024年に稼働開始予定。予定地に隣接して既にビンタン1、2、4発電所が稼働中。海洋保護区を含む周辺環境の汚染が深刻化している。
事業規模:1,980メガワット、超々臨界圧
総投資額:20億ドル(約2,200億円)
事業者:Vinh Tan 3 Energy Joint Stock Company(VTEC)。VTECは、OneEnergy Ltd.(49%)、ベトナムのPACIFIC Corporation-Thai Binh Duong Group (22%) 、EVN(ベトナム電力公社、29%) による特別目的事業体(SPV)。 融資機関(見込み):China Development Bank Corporation(CDB、(中国)国家開発銀行) 、Bank of Communications(交通銀行), Industrial and Commercial Bank of China(ICBC、中国工商銀行)、China Construction Bank(中国建設銀行), Bank of China(中国銀行), HSBC(香港上海銀行)
以上
詳しくは声明をご覧ください。
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【声明】ベトナム石炭火力事業で三菱商事が孤立、大手海外銀行や共同事業者らの相次ぐ撤退で
日本の官民も脱石炭への舵きりを
日本の官民も脱石炭への舵きりを
国際環境NGO FoE Japan
気候ネットワーク
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
国際環境NGO 350.org Japan
メコン・ウォッチ
気候ネットワーク
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
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メコン・ウォッチ
12月17日、英国のスタンダード・チャータード銀行が、石炭への利益依存度が高い企業への投融資を2021年から段階的に取りやめる方針 を明らかにした。これに伴い、同銀行は、融資を検討していた、三菱商事の100%子会社が出資する合弁会社OneEnergy社 がベトナムで推進するブンアン2石炭火力発電事業(注1)からも撤退すると報じられている。これは、同事業への融資検討からの撤退が報じられたシンガポールのOCBC銀行 に続いて2行目となる 。
海外銀行2行の撤退を受け、ブンアン2事業への融資を検討していると見込まれるのは、日本の公的金融機関である国際協力銀行(JBIC)と大手民間銀行である三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行、三井住友信託銀行 、そしてシンガポールのDBS銀行のみとなった。
さらに、三菱商事と合弁を組んでいた香港に拠点を置く電力会社CLPホールディングスも、12月17日に脱石炭方針を発表した 。同方針によれば、改訂した気候変動ポリシー(『Climate Vision 2050』)に基づき、同社は新たな石炭火力発電事業への投資は行わず、既存の全ての石炭関連資産を2050年までに段階的にゼロまで減らしていくとしている。この新方針に照らせば、CLPホールディングスはブンアン2事業から撤退することを意味し、三菱商事のみが事業者として残されることとなる。また、CLPホールディングスが出資するOneEnergy社は、ブンアン2の他にベトナムでビンタン3石炭火力発電事業 (注2)にも出資しているが、同社はビンタン3からも撤退することになる。
世界中が気候危機に見舞われる中、脱石炭の流れは加速している。特に石炭火力発電事業および炭鉱開発事業については、石炭火力関連事業に関する与信ポリシーを改訂あるいは強化する金融機関、保険会社らも増えてきている。今回のOCBC銀行、スタンダード・チャータード銀行、またCLPホールディングスの決定は、まさにこの世界の潮流に沿ったものであり、日本の各企業がこれまで打ち出してきた脱石炭方針のなかで例外規定を設け、新規の石炭火力発電所を実質進めている状況とは対照的である。
石炭火力発電から再生可能エネルギーへのシフトがホスト国側にとって利益になることもすでに示されている。今年9月に英シンクタンクのカーボントラッカーが発表したレポートによれば、ベトナムにおいても2022年までに既存の石炭火力発電の操業コストより太陽光発電の建設コストのほうが安価になると分析されている 。気候変動影響も深刻になり、再生可能エネルギーの経済性が向上している中、これ以上ベトナムで石炭火力発電事業を進めるのは、企業にとっても大きなリスクとなる。
さらに、ブンアン2石炭火力発電所が建設される予定の地域には、すでにブンアン1石炭火力発電所や2016年に深刻な大規模海洋汚染を起こして魚の大量死を招いたフォルモサ社の製鉄工場、またフォルモサ社の発電所(石炭およびガス)が存在する 。これらの施設からの排水や排気、石炭灰による環境汚染が、すでに住民の健康被害につながっている可能性が多数報告されている中、ブンアン2事業は地元での環境・健康被害のさらなる拡大を招くことが懸念される。
COP25で化石賞を二度も受賞することになった日本がいつ脱石炭へと舵を切るのか、世界が注視している。パリ協定に基づき、世界の気温上昇を1.5℃以下に抑え、人類の生存を脅かす危機を回避するには、石炭火力発電所の新設は世界中どこにもできないというのが科学的知見である。一方で、日本の海外への石炭火力に対する公的支援額は世界第2位であり 、また2017年〜2019年の間、日本の3メガバンクによる石炭火力発電事業者への融資額は世界トップ3を占めていることが明らかになるなど 、日本の官民は世界の脱石炭の流れと完全に逆行している。
三菱商事、日本の民間銀行および公的金融機関は、ブンアン2石炭火力発電事業及びビンタン3石炭火力発電事業、そしてその他の石炭火力発電事業からの投融資撤退を一刻も早く決定すべきである。
注1:
【ブンアン2石炭火力発電事業】
ベトナム中部ハティン省の経済特区に建設が予定されている石炭火力発電所。2020年に建設開始、2024年に稼働開始予定。
事業規模:1,200メガワット、超々臨界圧
総投資額:22億ドル(約2,500億円)
事業者:Vung Ang 2 Thermal Power Company(VAPCO)。 VAPCOは、OneEnergy Ltd.が100%出資する特別目的事業体(SPV)。
融資機関(見込み):三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行、三井住友信託銀行、DBS銀行、国際協力銀行(JBIC)
注2:
【ビンタン3石炭火力発電事業】
ベトナム南部ビントゥアン省に建設が予定されている石炭火力発電所。2020年に建設開始、2024年に稼働開始予定。予定地に隣接して既にビンタン1、2、4発電所が稼働中。海洋保護区を含む周辺環境の汚染が深刻化している。
事業規模:1,980メガワット、超々臨界圧
総投資額:20億ドル(約2,200億円)
事業者:Vinh Tan 3 Energy Joint Stock Company(VTEC)。VTECは、OneEnergy Ltd.(49%)、ベトナムのPACIFIC Corporation-Thai Binh Duong Group (22%) 、EVN(ベトナム電力公社、29%) による特別目的事業体(SPV)。 融資機関(見込み):China Development Bank Corporation(CDB、(中国)国家開発銀行) 、Bank of Communications(交通銀行), Industrial and Commercial Bank of China(ICBC、中国工商銀行)、China Construction Bank(中国建設銀行), Bank of China(中国銀行), HSBC(香港上海銀行)
以上