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ベトナム・ブンアン2石炭火力発電事業
三菱商事が原則石炭火力発電事業新規中止を表明
しかし着手済の開発案件も中止すべきと国内環境団体ら指摘
2019年10月21日
10月19日、三菱商事は「ESGデータブック2018」の改訂版を公表し、その中で、原則、新規の石炭火力発電の開発を行わない方針を表明しました。それに対し、国内の環境団体5団体が共同声明を発出しました。
データブックには「石炭火力発電事業については、既に当社として開発に着手した案件を除き、新規の石炭火力発電事業には取り組まない方針であり、2℃シナリオ下でのシナリオ分析結果も踏まえた上で、当社持分発電容量の削減を目指します」と記されています。
「新規の石炭火力発電事業には取り組まない方針」は歓迎されるものの、「既に当社として開発に着手した案件」の継続は、気候変動対策として不十分であると言わざるを得ません。
共同声明は、方針のさらなる強化、とくに開発に着手した案件として今回の新方針の対象から外している、ベトナムの2つの石炭火力発電事業(ブンアン第2石炭火力発電事業およびビンタン第3石炭火力発電事業)に関し、早期撤退を求めています。
石炭火力発電所の新規建設は、パリ協定との整合性が確保できないことが国連機関や国際エネルギー機関(IEA)等から指摘されています。また、日本でも気候変動の影響は目に見えて深刻化しています。9月には台風15号により特に千葉県で大きな被害があり、災害の傷の癒えないまま10月にもさらなる巨大台風19号が襲来し、さらなる被害をもたらしました。気候変動を食い止め、石炭火力発電所の稼働による環境汚染を防ぐためにも、計画中・建設中も含めた事業の見直しなど、三菱商事には脱石炭に向けたさらなる取り組みの強化が求められます。
詳しくは共同声明をご覧ください。
PDFはこちら
三菱商事は、「ESGデータブック2018」の改訂版をウェブサイトに公表し、原則、新規の石炭火力発電の開発を行わない方針を表明しました。
データブックには、「石炭火力発電事業については、既に当社として開発に着手した案件を除き、新規の石炭火力発電事業には取り組まない方針であり、2℃シナリオ下でのシナリオ分析結果も踏まえた上で、当社持分発電容量の削減を目指します」と記されています1。
私たちは、「新規の石炭火力発電事業には取り組まない方針」を歓迎します。しかし、例外とされた「既に当社として開発に着手した案件」の継続は、気候変動対策として不十分であると言わざるを得ません。開発中の案件も含めて速やかに撤退するという、方針のさらなる強化を求めます。
1.パリ協定との整合性の確保を
三菱商事が「既に当社として開発に着手した案件」として対象から外しているものは、ベトナムの2つの石炭火力発電事業(ブンアン第2石炭火力発電事業およびビンタン第3石炭火力発電事業)、そして日本の広野および勿来で開発されているIGCC(石炭ガス化複合発電)の計4案件ですが、ベトナムの案件はそれぞれ1200MWと1980MW、日本の2つはそれぞれ540MWと規模が大きく、CO2の排出増加を後押しするのは明らかです。石炭火力発電所の新規建設は、パリ協定との整合性が確保できないことが国連機関や国際エネルギー機関(IEA)等から指摘されており、2018年10月に発表された国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の「1.5℃特別報告書」は、さらに迅速な脱炭素化が急務であると指摘しています。したがって、パリ協定と整合する実質的な気候変動対策としては、新規案件のみならず、現時点で計画中および建設中の案件の中止、また運転中の案件からの早期撤退が必要です。特に、現時点で未着工であるベトナムの2案件については、可及的速やかに撤退の決断を下すべきです。
2. 地元の環境を汚染
三菱商事は現在ベトナムにおいて前述の2つの石炭火力発電事業に関わっていますが、ブンアン第2石炭火力発電所の建設予定地域には、ブンアン第1石炭火力発電所(1200MW)、2016年に深刻な大規模海洋汚染を起こし魚の大量死を招いたフォルモサ社の製鉄工場、フォルモサ社の発電所(石炭およびガス)が存在します2。これらの施設からの排水や排気、石炭灰による環境汚染が、住民の健康被害につながっている可能性が多数報告されています3。
同様に、ビンタン第3石炭火力発電事業に関しても、すでに隣接地で稼働している第1、2、4発電所の事業地で深刻な汚染が発生しており、改善を求める住民による抗議活動が行われています。さらにこの発電所の沖合には、ホンカウ島を含む海洋保護区が存在し、サンゴ礁の広がる海域に多様な生物種が生息しているため、海洋環境への影響も懸念されています。
新規石炭火力発電事業への支援は、気候変動をさらに加速させるだけでなく、発電所周辺の住民の生計手段の喪失や、大気汚染の悪化など、現地で看過することのできない被害をもたらします。今年8月に発表された 国際環境NGOグリーンピースによるレポート「日本の二重基準 − 海外石炭火力発電事業が引き起こす深刻な健康被害」では、日本が海外に輸出するすべての石炭火力発電所で、日本では使用されていない低レベルの技術が使われていたり、日本と同等の汚染物質対策が取られていないことが明らかにされています4。 すでに現地では甚大な環境汚染が進行しています。新たな石炭火力発電所を建設することは、地元にさらなる汚染を押し付けることになります。
3.石炭火力発電所は座礁資産リスク
気候変動とその影響への懸念が高まる中、化石燃料関連企業からのダイベストメント(投資撤退)が進んでいます。特に石炭火力発電事業および炭鉱開発事業については、石炭火力関連事業に関する与信ポリシーを変更する金融機関、保険会社らも増えてきました5。
今年4月にはノルウェーの政府系ファンドが石炭火力関連株を売却。その中には日本の住友商事も含まれています。石炭火力をとりまくビジネス環境は、ESG投資やパリ協定の観点から今後さらに厳しくなるでしょう。
さらに、10月にカーボントラッカー・東京大学未来ビジョン研究センター・CDPジャパンが発表した最新のレポート「日本における石炭火力発電の座礁資産リスク」では、日本の石炭火力発電事業の持続可能性を分析しています。それによれば、日本でも再生可能エネルギー(陸上風力・洋上風力・商業規模の太陽光発電)の価格が低下し、2023年以降段階的に石炭火力発電よりも安価になるという結果が示されており、石炭火力への投資と操業にともなうリスクが明らかにされています。また、カーボントラッカーは2018年に発表した別のレポートで、ベトナムにおいても2027年までに既存の石炭火力発電の操業コストより太陽光発電の建設コストのほうが安価になると分析しています 6。
日本でも気候変動の影響は目に見えて深刻化しています。9月には台風15号により特に千葉県で大きな被害があり、災害の傷の癒えないまま10月にもさらなる巨大台風19号が襲来し、いっそう大きな被害をもたらしました。私たちはすでに気候危機の時代に突入しています。
さらなる気候変動を食い止め、石炭火力発電所の稼働による環境汚染を防ぐためにも、計画中・建設中も含めた事業の見直しなど、三菱商事には脱石炭に向けたさらなる取り組みの強化を求めます。
以上
データブックには「石炭火力発電事業については、既に当社として開発に着手した案件を除き、新規の石炭火力発電事業には取り組まない方針であり、2℃シナリオ下でのシナリオ分析結果も踏まえた上で、当社持分発電容量の削減を目指します」と記されています。
「新規の石炭火力発電事業には取り組まない方針」は歓迎されるものの、「既に当社として開発に着手した案件」の継続は、気候変動対策として不十分であると言わざるを得ません。
共同声明は、方針のさらなる強化、とくに開発に着手した案件として今回の新方針の対象から外している、ベトナムの2つの石炭火力発電事業(ブンアン第2石炭火力発電事業およびビンタン第3石炭火力発電事業)に関し、早期撤退を求めています。
石炭火力発電所の新規建設は、パリ協定との整合性が確保できないことが国連機関や国際エネルギー機関(IEA)等から指摘されています。また、日本でも気候変動の影響は目に見えて深刻化しています。9月には台風15号により特に千葉県で大きな被害があり、災害の傷の癒えないまま10月にもさらなる巨大台風19号が襲来し、さらなる被害をもたらしました。気候変動を食い止め、石炭火力発電所の稼働による環境汚染を防ぐためにも、計画中・建設中も含めた事業の見直しなど、三菱商事には脱石炭に向けたさらなる取り組みの強化が求められます。
詳しくは共同声明をご覧ください。
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三菱商事の石炭火力発電方針に対するNGO共同声明:
原則、新規中止を歓迎 しかし着手済の開発案件も中止すべき
原則、新規中止を歓迎 しかし着手済の開発案件も中止すべき
2019年10月21日
国際環境NGO FoE Japan
気候ネットワーク
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
国際環境NGO 350.org Japan
メコン・ウォッチ
国際環境NGO FoE Japan
気候ネットワーク
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
国際環境NGO 350.org Japan
メコン・ウォッチ
三菱商事は、「ESGデータブック2018」の改訂版をウェブサイトに公表し、原則、新規の石炭火力発電の開発を行わない方針を表明しました。
データブックには、「石炭火力発電事業については、既に当社として開発に着手した案件を除き、新規の石炭火力発電事業には取り組まない方針であり、2℃シナリオ下でのシナリオ分析結果も踏まえた上で、当社持分発電容量の削減を目指します」と記されています1。
私たちは、「新規の石炭火力発電事業には取り組まない方針」を歓迎します。しかし、例外とされた「既に当社として開発に着手した案件」の継続は、気候変動対策として不十分であると言わざるを得ません。開発中の案件も含めて速やかに撤退するという、方針のさらなる強化を求めます。
1.パリ協定との整合性の確保を
三菱商事が「既に当社として開発に着手した案件」として対象から外しているものは、ベトナムの2つの石炭火力発電事業(ブンアン第2石炭火力発電事業およびビンタン第3石炭火力発電事業)、そして日本の広野および勿来で開発されているIGCC(石炭ガス化複合発電)の計4案件ですが、ベトナムの案件はそれぞれ1200MWと1980MW、日本の2つはそれぞれ540MWと規模が大きく、CO2の排出増加を後押しするのは明らかです。石炭火力発電所の新規建設は、パリ協定との整合性が確保できないことが国連機関や国際エネルギー機関(IEA)等から指摘されており、2018年10月に発表された国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の「1.5℃特別報告書」は、さらに迅速な脱炭素化が急務であると指摘しています。したがって、パリ協定と整合する実質的な気候変動対策としては、新規案件のみならず、現時点で計画中および建設中の案件の中止、また運転中の案件からの早期撤退が必要です。特に、現時点で未着工であるベトナムの2案件については、可及的速やかに撤退の決断を下すべきです。
2. 地元の環境を汚染
三菱商事は現在ベトナムにおいて前述の2つの石炭火力発電事業に関わっていますが、ブンアン第2石炭火力発電所の建設予定地域には、ブンアン第1石炭火力発電所(1200MW)、2016年に深刻な大規模海洋汚染を起こし魚の大量死を招いたフォルモサ社の製鉄工場、フォルモサ社の発電所(石炭およびガス)が存在します2。これらの施設からの排水や排気、石炭灰による環境汚染が、住民の健康被害につながっている可能性が多数報告されています3。
同様に、ビンタン第3石炭火力発電事業に関しても、すでに隣接地で稼働している第1、2、4発電所の事業地で深刻な汚染が発生しており、改善を求める住民による抗議活動が行われています。さらにこの発電所の沖合には、ホンカウ島を含む海洋保護区が存在し、サンゴ礁の広がる海域に多様な生物種が生息しているため、海洋環境への影響も懸念されています。
新規石炭火力発電事業への支援は、気候変動をさらに加速させるだけでなく、発電所周辺の住民の生計手段の喪失や、大気汚染の悪化など、現地で看過することのできない被害をもたらします。今年8月に発表された 国際環境NGOグリーンピースによるレポート「日本の二重基準 − 海外石炭火力発電事業が引き起こす深刻な健康被害」では、日本が海外に輸出するすべての石炭火力発電所で、日本では使用されていない低レベルの技術が使われていたり、日本と同等の汚染物質対策が取られていないことが明らかにされています4。 すでに現地では甚大な環境汚染が進行しています。新たな石炭火力発電所を建設することは、地元にさらなる汚染を押し付けることになります。
3.石炭火力発電所は座礁資産リスク
気候変動とその影響への懸念が高まる中、化石燃料関連企業からのダイベストメント(投資撤退)が進んでいます。特に石炭火力発電事業および炭鉱開発事業については、石炭火力関連事業に関する与信ポリシーを変更する金融機関、保険会社らも増えてきました5。
今年4月にはノルウェーの政府系ファンドが石炭火力関連株を売却。その中には日本の住友商事も含まれています。石炭火力をとりまくビジネス環境は、ESG投資やパリ協定の観点から今後さらに厳しくなるでしょう。
さらに、10月にカーボントラッカー・東京大学未来ビジョン研究センター・CDPジャパンが発表した最新のレポート「日本における石炭火力発電の座礁資産リスク」では、日本の石炭火力発電事業の持続可能性を分析しています。それによれば、日本でも再生可能エネルギー(陸上風力・洋上風力・商業規模の太陽光発電)の価格が低下し、2023年以降段階的に石炭火力発電よりも安価になるという結果が示されており、石炭火力への投資と操業にともなうリスクが明らかにされています。また、カーボントラッカーは2018年に発表した別のレポートで、ベトナムにおいても2027年までに既存の石炭火力発電の操業コストより太陽光発電の建設コストのほうが安価になると分析しています 6。
日本でも気候変動の影響は目に見えて深刻化しています。9月には台風15号により特に千葉県で大きな被害があり、災害の傷の癒えないまま10月にもさらなる巨大台風19号が襲来し、いっそう大きな被害をもたらしました。私たちはすでに気候危機の時代に突入しています。
さらなる気候変動を食い止め、石炭火力発電所の稼働による環境汚染を防ぐためにも、計画中・建設中も含めた事業の見直しなど、三菱商事には脱石炭に向けたさらなる取り組みの強化を求めます。
以上