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フィリピン・コーラルベイ・ニッケル製錬事業
ニッケル開発による環境汚染、調査結果を水環境学会で発表
2013年 3月
FoE Japanは、2009年から専門家の協力を得て、フィリピンで日系企業が関わるニッケル鉱山開発・製錬事業地の周辺地域において、継続的な水質調査を行なってきました。
調査地は、パラワン州バタラサ町、および、ミンダナオ島北スリガオ州クラベル町の2箇所。これまで、両州ともに顕著な水質汚染が見られたことから、関連企業・政府機関に対し、地元住民の健康被害の未然防止と安全の確保という視点から、適切な対応を求めてきました。
日本水環境学会での専門家の発表 |
3月13日、3年間にわたる調査の結果を第47回日本水環境学会で発表しました。
発がん性、肝臓障害、皮膚疾患等の指摘される毒性の高い6価クロムが9回の調査のたびに検出され、顕著な水質汚染が見られること、そして、河川の底質調査結果から、沿岸域に鉱山サイトから赤褐色のヘドロ状の物質(クロム・ニッケルを高濃度に含有)が大量に流れ込み堆積している実態を報告しました。
また、そうした環境汚染が、地元の生態系破壊や漁業被害を引き起こしている可能性も指摘。現在、戦略的レアメタルとしてニッケル需要が増大するなか、世界の熱帯各地のラテライト層が掘り返され、こうした汚染が発生している可能性にも警鐘を鳴らしました。
6価クロム汚染がみられるパラワン州 ドグポン川(左)と 北スリガオ州 ハヤンガボン川(右) [2011年10月・2012年5月 FoE Japan撮影] |
数年にわたる関連企業・政府機関との意見交換の結果、2012年に入り、事業者はパラワン州において6価クロム流出の軽減対策を取る方針を示し、現在、実施中です。
FoE Japanでは今後も、事業者の6価クロム流出の軽減対策が効果的な対策であるか(水質汚染に改善が見られるか)を検証するため、また、いまだに特定されていない6価クロムの汚染生成メカニズムの解明など、汚染防止対策の確立に向けた積極的な対応を事業者に求めるため、継続的な水質調査と提言活動に取り組みます。
【日本水環境学会での発表資料】
「フィリピン・パラワン島およびミンダナオ島におけるニッケル鉱山・精錬工場に関わる環境汚染について」
(金城学院大学 大沼淳一、FoE Japan 波多江秀枝)
>第47回日本水環境学会年会 講演集より[PDF]
>当日発表資料[PDF]