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パハン・セランゴール導水事業
先住民族の移転に関する公開質問状への外務省・JICAの回答
2010年11月26日
パハン-スランゴール導水事業による先住民族の移転について、2010年3月に外務省へ質問状を提出したところ、10月、外務省・JICAから質問に対する説明が行われました。
住民への説明が不十分な事項につき、外務省・JICAに質問状提出
日本のODA事業であるパハン-スランゴール導水事業を発端に、先住民族(オランアスリ:マレー語で半島部の先住民族の総称)が移転の選択を迫られています。住民の意向が十分に反映されるように、FoE JapanはマレーシアのNGOとともに、日本政府・JICAに働きかけてきました。
当初、住民に十分な情報が与えられないまま、マレーシア政府による移転の同意署名が行われたと考えられました。その後、2009年8月、日本政府やNGOの立会いのもと、再度移転に関する説明が行われ、住民に移転の意向を確認する手続きが行われました。その結果、多くの住民が移転を選択しました。
一方、この説明会の時点では、補償の詳細、移転先の土地の所有権のあり方、アブラヤシ農園の管理方法など、移転後の生活の改善・回復のために重要な部分が、未決定であったり説明が不十分でした。
ODA実施機関であるJICAは「環境社会配慮ガイドライン」で、「移転した住民の生活が改善・回復すること」と謳っており、これを確保することが求められています。また、そのための対策が、住民参加のもと計画・実施されること、さらに移転を選択しなかった住民が、これまで通りの生活を保障される必要もあります。
これら移転に関する、重要であるにも関わらず未決定、または説明が不十分な事項について、住民の生活の改善・回復が行われるようモニタリングする立場にあるJICA、監督官庁である外務省に公開質問状を提出しました。
>公開質問状はこちら
外務省・JICA、質問状に回答
「移転を希望しない世帯の権利は可能な限り保障され、生活の問題が生じない環境が確保されるべき」「アブラヤシ農園からの収入が不十分である場合は、別途対応が検討されるべき」など、移転した住民の生活の改善・回復や、残った住民の権利の保障など、いくつかの重要な回答がありました。
一方で、具体的にどのように実施を確保するのか、移転を目前に控えた現在も未決定の事項が多く残っています。例えば、住民の社会経済状況の把握のための調査は現在進行中で、これらに基づいて、アブラヤシ農園の管理方法といった生活回復の要となる事項が決定されます。また、住民移転計画もまだ策定中とのことです。
未決定の事項は、住民と協議し、住民の意見が十分に反映された実効性ある計画が策定され、それらが確実に実施される必要があります。これらが確保されるように、日本政府・JICAは引き続きモニタリングを行っていくことが必要です。
>外務省・JICAの回答[PDF]
■主な回答(抜粋) |