2011年3月11日
福島みずほ議員が、パハン・スランゴール導水事業に関する質問主意書を提出しました。
以下は、その質問主意書と政府答弁(内閣参質一七七第一〇二号 平成二十三年三月十一日)です。
質問項目
一 本事業により移転した世帯の生活の改善・回復の確保について
二 移転しない世帯の生活の保障について
三 日本政府及び国際協力機構のモニタリングについて
【マレーシアのパハン・スランゴール導水事業に関する質問主意書】
国際協力機構(当時、国際協力銀行)が二〇〇五年三月三十一日に八二〇億四〇〇〇万円を限度額とする円借款契約を締結した、マレーシアのパハン・スランゴール導水事業(以下「本事業」という。)について、以下、質問する。
一 本事業により移転した世帯の生活の改善・回復の確保について
1 本事業は、マレーシア政府から日本政府への融資申請の時期の関係で、旧国際協力銀行の「環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン」(二〇〇三年十月施行。以下「ガイドライン」という。)の適用外となっている案件であるが、本事業による先住民族の非自発的な移転という影響の甚大さに鑑みれば、その実施にあたっては、ガイドラインが適用、あるいは尊重されてしかるべきではないか。
2 非自発的住民移転という影響が回避できない場合、移転世帯の短期的、かつ、中長期的に見た生活水準の向上、少なくとも維持を図ることが非常に重要である。従って、ガイドラインにおける非自発的住民移転の要件、特に、「移転住民が以前の生活水準や収入機会、生産水準において改善または少なくとも回復できるように」すること及び「非自発的住民移転及び生計手段の喪失に係る対策の立案、実施、モニタリングには、影響を受ける人々やコミュニティーの適切な参加」が確保されるべきであるが、いかがか。
3 現在、移転後の住民の主たる生計手段は、アブラヤシの栽培である。アブラヤシが収穫できるようになるまで(四年後と想定)、これに代わる対策として毎月各世帯に現金支給が行われることになっている。一方で、専門家からは、移転住民各世帯に与えられているアブラヤシ農園(五エーカー)から得られる収入は、移転前の住民の生活水準を回復・向上させる上で十分ではないとの指摘もなされている。仮にアブラヤシの収穫が可能になった後も、住民が以前の生活水準を回復・改善するのに十分な収入が得られない場合は、これが可能となるまで、前記の対策の延長や追加的な支援等、適切な措置が講じられるべきであるが、いかがか。
4 3に示したような、移転世帯の生活水準の改善・回復のための効果的なプログラムを策定するプロセスにおいては、住民の参加を十分に確保し、プログラムの内容は、住民との協議・合意の上で決定・実施されるべきだが、いかがか。
5 3に記した懸念があるため、移転前、住民が慣習的に利用してきた元の居住区やラクム森林保護地域内等で水没しない土地においては、住民による農業、採集、狩猟、漁撈等の慣習的な利用が保障されるべきだが、いかがか。
二 移転しない世帯の生活の保障について
移転しない世帯の生活の保障について、次の事項が確保されるべく、日本政府及び国際協力機構として、マレーシア政府への働きかけをするべきだが、いかがか。
1 移転説明会で移転を希望しなかった世帯は、元の居住区に残ることになっている。一方で、本事業を契機に、元の居住区である「先住民族居住区」の指定が解除されることから、移転しない住民の生活の安定が脅かされる懸念がある。外部からの圧力などにより、移転しない世帯の生活の安定が脅かされるようなことがないように、マレーシア政府等により、適切な措置が講じられること。
2 移転しない世帯には、元の居住区やラクム森林保護地域において、彼らが慣習的に利用してきた土地や森林資源の利用が引き続き保障されること。
三 日本政府及び国際協力機構のモニタリングについて
1 一の2に記した要件を確保するために、日本政府及び国際協力機構は、本事業の環境アセスメント報告書及び住民移転計画等の環境社会配慮計画に記載されている生計回復・向上プログラムを中心に、効果的にプログラムが実施されるようにモニタリングするべきであるが、いかがか。
2 1に記した日本政府及び国際協力機構によるモニタリングは、移転住民の生活が改善・回復され、移転しない住民の生活の安定が確保されるまで実施するべきだが、いかがか。
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政府答弁はこちらからご覧ください。
>答弁書[PDF]