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インドネシア・チレボン石炭火力発電事業
腐敗にまみれたチレボン石炭火力にNo!インドネシアNGO・弁護士が来日報告
― NGO調査レポートで、民間銀行による国際CSR規範の不遵守66点も明らかに
スペイン・マドリードで開催されたCOP25(国連気候変動枠組条約第25回締約国会議)で、世界の「脱石炭」の潮流に逆行する日本への国際的な批判が集まるなか、日韓イの官民が推進する「チレボン石炭火力発電事業・拡張計画(2号機)」(東電と中部電力の合弁JERAと丸紅が出資)の腐敗の実態を報告するため、インドネシア環境フォーラム(WALHI)のスタッフ ドゥウィ・サウンさんとバンドン法律扶助協会(LBHバンドン)の弁護士ラスマ・ナタリアさんが来日しました。
二人は12月4~6日の来日中、同事業への融資を続ける国際協力銀行(JBIC)の管轄官庁・財務省、またJBICと協調融資を続ける民間銀行3行(みずほ銀行、三井住友銀行、三菱UFJ銀行)などと会合を持った他、記者会見やセミナーにも出席。1号機(66万kW)の建設・稼働により、すでに小規模漁業や塩田など住民の生計手段に甚大な影響が及んでいること、また、1号機より規模の大きい2号機(100万kW)の建設で被害が拡大することを懸念し、現地住民・NGOが環境許認可に係る法廷闘争を3年間続けていること、さらに、その最中に許認可の発行をめぐる贈収賄事件が持ち上がっていることなどを写真や図表を用いながら説明しました。そして、「これ以上、チレボンの住民の生活を汚染で破壊しないよう、日本の銀行は融資を止めるべき」「贈収賄に関与した企業には、厳罰を科すべき」と訴えました。
今回の二人の来日中、日程が合わず会合を持つことができなかったJBICに対しては、JBIC前の抗議アクションで、「汚職案件への公的融資を今すぐ一時停止」するよう呼びかけました。
(写真)2019年12月5日 記者会見の様子。図表を書いて贈収賄事件の詳細を説明するWALHIスタッフ
>掲載記事
・オルタナ「インドネシアの石炭発電所事業で汚職、邦銀が融資」(2019年12月5日)
・ワセダクロニクル「インドネシア石炭火力汚職事件 現地の環境NGOと弁護士が会見」(2019年12月6日)
・しんぶん赤旗「資金洗浄・贈収賄も発覚 石炭火発 融資中止を インドネシアNGOと共産党懇談」(2019年12月5日)
(写真)2019年12月6日 国際協力銀行(JBIC)前での抗議アクションの様子。汚職案件への公的融資即時停止を求めた。
※12月5日「【インドネシアNGO・弁護士による現地報告】セミナー: 腐敗にまみれたインドネシア石炭火力~ 私たちの預金も流れている?! 」の様子はこちらでご覧になれます。
これまで、同事業の影響を受ける住民は、同事業への融資を続けるJBICに異議申立てを行なってきました。今般、JBICとともに融資を続ける民間銀行3行が、同事業において国際CSR規範の66項目を遵守していないことが、日本NGO 「Fair Finance Guide Japan」が新しく発表した調査報告書「腐敗にまみれたインドネシア石炭発電」でも明らかにされました。同報告書では、同事業に係る以下7点の問題を明らかにしています。
(1)補償・生計回復措置の欠如
(2)公害対策における利用可能な最良の技術(BAT)利用の欠如
(3)環境アセスメントの不備と住民参加の欠如
(4)行政訴訟と違法リスク
(5)住民への人権侵害
(6)贈収賄事件と腐敗リスク
(7)気候変動対策への逆行
> 調査報告書「腐敗にまみれたインドネシア石炭発電」のダウンロードはこちら(PDF)
JBICや民間銀行は、同事業の貸付契約を2017年4月18日に締結しました。しかし、その一日後にバンドン地裁が「環境許認可の取消し」判決を出したため、当時、貸付実行を控えていた経緯があります。その後、2017年7月17日に新しい環境許認可が発行されたため、同年11月14日に銀行団は初回貸付を開始しましたが、今般、その許認可発行をめぐる贈収賄事件が持ち上がっています。
こうした経緯から、まずは2017年4月18日の時点で、JBICも民間銀行3行も融資契約を締結するべきではなかったということが言えます。また、現状においても、銀行団自身が過去に貸付実行を控えざるを得なかった「許認可」の問題をめぐり、贈収賄が指摘されていることを重く受け止め、貸付実行をこれ以上継続すべきではありません。更なる貸付を行なう前に、厳格なデューデリジェンスを行なうこと、つまり、同事業の各問題状況と遵守すべき規範の内容を一つ一つ綿密に精査・確認し、賢明な判断を下すことがJBIC及び民間銀行3行に求められています。
(★)インドネシア・西ジャワ州チレボン石炭火力発電事業
1号機は、丸紅(32.5%)、韓国中部電力(27.5%)、Samtan(20%)、Indika Energy(20%)の出資するチレボン・エレクトリック・パワー社(CEP)がインドネシア国有電力会社(PLN)との間で30 年にわたる電力売買契約(PPA)を締結。総事業費は約8.5億米ドルで、融資総額5.95億ドルのうちJBICが2.14億ドルを融資した。2012年に商業運転が開始されている。
2号機は、丸紅(35%)、JERA(10%)、Samtan(20%)、Komipo(10%)、IMECO(18.75%)、Indika Energy(6.25%)の出資するチレボン・エナジー・プラサラナ社(CEPR)がPLNとの間で25年にわたるPPAを締結。総事業費は約22億米ドルにのぼり、うち8割程度について、JBIC、韓国輸銀、日本・オランダの民間銀行団(三菱UFJ、三井住友、みずほ、ING)が融資を供与する(JBICはうち7.31億ドル)。現場では、アクセス道路の整備や土地造成作業などが終わり、本格的な工事が始まっている。2022年に運転開始見込み。
詳細はこちら → https://www.foejapan.org/aid/jbic02/cirebon/background.html
●関連WEBサイト
「JBICの石炭発電融資にNo!」プログラムについて → https://sekitan.jp/jbic/