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インドネシア・チレボン石炭火力発電事業
住民グループが再びJBICに2号機建設への貸付を停止するよう要請
インドネシア・西ジャワ州チレボン石炭火力発電事業・拡張計画(丸紅、JERA出資)の問題について、現地住民グループ Rapel(ラペル:環境保護民衆)と現地NGO WALHI(インドネシア環境フォーラム:FoEインドネシア)西ジャワが国際協力銀行(JBIC)に対し、貸付停止を求める要請書(2019年03月15日付)を再び提出しました。
同事業では、JBICがすでに融資を行なった発電所1号機が2012年から操業していますが、地元住民の生計手段に甚大な影響が及んでおり、現在、建設中の2号機についても、地元住民から問題の拡大を懸念する声が聞かれます。
住民グループはと現地NGOは、自分たちがこれまでに伝えてきた懸念・問題点をJBICが精査し、適切な対応をとるとともに、2号機建設への貸付停止を求めています。
以下、要請書の和訳です。
PDF版はこちら。
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(同書簡の原文は英語。以下、その和訳。)
国際協力銀行(JBIC)
代表取締役総裁 前田 匡史 様
継続的に引き起こしているコミュニティーへの深刻な影響と、私たちが継続的に要求している事業停止の件
私たちチレボンの住民グループRapel(ラペル:環境保護民衆)と(現地NGOである)WALHI(インドネシア環境フォーラム)西ジャワは、チレボン石炭火力発電事業について、貴行が考慮しなければならないと私たちが考える情報を提供し、さらにチレボン石炭火力発電所2号機(チレボン2)へのこれ以上の貸付を止めるよう貴行に要求するため、再度書簡を書いています。
まず、2019年2月16日よりインターネット上で公開されている韓国放送公社(KBS)による最近の特集動画を見ていただくことを貴行にお勧めします。この動画は、チレボン石炭火力発電所1号機(チレボン1)による現地コミュニティーの暮らしや健康への重大な負の影響が今も継続して起きていることを映し出しています。チレボン1の事業後、漁民は事業地近くでの漁獲量が減ったと述べています。更に、現地の子供も大人も健康被害に悩まされています。ここで貴行に知っておいていただきたいのは、RapelやWALHI西ジャワは、このKBSの動画作成に関わっていないということです。つまり、Rapelに所属している、していないに関わらず、チレボン1周辺の現地住民は、コミュニティーの生活に対する深刻な影響について証言しているのです。
現地住民にとって、このような問題が起きている原因を正確に説明することは難しいでしょう。しかしながら、現地コミュニティーの暮らしや健康がチレボン1の事業後に大いに悩まされているという事実や現状を貴行は軽視してはなりません。チレボン1(660 MW)より更に大きい発電容量を有するチレボン2(1000 MW)の事業により、現地コミュニティーで今現在起きている暮らしや健康への負の影響がより悪化するという自然な恐れから、私たちはチレボン2事業への懸念、そして強い反対の意を示してきました。特に、チレボン2の埠頭建設により被害を受けている小規模漁民のことを考慮しても、私たちの恐れはすでに現実になってきていることから、私たちは現世代の、また次世代の現地コミュニティーのために、どのような平和的手段を使ってもチレボン2を止めようという私たちの闘いを止めることはありません。
同事業を止めるための私たちの活動の一つには、訴訟が依然含まれています。最高裁判所は、私たちの2つめの行政裁判所のケースで、チレボン2の新しい環境許認可を取り消すべきだという私たちの訴えを棄却しました。一方、私たちは現在、弁護団とともに再審請求、また関連する司法審査の準備を進めています。つまり、チレボン2に関わる訴訟過程はまだ終わっていないのです。貴行は、この事業が依然法的リスクを伴うものであり、また貴行自身の環境社会配慮確認のためのガイドラインに違反する可能性がある、ということに十分留意すべきです。私たちは再度貴行に対し、これまでに私たちが提出してきたレターや異議申立書を慎重に精査することを強く提言します。
今や、チレボン2の出資企業でさえも石炭火力発電事業から投資撤退する必要性を認めてきているということに私たちは気づいています。例えば、丸紅は2018年9月18日付けで「石炭発電事業及び再生可能エネルギー発電事業」に関する新しい取り組み方針を発表しました。また、JERAは、「既存火力発電事業等統合に伴う経営•組織体制の確立について」と題した2019年2月4日付けの発表資料のなかで、世界で進行中のエネルギー転換として「脱石炭・ガスシフト」に言及しています。気候変動・災害への緊急的な措置の必要性から、私たちは今後、石炭産業からの投資撤退という世界的な動きが止まるどころか、さらに強まっていくと理解しています。これは、もはやインドネシアや日本のだけの問題ではなく、地球規模における喫緊の課題なのです。よって、私たちは、貴行と出資企業が既存の合意や契約にとらわれず、チレボン2のような現在継続中の事業からの投資撤退について、より真摯に話し合うことを要請します。
私たちは、上述の現地での状況、また、脱炭素化に向けた世界的な要請を踏まえ、貴行がチレボン2にこれ以上貸付を実行しない、つまり、貸付を停止するよう強く要求します。
貴行におかれましては、本件に関し、多大なご配慮と賢明なご検討を行なっていただけますよう、宜しくお願い申し上げます。
(ラペル・チレボンのリーダー2名、および、WALHI西ジャワ代表による署名)
Cc:
JBIC環境ガイドライン担当審査役
>チレボン石炭火力発電事業の詳細については、こちら