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インドネシア・チレボン石炭火力発電事業
インドネシア・チレボン石炭火力 住民グループが丸紅にチレボン事業からの撤退を要請
チレボン石炭火力発電事業に反対する住民グループRAPELが、石炭火力に関する新方針を打ち出した丸紅に対し、稼働中の1号機、建設中の2号機、計画中の3号機と、チレボンにおけるすべての石炭火力発電事業から撤退するよう求めるレター(10月15日付)を提出しました。
(写真左)丸紅は石炭からのダイベスト(投融資撤退)を!
(写真右)2号機の建設作業のすぐ側で塩づくりを続ける塩田農家
以下、住民グループのレターの和訳です。
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2018年10月15日
丸紅株式会社 代表取締役社長
國分 文也 様
貴社石炭火力発電事業に関する新方針を受けての
インドネシア・チレボン石炭火力発電事業に関する意見および要請
私たちはチレボンの住民グループRapel (ラペル:環境保護民衆)を代表し、9月18日に発表された貴社石炭火力発電事業に関する新方針を受け、意見と要請を述べさせていただきます。
貴社新方針においては、「石炭火力発電事業によるネット発電容量を、2018年度末見通しの約3GWから2030年までに半減」させ、超々臨界圧発電方式を除き、「新規石炭火力発電事業には原則として取組まない」とされています。
したがって、私たちは貴社新方針に則り、チレボン石炭火力発電所一号機(チレボン1)を即時閉鎖、並びにチレボン石炭火力発電所二号機(チレボン2)の建設を即時中止するよう改めて貴社に要求します。また、2016年5月に貴社が覚書を締結されたチレボン石炭火力発電所三号機(チレボン3)についても、これ以上推進しないでください。こうした私たちのグループによる要求は、超々臨界圧発電方式の発電所であっても変わることはありません。というのは、これらの事業が現地住民に及ぼす環境的・社会的コストの甚大さ、そして、これらの開発事業がいかに違法に進められてきたかということを私たちはずっと目にしてきたからです。
ご存知の通り、私たちラペルは2007年に結成されました。以来、私たちは継続して生計手段の喪失や被害、環境破壊、健康被害、脅しや脅迫、社会的紛争といった、チレボン1による悪影響に関する懸念をあげてきました。
2007年にチレボン1の土地造成・建設が開始されて以来、私たち住民が従事してきた生計手段のなかにはまったく立ち行かなくなったものもあり、また(続けられてはいるものの)被害を受けたものもあります。実際、チレボン1の土地造成・建設は2007年時点で環境許認可が発行されておらず、違法なものでした(2017年5月の東京での会合において、貴社社員の方々はこの件について否定されましたが)。小規模漁業、貝類の採取・栽培、塩づくり、テラシ作り、そして農業といった私たちの主な生業は、チレボン1によって甚大な被害を受けました。チレボン1以前の私たちの生活は、さまざまな収入源に恵まれ、ずっと楽なものでした。
また、私たちは、チレボン1だけでなく、チレボン2による累積的な悪影響によってさらなる苦しい生活を強いられたくないとの思いから、2016年にチレボン2の環境許認可の取消しを求める行政訴訟を開始しました。現在、私たちの2回目の訴訟プロセスは最高裁の段階ですが、平和的手段によってチレボン2を中止させたいという私たちの決して変わることのない意思について、貴社に注意喚起をさせていただきたいと思います。
最後に、貴社は、ジャワ・バリ系統における電力の過剰供給、そしてインドネシア国有電力会社(PLN)の多額の負債という不健全な財政状況を考慮したほうがよいかもしれません。貴社の出資先であるCEPおよびCEPRがすでに経験している可能性もありますが、すでにPLNはIPPとの電力購買契約(PPA)について再交渉する方向に動いています。これは、ジャワ・バリ系統における発電事業が他のものに比べ不確実かつ不安定な事業であることの証左であり、貴社によるチレボン1、2及び3からの撤退は非常に検討に値するものでしょう。
私たちは、貴社が気候変動の問題に対処するため、また私たちコミュニティが抱えてきた甚大な環境的および社会的コストの問題解決のために、石炭火力発電事業に関する新方針を実施し、そして私たちのコミュニティにおける石炭火力発電事業から撤退するという毅然とした決断を下すよう期待しています。
(ラペルのリーダー2名による署名)
Cc
国際協力銀行 代表取締役総裁 前田匡史 様
株式会社JERA 代表取締役社長 垣見 祐二 様
株式会社みずほ銀行 取締役頭取 藤原 弘治 様
株式会社三井住友銀行 頭取 CEO(代表取締役)髙島 誠 様
株式会社三菱UFJ銀行 取締役頭取執行役員 三毛 兼承 様
韓国輸出入銀行 総裁 Sung-soo Eun 様
Mr. Ralph Hamers, CEO and chairman Executive Board, ING Group
アイエヌジーバンクN.V. 東京支店 代表者 Yuichi Hirasawa 様
(※)インドネシア・西ジャワ州チレボン石炭火力発電事業
1号機は、丸紅(32.5%)、韓国中部電力(27.5%)、Samtan(20%)、Indika Energy(20%)の出資するチレボン・エレクトリック・パワー社(CEP)がインドネシア国有電力会社(PLN)との間で30 年にわたる電力売買契約(PPA)を締結。総事業費は約8.5億米ドルで、融資総額5.95億ドルのうちJBICが2.14億ドルを融資した。2012年に商業運転が開始されている。2号機は、丸紅(35%)、JERA(10%)、Samtan(20%)、Komipo(10%)、IMECO(18.75%)、Indika Energy(6.25%)の出資するチレボン・エナジー・プラサラナ社(CEPR)がPLNとの間で25年にわたるPPAを締結。総事業費は約22億米ドルにのぼり、うち8割程度について、JBIC、韓国輸銀、日本・オランダの民間銀行団が融資を供与する(JBICはうち7.31億ドル)。現場では本格着工に向け、アクセス道路の整備や土地造成作業などが進められており、2022年に運転開始見込み。
詳細はこちら → https://www.foejapan.org/aid/jbic02/cirebon/background.html
●関連WEBサイト
「JBICの石炭発電融資にNo!」プログラムについて → https://sekitan.jp/jbic/