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インドネシア・チレボン石炭火力発電事業
インドネシア・チレボン石炭火力・拡張計画
原告団が最高裁に上告 日本の官民は支援停止と撤退を!
昨年12月に現地住民・NGOが2度目の行政訴訟を起こしたインドネシア西ジャワ州・チレボン石炭火力発電事業・拡張計画(★)。日本の官民が推進する同事業に対して発行された2つめの環境許認可の取消しを求めていますが、今年5月の地裁判決に続き、8月、ジャカルタ高裁も原告の訴えを棄却しました。
これを受け、住民・NGO原告団は9月5日、高裁判決に対する反論文書を提出。最高裁への上告を行ない、法廷闘争を続けています。
(写真左)2018年5月 国際協力銀行(JBIC)前で、インドネシアと日本のNGOが融資撤回を求める抗議アクション
(写真右)2018年7月 塩田を潰して進められる拡張計画の土地造成。その隣では、農家が塩づくりを続けている
同事業では稼働中の1号機により、小規模な漁業や塩づくりなど住民の生計手段にすでに甚大な被害がもたらされてきました。住民はさらなる被害を食い止めようと、2016年12月、拡張計画(2号機)に反対する環境訴訟を地元で開始。その結果、2017年4月の判決で2号機の環境許認可は取消され、拡張計画が違法であることが一度確定しました。
しかし、丸紅やJERA(東京電力と中部電力の合弁会社)が出資する事業者は、2017年7月に住民・NGOが知らぬ間に発行された2つめの環境許認可を根拠に、拡張計画の建設作業を継続。また、住民勝訴の判決一日前に融資契約を締結という前代未聞の決定を行なった国際協力銀行(JBIC。日本政府100%出資)と民間銀行は、2つめの許認可に対する住民訴訟が再び起こされることを知りつつ、2017年11月に拡張計画への融資の支払いを始めました。
日本政府やJBICは、依然として違法リスクを伴う同拡張計画への融資貸付をまずは控えるべきです。また、自分や子どもたちの未来の生活・環境を守ろうと、あくまでも同拡張計画の中止を求め、粘り強く法廷闘争をつづけている住民の意見・権利を尊重し、同拡張計画への融資供与を早急に見直すべきです。
以下、現地NGOのプレスリリース(和訳)です。
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気候正義のための提言チーム(原告弁護団)
プレスリリース
2018年9月8日
インドネシア・チレボン石炭火力・拡張計画
環境許認可に係る法廷闘争は依然継続:原告弁護団が上告文書を提出
バンドン発 ― ジャカルタ高等行政裁判所の判事団は、2018年8月1日、バンドン行政裁判所の判決を支持する決定を下しました(※原告弁護団は同判決を8月9日に受領)。つまり、カンチ・クロン村住民とインドネシア環境フォーラム(WALHI)が、西ジャワ州投資・ワンドア統一サービス局局長の発行したチレボン石炭火力・拡張計画(1000 MW)に係る環境許認可について控訴を行なっていましたが、棄却されたということです。
同判決に関し、カンチ・クロン村の影響住民らやWALHI、また、(原告弁護団である)気候正義のための提言チームのメンバーであるバンドン法律扶助協会(LBH)は異議を表明。2018年9月5日、控訴判決への反論文書をバンドン地裁に提出し、(最高裁に)上告しました。
ジャカルタ高裁の判事団は、(原告の)訴えにおいて問題とされている重要な中身に注意を払うこともなく、考慮もしなかったと、私たちは考えています。重要であるのは、チレボン石炭火力・拡張計画に係る環境許認可が発行された手続に法的瑕疵があった点です。加えて、同判事団は、コミュニティーの参加の側面や、環境アセスメント文書における相当の不備、また、同石炭火力事業自体が環境(保護)の原則や本質に沿わないものであることについて、何ら検討を行ないませんでした。
ジャカルタ高裁判決に対する私たちの上告理由の詳細は、以下のとおりです。
1. ジャカルタ高裁、および、バンドン地裁は、訴訟対象(訳者注:環境許認可)に対して、1986年法律第5号第2条を誤適用している。(訳者注:第一回訴訟におけるバンドン地裁の判決は、環境許認可の無効を宣言し、西ジャワ州政府に同許認可を取消すよう求めたものであり、修正等を求めたものではない。)
2. 訴訟対象は、環境許認可の発行手続における法的瑕疵を正したものではないため、(2017年4月19日の第一回訴訟におけるバンドン地裁による)判決第124号の履行には当たらない。
3. ジャカルタ高裁、および、バンドン地裁は、1986年法律第5号第2条を行政訴訟において誤適用している。(訳者注:「判決の履行」について、誤解釈している。)
4. 原告側の主張である(a)参加(における不備)、(b)環境アセスメント文書における相当の不備、(c)沿岸域の環境保護区域内であるといった点について、まったく考慮されていない。
控訴判決への反論文書の提出は、すなわち、チレボン石炭火力・拡張計画に係る法的闘争のプロセスが依然継続中であることを示すものです。したがって、私たちは、融資者である日本の国際協力銀行(JBIC)や韓国輸出入銀行、および、出資者である丸紅などに対しても、係争中である法的プロセスを尊重するよう注意喚起をしたいと思います。私たちは、JBICや韓国輸銀が融資を、そして、丸紅などが出資をそれぞれ停止し、依然として法的問題を抱えている同事業からの撤退を改めて検討するよう要請します。
連絡先:
・WALHI西ジャワ事務局長Dadan Ramdan
・気候正義のための提言チームLasma Natalia
(★)インドネシア・西ジャワ州チレボン石炭火力発電事業
1号機は、丸紅(32.5%)、韓国中部電力(27.5%)、Samtan(20%)、Indika Energy(20%)の出資するチレボン・エレクトリック・パワー社(CEP)がインドネシア国有電力会社(PLN)との間で30 年にわたる電力売買契約(PPA)を締結。総事業費は約8.5億米ドルで、融資総額5.95億ドルのうちJBICが2.14億ドルを融資した。2012年に商業運転が開始されている。2号機は、丸紅(35%)、JERA(10%)、Samtan(20%)、Komipo(10%)、IMECO(18.75%)、Indika Energy(6.25%)の出資するチレボン・エナジー・プラサラナ社(CEPR)がPLNとの間で25年にわたるPPAを締結。総事業費は約22億米ドルにのぼり、うち8割程度について、JBIC、韓国輸銀、日本・オランダの民間銀行団が融資を供与する(JBICはうち7.31億ドル)。現場では本格着工に向け、アクセス道路の整備や土地造成作業などが進められており、2022年に運転開始見込み。
詳細はこちら → https://www.foejapan.org/aid/jbic02/cirebon/background.html
●関連WEBサイト
「JBICの石炭発電融資にNo!」プログラムについて → https://sekitan.jp/jbic/