問題と視点
開発金融機関への
政策提言 個別事業モニタリング 気候変動と開発 資料室 参加しよう
政策提言 個別事業モニタリング 気候変動と開発 資料室 参加しよう
インドネシア・チレボン石炭火力発電事業
欧米銀行の融資撤退で日本の孤立化が現実に ~ インドネシア石炭火力発電事業
2017年1月3日
日本が官民をあげて推進している海外への石炭火力支援ですが、インドネシアの事業で「日本の孤立化」が表面化してきました。
フランス大手銀行ソシエテ・ジェネラルが、中ジャワ州タンジュンジャティB石炭火力発電所の拡張計画(住友商事、関西電力が出資)からの融資撤退を決定したためです。同行は昨年10月、気候変動への影響を重視し、あらゆる石炭火力発電事業からの融資撤退の方針をすでに示していました。
同発電所の拡張計画には、日本の国際協力銀行(JBIC)や 3メガバンク、また、フランス大手のクレディ・アグリコル銀行が融資を検討中ですが、今回のソシエテ・ジェネラルの撤退により銀行団の組成が崩れたことから、事業の遅延が見込まれます。また、クレディ・アグリコル銀行についても、ソシエテ・ジェネラルと同様、石炭火力事業からの融資撤退方針を昨年10月に示しており、市民社会からは「クリディ・アグリコルも各石炭火力事業から撤退を!」との声がさらに強まってきています。
気候変動への影響を重視し、世界でダイベストメント(投融資撤退)が進んできているなか、JBIC・邦銀がこうした「孤立化」のリスクに晒されているのは、西ジャワ州チレボン石炭火力発電所の拡張計画(丸紅、中部電力が出資。)も同様です。日本も国際社会の動きを直視し、賢明な対応を迫られています。
以下、フランスNGOのプレスリリース(和訳)になります。
---------------------------------------------------
(原文はフランス語。以下は同英訳を和訳。)
英訳はこちら> https://www.banktrack.org/show/article/coal_in_indonesia_societe_generale_pulls_out_of_financing_credit_agricole_under_pressure_to_follow#inform=1
プレスリリース
FoEフランス
インドネシアの石炭火力発電事業:
ソシエテ・ジェネラルが融資銀行団から撤退
―― この動きに続けと、クレディ・アグリコル銀行にもプレッシャー
フランス・パリ発 2017年1月3日 ― FoEフランス(Friends of the Earth France)が歓迎するなか、ソシエテ・ジェネラルはインドネシアのタンジュンジャティB石炭火力発電所(TJB)拡張計画(訳者注1)に融資しないことを自ら認めました。これにより同銀行は、2015年のBNPパリバ銀行に続き、気候変動やインドネシア住民の健康に重大な影響を及ぼすということで、議論を呼んできたTJB拡張計画から撤退を決めた第2番目のフランス民間銀行となりました。この動きを受け、FoEフランスは、クレディ・アグリコル銀行もTJB拡張計画、および、同じくインドネシアのチレボン石炭火力発電所拡張計画(訳者注2)から撤退し、両案件の潜在的な影響を回避するとともに、世界中の新規の石炭火力発電事業への融資を止めるという昨年10月の公約をクレディ・アグリコル銀行が考慮し、確実に実行するよう求めています。
ソシエテ・ジェネラルは2016年10月の公約で、2017年1月1日から新規の石炭火力発電事業への融資を行なわないとしていました。したがって、同銀行はインドネシアのTJB拡張計画への融資を供与することはできません。(注1)同事業は、気候変動対策のための2℃目標と矛盾し、また、ある調査によれば、1,200人の早期死亡につながりうるとされています。(注2) ソシエテ・ジェネラルはTJB拡張計画への融資を検討中である銀行団6行(クレディ・アグリコル銀行も含む)の一翼を成していましたが、2017年が始まる前に融資契約の締結に至らなかったため、ソシエテ・ジェネラルの参加は確保されませんでした。
FoEフランスの民間金融キャンペーナーであるLucie Pinsonは、以下のコメントを寄せています。
「パリ協定の採択後も一連の石炭火力発電事業への関与を続けていることに対し、プレッシャーを受けたソシエテ・ジェネラルは2016年10月、世界中のあらゆる新規の石炭火力発電事業への融資を止めると公約しました。しかし、TJB拡張計画を推進しているクライアントとの関係を損ないたくないため、同銀行は2016年12月までに融資契約を締結すればよいという猶予を自ら設けていました。同事業がさらに遅延を余儀なくされたなか、ソシエテ・ジェネラルは現在、10月の公約に留意し、銀行団からの離脱義務を負うこととなります。」
FoEフランスは2016年1月、金融業界紙のある記事から、ソシエテ・ジェネラルとクレディ・アグリコル銀行がBNPパリバ銀行の融資撤退後に、TJB拡張計画に対する銀行団に名乗りをあげたことを知りました。また、その数ヵ月後の報道によれば、クレディ・アグリコル銀行がインドネシアで2件目となる案件(チレボン拡張計画)にも関与するとのことでした。後者の案件はTJB拡張計画よりもさらに議論を呼んでおり、現在も現地での法的課題に直面しています。(注3)
Lucie Pinsonは続けて、以下のとおり述べました。
「フランスの他の民間銀行と異なり、クレディ・アグリコル銀行は依然としてインドネシアの新規石炭火力発電事業に関与しています。それも1案件のみならず、2案件にです。新規の石炭火力発電事業に直接融資を行なうフランスの最後の民間銀行となることは極めて負の遺産となるでしょう。私たちはクレディ・アグリコル銀行に対し、TJB、および、チレボンの両拡張案件から早急に撤退するよう求めます。2016年10月にはソシエテ・ジェネラルとまさに同じように、世界中のあらゆる新規石炭火力発電事業への融資は行なわないと公約したのです。新年の決意がまだ新鮮なうちに、クレディ・アグリコル銀行が2016年の公約を留意することが重要です。」
12月末、クレディ・アグリコル銀行は石炭火力発電所に関し、新たな方針を打ち出しました。すなわち、新規の(石炭)発電所に融資しないという昨年10月の公約を規定し、石炭から電力の50%以上を発電している企業への支援をこれ以上行なわないという概要を述べたものです。FoEはこの方針を分析し、また、チレボン拡張計画がクレディ・アグリコル銀行の環境社会面で示している公約と一致しているかについて報告書をまとめました。同分析の結論としては、もしこの新しい方針が弱く、不十分なものとなり、気候変動対策目標が満たされなければ、チレボン拡張計画への融資は同銀行が採択している赤道原則の明らかな違反になるということです。(注4)
連絡先:
Lucie Pinson, Private finance campaigner, Friends of the Earth France, Tel: +33 6 79 54 37 15, Email: lucie.pinsons@amisdelaterre.org;
脚注:
(1) FoEフランス、および、BankTrackによるプレスリリースを参照:
https://www.banktrack.org/show/article/credit_agricole_and_societe_generale_announce_end_to_financing_of_coal_power
(2) FoEフランス、および、グリーンピースによるプレスリリースを参照:
https://www.amisdelaterre.org/Indonesie-le-test-climatique-du-Credit-Agricole-et-de-la-Societe-Generale.html
(3) TJB拡張計画に関する「プロジェクト・ファイナンス・インターナショナル」および「プロジェクト・ファイナンスとインフラストラクチャー・グローバル」記事を参照:
https://www.pfie.com/french-banks-support-tjb2/21231277.article ;
https://ijglobal.com/articles/99000/banks-mandated-for-indonesias-cirebon
(4) プレスリリース、および、分析については下記ホームページ参照:
https://www.amisdelaterre.org/CLIMAT-Credit-Agricole-annonce-un-nouvel-engagement-mais-va-toujours-au-charbon.html
訳者注:
(1) 中ジャワ州ジュパラ県の既設発電所(1~4号機。総発電容量2640 MW)の隣接地に5、6号機(発電容量1070 MW x 2基)を増設する計画。住友商事、関西電力が出資決定。フランスの民間銀行の他、国際協力銀行(JBIC)や日本の民間銀行が融資を検討中。
(2) 西ジャワ州チレボン県の既設発電所(1号機。発電容量660 MW)の隣接地に2号機(発電容量1000 MW)を増設する計画。丸紅、中部電力が出資決定。フランス、オランダ(ING銀行)の民間銀行の他、JBICや日本の民間銀行が融資を検討中。
(翻訳:FoE Japan)