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フィリピン・ボホール灌漑事業
再び遠のいた問題解決への道
~第2回現地ステークホルダー会合の報告~
2010年12月15日
会合の開始直後の会場 住民組織・現地NGOが退席し 会場は閑散とした状態に |
12月8日、フィリピンのボホール州で「ボホール灌漑事業」に関する第2回マルチ・ステークホルダー会合が開催され、住民組織や現地NGO、フィリピン政府関係者、日本の国際協力機構(JICA)を含む第1回会合(9月)の出席者が再び一堂に会しました。
前回話し合われた問題の解決策がどのように進んでいるか等の確認が行なわれましたが、話し合いは紛糾。不信感を抱かせるような政府関係者の対応に、住民組織と現地NGOが、実質的な議論がなされる前に会合を中座してしまう事態に終わってしまいました。
住民組織と現地NGOが会合の途中で退席したのは、フィリピン政府関係者が以下のような対応を取ったためでした。
①整地作業に係る調査において被害農民の署名を偽造した可能性
②適切な手続き(文書に署名した諸関係者への確認)無しで「覚書」を一部修正
③同会合において、不適切かつ一方的に議論を進行
①の「調査」は、前回の会合で解決策の一つとして提示された「灌漑用水の届いていない農地について、整地作業に伴う費用の借金返済を免除するため、各々の農民のケースについて精査する」もの。今回の会合では、フィリピン政府関係者から同調査の進捗状況が報告され、これまでに調査が終わったとされる103ケースのリストが配布されました。
住民から「署名していない」との指摘 |
それに対し、住民組織の出席者から「自分の農地で調査が行なわれたことは知らず、何にも署名していないのに、なぜ自分の名前がリストに掲載されているのか」との指摘がなされました。フィリピン政府関係者は、「(同住民の)署名がある」と調査書にある「署名」を見せながら反論。しかしそれが本人の署名と異なるものであることが判明しました。
フィリピン政府側は「誰がその『署名』を取ったのか調査する」とし、その場の議論を収めましたが、住民組織や現地NGOが「政府側が署名を偽造した可能性がある」と考えても無理はない状況でした。
今回の会合で、現地住民・NGOの政府側に対する不信感がより大きくなったことは確かで、フィリピン政府関係者と住民・NGO側の直接対話が困難となった状況の中、問題の解決への道のりは再び遠のいてしまった形です。
事業の完工後13年もの間、灌漑用水を享受できず、「被害者」となってしまった地元住民らが問題の解決を訴える中、事業の実施主体であるフィリピン政府関係者の適切な対応をどう引き出し、速やかな問題の解決に向けた道筋を提示していけるか――JICAの積極的な打開策が期待されます。
>現地NGOが第2回現地会合前に提出したポジション・ペーパー(英文)
>現地NGOが第2回現地会合後に提出したポジション・ペーパー(英文)