政策提言 個別事業モニタリング 気候変動と開発 資料館 参加しよう
フィリピン・ボホール灌漑事業
JICA現地調査に関する意見書を提出
日本の援助で進められたフィリピンのボホール灌漑事業について、5月10日、日本のNGO・個人は共同で、
国際協力機構(JICA)の現地調査に関する意見書を提出しました。
意見書を提出したのは、関西フィリピン人権情報アクションセンター、国際環境NGO FoE Japan、
債務と貧困を考えるジュビリー九州、フィリピン情報センター・ナゴヤ、栗田英幸(愛媛大学)の4団体と1個人で、
これまでにも同事業の問題を訴えてきた現地の住民組織・NGOとともに、数年間にわたり、JICAに問題解決を求めてきました。
同事業は、3つの灌漑用ダムを建設し、約10,000ヘクタールの水田に水を供給する計画で、農民の生活向上が見込まれていました。
しかし、1つ目のマリナオダムが完成した1997年以来、マリナオダムの受益地域では水の供給が計画通りにいかず、
これまでの作付面積の実績は目標の6割程度に留まっています。JICAが今回行なう現地調査は、
こうした必ずしも事業の効果が上がっているとは言えない現状に対処し、事業の発現効果を高めることを目的として行なわれます。
しかし、同事業の問題は事業効果のみではありません。同事業では、マリナオダムから灌漑用水が届くことを前提に、
ブルドーザー等で土地を均し、畑を水田用に整地した農民が多くいます。
しかし、整地した農地に水が届かず、同事業以降、生活の悪化に苦しむことになった農民が出てきました。
ブルドーザーによって肥沃な表土が剥ぎ取られたため、水稲ばかりか、以前畑で栽培していた作物も作れなくなって
しまったからです。また、ブルドーザー等の費用の返済義務も負ってしまいました。
今回の意見書では、事業の発現効果への対処のみならず、こうした整地作業による被害の状況の把握と
その問題解決に向けた対処を現地調査の目的として含め、
・灌漑用水が供給できていない、あるいは、不足している農地の特定
・当該農地に水が届かない原因の特定を実地で行なうこと、また、
・整地作業等、農民の抱える問題・要望を住民組織から直に聞く場の設置等をJICAに求めています。
意見書と参考資料の全文はこちらをご覧ください。
>意見書
>参考資料
現在、ODA改革が進められている中、今後どのようにODA事業を行なっていくかが議論されていますが、
NGOからは、過去のODA事業における問題の検証の必要性も叫ばれています。
また、先月4月23日に行われた「事業仕分け」の議論の中では、JICA(有償資金協力)について
「審査機能の強化」が必要との結論が出されました。
現地住民・NGOが問題を長年訴えてきたボホール灌漑事業において、今回、現地調査を行なうことにしたJICAが、
どれだけ同事業の問題の検証を掘り下げて行ない、問題解決に向けた対処を取っていけるか――
今後のJICAの審査機能や実施体制を占う一つの試金石としても注目されます。
> ボホール灌漑事業の詳細な情報はこちら