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インドネシア・バタン石炭火力発電事業
【プレスリリース】日本政府・JBICに対する緊急要請書を提出
「住民合意のない、抑圧的な強行工事ストップを」
日本が官民を挙げて推進しようとしている東南アジア最大級の「インドネシア・中ジャワ州バタン石炭火力発電所(2,000メガワット)」の建設予定地では、懸
案であった土地収用の決着がついていないにもかかわらず、4月上旬からインドネシア国軍の重機による掘削等が強行されています。
このように住民の合意がないまま、抑圧的な手段で進められている同事業に関し、本日、日本のNGO4団体(国際環境NGO FoE Japan、インドネシア民主化支援ネッ
トワーク<NINDJA>、「環境・持続社会」研究センター<JACSES>、気候ネットワーク)から日本政府・JBICに対し、緊急要請書を提出。事業関係者やインドネシア
政府に対して、抗議の意を伝え、早急に工事停止を申し入れるよう要請しました。
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内閣総理大臣 安倍 晋三 様
財務大臣 麻生 太郎 様
国際協力銀行 代表取締役総裁 渡辺 博史 様
インドネシア・中ジャワ州バタ石炭火力発電事業
建設予定地での強行工事に関する緊急要請書
日本企業がすでに出資を決め、現在、国際協力銀行(JBIC)が融資を検討中の「インドネシア・中ジャワ州バタン石炭火力発電事業」の建設予定地で、住民が土地売却/収用に合意していないにもかかわらず、今年4月上旬から工事が強行されています。また、インドネシア国軍の重機が農地のなかで土地造成・盛土などをしている建設予定地の緊迫した様子も伝えられています(※1)。私たちは、日本が官民をあげて推進する同事業で、このような大変憂慮すべき事態となっていることへの強い懸念の意を表明するとともに、日本政府、および、JBICに対して本緊急要請書を提出致します。
同事業はこれまで、農業・漁業など生計手段の喪失、また、公害による健康への影響等を懸念する住民が根強い反対運動を続けており、3年間着工が遅れてきました。反対する住民のリーダーや事業予定地内の土地売却を拒む地権者らに対し、インドネシア国軍・警察等による脅迫、暴力行為、あるいは、不当逮捕・拘禁など、さまざまな人権侵害が繰り返されてきましたが、今日まで、事業予定地内の約10%の土地を所有する地権者らが、依然として土地売却を拒否しています。また、今年4月9日には、同事業に反対する地元住民らからJBICに対し、「同石炭火力発電所の建設を決して受け入れない」ことを表明し、「JBICが同事業に融資しないよう」要請するレターも提出されていました。
しかし、4月上旬、住民に一切説明もないまま、建設予定地での重機による掘削等が始まったとのことです。地権者本人が未売却/収用の自分の農地に入ろうとしても、現場を警備しているインドネシア国軍に遮られたケースも報告されています。また、同地域でコメの年間3期作を可能にしてきた灌漑用水路が、盛土により水の流れを遮断されてしまったため、未売却/収用の農地も実質的に耕作が不可能になってしまうとのことです。
こうした事態を受け、4月23日、住民らの申立てを受けたインドネシア国家人権委員会は、地元の政府・軍関係者、国家電力会社(PLN)、ビマセナ・パワー・インドネシア(BPI)社に対し、緊急勧告を発しました(添付文書を参照)。同書では、人権に関する1999年法律第39号に基づき、地権者の権利・意思の尊重、灌漑用水・農地アクセスの確保、全国軍兵士の撤退等が勧告されています。
事業者、および、インドネシア政府は、土地収用法(2012年法律第2号)を適用し、同法の手続きに基づく土地の強制収用の意向を示していましたが、上記の国家人権委員会の勧告書からも、現在、現場で行なわれている工事が、地権者の同意もないまま、国軍の投入という抑圧的な手段で進められていることは明らかです。
従って、私たちは、日本政府、および、JBICに以下の点を強く要請します。
i.) 住民の合意のないまま、インドネシア国軍等が関与して抑圧的に行なわれている現在の強行工事に関し、事業関係者、および、インドネシア政府に対する抗議の意を早急に申し入れること。また、早急に一切の工事作業を停止するよう申し入れること。
ii. )本件の詳細に関し、事業関係者、および、インドネシア政府の関連当局に対する事実確認を早急に行なうこと。
iii. )今回の工事作業により、未売却/収用の農地に生じた損害、また、農民の生計手段への影響について、適切な回復・補償措置(農地・灌漑用水へのアクセスの自由を含む)が講じられるよう、事業関係者、および、インドネシア政府に対し、早急に申し入れること。
日本政府はこれまで、同事業について、「インドネシア側の要請」があるとの見解を示してきました(※2)。 しかし、国軍を投入するほど、抑圧的な手段を用いなくては進められない事業に、『環境社会配慮確認のためのJBICガイドライン』(以下、ガイドライン)でも求められている地域住民の「社会的合意」が得られているとは到底思えません。また、土地収用等の過程で「対象者との合意」がなく、「コミュニティーの適切な参加」も確保されていないなど、同事業は、ガイドラインの多くの規定に違反しています(※3)。
日本政府、および、JBICは地元住民の懸念の声に真摯に耳を傾け、本件のような甚だしい人権侵害を引き起こしている事業に対し、毅然とした態度で臨んでいただけますよう、よろしくお願い致します。
以上
国際環境NGO FoE Japan
インドネシア民主化支援ネットワーク(NINDJA)
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
気候ネットワーク
添付文書:インドネシア国家人権委員会による「バタン火力発電所建設予定地における土地所有者の権利の尊重・保護要請」(和訳)
(2015年4月23日付、原文はインドネシア語)
【連絡先】 国際環境NGO FoE Japan(担当:波多江秀枝)
Cc: 伊藤忠商事株式会社 代表取締役社長 岡藤 正広 様
電源開発株式会社(J-POWER) 取締役会長 前田 泰生 様
電源開発株式会社(J-POWER) 取締役社長 北村 雅良 様
株式会社三井住友銀行 取締役会長 北山 禎介様
株式会社みずほ銀行 取締役頭取 林 信秀様
株式会社三菱東京UFJ銀行 頭取 平野 信行 様
(※1) https://www.youtube.com/watch?v=YwbMlvU1HqA&feature=youtu.be
(※2) 2015年 4月 8日、衆議院 外務委員会における財省の答弁等
(※3) たとえば、同事業に関し、2014年2月3日付で27ヶ国90市民団体が JBICに提出したレターのなかでは、インドネシア国内法の違反があり、JBICガイドラン に違反している点が指摘されている 。また、ガイドランの「非自発的住 民移転」の項目違反についても、財務省 NGO定期協議の場で論されている。