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インドネシア・バタン石炭火力発電事業
【共同声明】伊藤忠の石炭火力方針に対するNGO共同声明
~パリ協定と整合する方針の策定及び実施を~
2019年2月20日
国際環境NGO FoE Japan
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
350.org Japan
気候ネットワーク
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
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気候ネットワーク
伊藤忠商事株式会社(以下、伊藤忠)は2019年2月14日に「石炭火力発電事業及び一般炭炭鉱事業への取組方針について」(※1)を発表しました。
今回の発表は、2018年5月にサステナビリティ上の重要課題(マテリアリティ)の策定(※2)を公表したことに続くもので、方針では、「当社の事業や当社を取り巻くステークホルダーへの影響が大きく、早急に取組むべき課題である石炭関連ビジネスについて、『新規の石炭火力発電事業の開発および一般炭炭鉱事業の獲得は行わない』ことを、取組方針といたします」と記しています。石炭火力及び一般炭炭鉱事業の開発をやめるとする今回の方針は、脱炭素化への時代の潮流に沿うものであり、伊藤忠がその方向に一歩踏み出したことを歓迎します。しかし、石炭火力発電事業についての詳細な言及はされておらず、開発中の事業は継続するとの報道もあります。
現在、伊藤忠が出資するインドネシアの中ジャワ州バタン県で建設が進む大型石炭火力発電事業(100万kW✕2基)では、農業や漁業など生計手段への影響や健康被害などを懸念する住民が、建設開始以前から反対運動を続けてきました。また、そうした環境社会面について懸念の声をあげる住民が深刻な人権侵害に直面してきたことから、同事業に対する批判の声が国内外であげられてきました。伊藤忠は現地法人「ビマセナ・パワー・インドネシア社(BPI)」に出資することで、住民のこれまでの生活に支障を及ぼしているだけでなく、建設後25年間にわたる電力購入契約(PPA)を締結することで同国からの将来的な温室効果ガスの排出も固定化してしまいます。
また、2017年7月の発表によれば、同じくインドネシアの南カリマンタン州における石炭火力発電所建設計画(10万kW✕2基) についても、伊藤忠はインドネシア国有電力会社(PLN社)とEPC契約を締結し(※3)、2020年の運転開始を目指して工事を進めているとのことです。このように石炭火力発電所の建設を続けることは、インドネシアが取り組むべき温暖化対策へのマイナス要因となります。
伊藤忠は、日本国内においても石炭火力発電所の建設・運営に関わっており、伊藤忠エネクス株式会社(特定規模電気事業者)が、仙台パワーステーション(仙台市)と防府エネルギーサービス(防府市)にて発電事業を行っています。仙台では建設時より周辺住民による反対運動が起こっており、現在は訴訟に発展しています。これらの発電所についても、運転中止計画の策定・実行、脱石炭方針のさらなる強化、そして速やかな実行に取り組むことを求めます。
石炭火力発電所の新規建設は、パリ協定との整合性が確保できないことが国連機関や国際エネルギー機関(IEA)等から指摘されており、2018年10月に発表されたIPCCの1.5℃特別報告書では、さらに迅速な脱炭素化が急務であると指摘されています。このことから、現在開発中のものを「新規」とみなさずに開発を続けるのであれば、今回の方針は現実の問題に向き合うものではなく、気候変動対策として全く不十分です。伊藤忠は、今回の新方針のなかで、国内外を問わず、現時点で稼働していないバタン石炭火力発電事業など開発中のものも撤退の対象に含め、事業の中止を決定するべきです。
私たちは、伊藤忠がパリ協定との整合性に鑑みて、全ての炭鉱事業から早期撤退するとともに、現在計画中および建設中の石炭火力発電事業も開発・建設を早急に中止することを求めます。
本件に対する問い合わせ
国際環境NGO FoE Japan 波多江 秀枝(hatae@foejapan.org)
「環境・持続社会」研究センター(JACSES) 田辺有輝 (tanabe@jacses.org)
気候ネットワーク 平田仁子(khirata@kikonet.org)
[脚注]
※1 2019年2月14日 伊藤忠「石炭火力発電事業及び一般炭炭鉱事業への取組方針について」( リンク )
※2 2018年5月2日 伊藤忠「サステナビリティ上の重要課題特定について」( リンク )
※3 2017年7月31日 伊藤忠「インドネシア石炭火力発電所建設プロジェクト契約締結について」( リンク )