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インドネシア・バタン石炭火力発電事業
「国際協力銀行(JBIC)審査役の報告書は誤解だらけ」
住民が怒りと失望を表明
住民の強い反対により4年近く着工が遅れた「インドネシア・中ジャワ州バタン石炭火力発電事業」(※)(J-Power、伊藤忠が出資)。建設工事が進められるなか、昨年12月、住民が工事の即時中止と農地・漁場の回復を求めて、約21億ドルもの巨額融資を決定した国際協力銀行(JBIC。日本政府100%出資)に対し異議申立てを行なっていた件で、JBIC審査役が実施した調査の報告書がJBICホームページで公開されています。
>中部ジャワ州セントラルジャワ石炭火力発電所プロジェクト 調査結果等報告書(PDF: 189KB) 2017年6月19日付。公開日は8月21日)
一方、住民は、同報告書の内容が「誤解や間違った認識」だらけであるとして怒りと失望を表明するとともに、同報告書をこのまま公開しないよう求めるレターを提出しました(8月17日付。提出は8月24日)。また、同レターでは、土地収用法の下で農地を強制収用された地権者らが、生活苦に直面していることに対する責任を問うています。
(写真)12月に異議申立書を提出した住民ら(JBICジャカルタ事務所前)と日本大使館前での抗議アクション
JBIC審査役の報告書では、「申立人を含む一部住民らと事業実施主体・政府機関の間で土地所有権や漁場環境に関して社会的合意が完全に得られているとはいえない」としつつも、「JBIC のガイドライン不遵守は認められなかった。また、事業実施主体・政府機関は、土地所有者に対する適正な価格での土地買収に加えて、小作農等に対する代替農地の無償提供や就業・自立支援やCSR 等のプログラムを高いレベルで実施し、被影響地域の大多数の住民が裨益している」と結論づけています。
JBICの融資決定後、事業予定地では工事作業が着々と進められ、少なくとも46名の地権者が売却を拒否してきた農地も、今では跡形もなくなってしまいました。漁民も、埠頭建設のための海域での浚渫とその浚渫土の海洋投棄による漁場への影響、また、浚渫土を運ぶ大型船による漁船との追突事故など、すでに実害を肌で感じてきています。
日本政府・JBICは、住民に対してすでに起きている深刻な実害について問題解決を図るとともに、従来国内外からも指摘され、JBIC審査役も認めたとおり、地元住民の「社会的合意」を完全に得られているとは言えない同事業への支援と関わり方を再度見直すべきです。
以下、JBICに異議申立てを行なった住民が、JBIC審査役に提出したレターの和訳です。
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2017年8月17日
国際協力銀行
環境ガイドライン担当審査役
小林 寛 様
島田 幸司 様
インドネシア中ジャワ州バタン石炭火力発電事業に関する
JBIC審査役の報告書に対する意見
私たち、バタンのコミュニティーであるPaguyuban UKPWR(UKPWR協会)は、バタン石炭火力発電事業に関して私たちが行なった異議申立てについて、JBIC環境ガイドライン担当審査役が調査報告書と別表を作成したことを知りました。以下、同報告書等に関する私たちの全般的な意見・見解をお伝えします。
残念なことに、私たちは同報告書等に対し、ある種の憤慨の意さえ伴う、深い失望をお伝えしなくてはなりません。なぜなら、私たちが異議申立書で指摘した問題点や事実に関する調査結果のほとんどが正しくないとわかったからです。同報告書等は、私たちが認めることのできない誤解や間違った認識を過度に多く含んでいるため、公表されるべきではなく、私たちは同報告書等の公開に強い異議を唱えます。
私たちは、違反の確たる証拠を提供したかったので、審査役に(事業地内に位置する未収用の農地について)現場訪問を行なうよう要求しましたが、実現しませんでした。私たちが優先してほしいのは、依然収奪されたままの土地から生じている損失を考慮し、あなた方の責任を果たしてもらうことです。この手続きが単なる形式的な文書で終わることがないよう期待します。私たちは、生計手段の喪失に直面しており、今日まで代替の生計手段は用意されていない状況です。
私たちは、以下に列挙するものに限られるものではありませんが、同報告書等において間違った認識がなされている点について幾つか強調しておきます。まず、別表において、近隣のクンチョノレジョ村でロバン村向けのブリーフィングの場が持たれたことに言及がなされていますが、私たち東ロバン村の漁民はそうした事実を一度も聞いたことがありません。第二に、土地収用価格の単価は、あなた方が報告書で結論づけている内容とは異なり、一律ではありませんでした。もし、あなた方が地権者に対する意見聴取をもっと行なっていれば、真実を知ることができたでしょう。第三に、確かに建設作業に従事した漁民もいますが、私たち東ロバン村の漁民は、これまでに一度も補償金やCSRプログラムを受け取っておらず、また、今後も受け取りません。この点については、地元の漁民のうち、一体、何人が、また、誰が同事業からの恩恵を受けたのか、審査役に対して質問させていただきたいです。最後に、同報告書は、複数の(でっちあげの)刑事訴訟について私たちが指摘した事項について、徹底した確認をすることもなく、認めていません。
以上で述べたとおり、間違った認識で満ちている同報告書は、このままの状態で公開されるべきではありません。大事なことを一つ言い残していましたが、私たちはバタン石炭火力発電事業に強く、また、継続的に反対していることを繰り返し述べさせていただきます。なぜなら、同事業はすでに私たち農民、および、漁民の生計手段に深刻な影響を及ぼしており、また、土地収用や環境影響評価のプロセスにおいて、深刻な人権侵害を引き起こしてきました。さらに、長期的には、さらに環境破壊を伴い、子どもを含む私たちの健康に甚大な影響をもたらします。
ご配慮いただき、ありがとうございます。
Paguyuban UKPWRの18名の申立人、および、他のメンバーを代表し、私たちはここに署名します。
(5名のリーダーによる署名)
(※)インドネシア・中ジャワ州バタン石炭火力発電事業
電源開発(J-POWER)と伊藤忠が参画を決定。総額約45億米ドルかかると見込まれている資金のうち約34億ドルを国際協力銀行(JBIC)・民間銀行団が融資(うちJBICは約60% にあたる約 21億ドル)。建設されると東南アジア最大級の石炭火力発電所(1,000MW×2基)となる。
詳細はこちら → https://foejapan.org/aid/jbic02/batang/index.html
●関連WEBサイト
「JBICの石炭発電融資にNo!」プログラムについて → https://sekitan.jp/jbic/
「環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドラインに基づく異議申立手続要綱等」について → https://www.jbic.go.jp/ja/efforts/environment/disagree