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インドネシア・バタン石炭火力発電事業
住民が事業予定地近くで抗議アクション
日本・JBICは5度目の融資調達期限延長ではなく、融資拒否を
4月6日、日本が官民をあげて建設しようとしているインドネシア・バタン石炭火力発電事業(2,000MW。総工費45億ドル。伊藤忠商事・J-Power出資)は、5回目の融資調達期限を迎えました。同事業に対しては、国際協力銀行(JBIC。日本政府100%出資)が約21億ドルという巨額の融資を検討してきましたが、4月5日付のロイター紙(英字)の報道等によれば、使用通貨や土地収用問題のため、同期限は約2ヶ月ほど延長される予定とのことです。
同事業は肥沃な農地や豊かな漁場など、生計手段の喪失を懸念する住民、また、土地売却を拒んでいる地権者らの根強い反対により、4年以上、本格着工が遅れてきました。
5回目の融資調達期限の前日4月5日も、事業者がフェンスで外周を囲んでしまった事業予定地すぐ傍の水田で、地元住民らによる抗議活動が行なわれました。抗議中は遠巻きながらも、警察、事業者の警備要員、チンピラなどの監視が続きましたが、反対派住民、学生、また、現地NGOから総勢500名以上が参加しました。ウジュンネゴロ村、カランゲネン村、ポノワレン村、ウォノクルソ村、ロバン村の5村の住民らは、特に、事業予定地の周りに張り巡らされたフェンスによって、農地へのアクセスが絶たれたことへの怒りを顕わにしました。
住民らによるバタン石炭火力発電事業に対する抗議活動。フェンス奥が事業予定地。上空からの写真では、田植えを終えた水田(未売却地)がフェンスにより分断され、農作業を続けるつもりだった農民が突然、事業予定地側の農地に入ること、また、利用することもできなくなった状況がわかる(グリーンピース・インドネシア提供)
事業者は2週間前、未売却の農地(事業予定地226ヘクタール中約10%)へのアクセスをフェンスで完全に封鎖してしまいました。フェンス内に立ち入れば、刑法により9カ月の禁固刑に処せられる可能性もあります。しかし、農民にとっては、農地が唯一の生計手段であり、農地のアクセスが絶たれることは、生計手段の喪失を意味します。
同事業はこれまでにも、地元の軍・警察による反対派住民への脅迫・暴力・不当逮捕等が起こるなど、深刻な人権侵害が続いており、昨年12月には、インドネシア国家人権委員会からも日本政府に対し、慎重な融資検討を求める書簡が出されています。
日本政府・JBICは、2013年から同事業への融資検討を続けていますが、同事業は『環境社会配慮確認のためのJBICガイドライン』(JBICガイドライン)に規定されている「社会的合意」を確保できていません。また、4月1日には、42ヵ国230市民団体が署名した国際要請書もJBICに提出され、人権侵害の状況が一向に改善されない同事業に対し、日本の巨額の公的融資が使われることに対して警告が発せられました。JBICは、JBICガイドラインに則り、同事業への融資を拒否することが求められています。
>バタン石炭火力発電事業の詳細については、こちら