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報告書発表:日本は気候危機を最も助長 G20諸国の輸出信用機関の中で石炭など化石燃料への投融資が最大 -米NGOの報告書で明らかに
米環境NGOであるOil Change International(オイル・チェンジ・インターナショナル)とFriends of the Earth U.S.(FoE アメリカ)は、輸出信用機関という透明性の決して高くない公的金融機関が、石油・ガス・石炭産業に年間310億米ドル以上を投じていること、またその中でも国際協力銀行(JBIC)と日本貿易保険(NEXI)という2つ輸出信用機関を持つ日本は、石炭・石油・ガスに対して輸出信用支援等を行っている政府機関の国別の比較で最上位であることを明らかにした報告書を発表いたしました。
JBICとNEXIが化石燃料に投じた額は、年平均で約78億米ドル(約8,000~8,500億円)に上り、石炭融資に対する国際的な規制が強まる中、日本の石炭支援額はいまだに増加しています。特に2016~2018年の日本の石炭支援額は中国を抜いて一位になっています。
詳しくはプレスリリース、報告書をご覧ください。
>プレスリリース(PDF版)
>報告書(英語)
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G20諸国の輸出信用機関の中で石炭など化石燃料への投融資が最大
ワシントン D.C. 発 –
輸出信用機関という透明性の決して高くない公的金融機関が、石油・ガス・石炭産業に年間310億米ドル(うち日本は78億米ドル[約8,000~8,500億円])以上を投じていることが、オイル・チェンジ・インターナショナルおよびFriends of the Earthアメリカ(FoE US)が行った最新の分析で明らかになりました。化石燃料に対するこうした支援は、気候変動への悪影響を助長し、これまで以上に深刻な干ばつ、破壊的な山火事、長い熱波を引き起こします。
最新の報告書によると、国際協力銀行(JBIC)と日本貿易保険(NEXI)という2つ輸出信用機関を持つ日本は、石炭・石油・ガスに対して輸出信用支援等を行っている政府機関の国別の比較で最上位となっています。JBICとNEXIが化石燃料に投じた額は、年平均で約78億米ドルに上りました。
また、石炭融資に対する国際的な規制が強まる中、日本の石炭支援額は増加しており、2013年から2015年までの年平均が17億米ドルであったのに対し、2016年から2018年までの年平均は32億米ドルになりました。一方、同期間の日本のクリーンエネルギーに対する年平均支援額は減少しています。他国の輸出信用機関が石炭への支援を規制する一方で、JBICとNEXIは方針を変えず、ベトナムのギソン2やバンフォン1石炭火力発電所、インドネシアのチレボン2やタンジュン・ジャティB石炭火力発電所5・6号機、バタン石炭火力発電所などの事業に投資しています。
「気候危機がもたらす干ばつや山火事を阻止しようと世界各国が奔走していますが、日本の輸出信用機関は毎年、化石燃料事業に数十億ドルを注いでいます」とFoE Japanの深草亜悠美は言います。「日本は気候危機を最も助長しており、地元の強い反対を無視して、世界で最も汚いエネルギー事業を支えているのです。最近では、他国の民間銀行がベトナムのブンアン2石炭火力発電所事業からの撤退を決めました。JBICやNEXI、日本の民間銀行も同事業への支援を断るべきです。」
「日本はこの夏のオリンピック開催に向けて準備を進めていますが、気候危機への対策を今からでも講じるよう求める国際的な圧力が強まっています」とオイル・チェンジ・インターナショナルのスーザン・ウォンは述べています。「日本は東京オリンピックを『持続可能』であると宣伝していますが、JBICとNEXIは汚れた時代遅れの石炭技術を推進しています。石炭技術が気候危機に拍車をかけ、熱波はより長期かつ高温となり、コアラを死に追いやる激しい山火事を招いているというのに。」
石炭を含む化石燃料産業に対するこうした政府の補助金は、気候変動に関するパリ協定だけでなく、気候危機の緊急性が高まっていること、また大胆な気候変動対策に対する市民の支持が広がっていることを完全に無視したものです。
報告書では、オイル・チェンジ・インターナショナルの「Shift the Subsidies」データベースのデータを利用して、G20諸国の輸出信用機関からの支援を分析しています。対象としたのは、自国の商品やサービスの国外市場への輸出支援を目的とした貸付金や保証、保険を提供し、政府が後ろ盾となっている金融機関です。
「火に油を注ぐ輸出信用機関の化石燃料支援(原題:Adding Fuel to the Fire: Export Credit Agencies and Fossil Fuel Finance)」と題した報告書は、こちら (英語)でご覧いただけます。
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注:
● 輸出信用機関の化石燃料支援は、ますます厳しい監視下にあります。2020年1月20日、英国のボリス・ジョンソン首相が発表したところによると、英国は国外の石炭鉱業および石炭火力発電所に対する直接的な支援を今後一切行わない一方で、石油・ガス関連の活動への支援は継続すると表明しました。英国輸出信用保証局(UKEF)は2002年以降、石炭火力発電所への資金供与を行っていません。しかし、(首相の発表と)同じ週に出された(英団体による)新しい分析では、UKEFが石油・ガス支援を継続しており、何百万トンもの温室効果ガスを排出する国外事業に対して支援を行っていることが示されています。
● ダボスで1月に開催された世界経済フォーラムでは、グレタ・トゥンベリ、ヴァネッサ・ナカテなど世界中から集まった十数人の若手活動家が、政府や金融機関、企業に対し、「化石燃料の探査と採掘への投資をすべて取り止め、化石燃料に関するあらゆる補助金を即刻中止し、直ちに化石燃料への投融資から完全撤退する」よう呼びかけました。
● G20輸出信用機関の多くは、OECD公的輸出信用アレンジメントに参加しています。このアレンジメントでは、2015年に石炭に対する輸出信用に制限を設ける石炭火力発電セクター了解が新しく承認されました。しかし、同方針は抜け穴だらけで、アレンジメントの当事者、特に日本の輸出信用機関など一部の機関は、巨額の石炭融資を続けています。さらに、このアレンジメントでは、輸出信用機関が再生可能エネルギーに対する支援より桁違いに大きい額を投じている石油・ガスの支援には触れていません。