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気候変動対策支援
国連気候変動カンクン会合(COP16)報告
~途上国支援に関連する特別作業部会の主要論点~
メキシコ、カンクン
11月29日~12月10日までメキシコ・カンクンでCOP16、CMP6が開催されています。
>COP16レポート特設ページはこちら
ここで議論されている途上国の気候変動対策支援について、特別作業部会(AWG-LCA=気候変動枠組条約の下での長期的協力の行動のための特別作業部会)の主要論点を報告します。
【資金】
途上国の気候変動対策を促進するための気候変動資金では、1) 資金規模、2) 資金源、3) ガバナンス、制度が議論されています。
1) 資金規模
昨年のコペンハーゲン会合で、先進国は2010~2013年までの短期資金に300億ドル、2020年までの長期資金に毎年1000億ドルを支援することを提案しました。一方、途上国は特に長期資金に関しては先進国に対し、ボランティアベースではなく、毎年GDPの1.5%を拠出するように求めています。
⇒FoEは、先進国が気候債務を返済するため、気候変動影響を受ける地域のニーズに沿う十分な資金を拠出するよう求めます。 |
2) 資金源
資金源に関しては、「新規で追加的かつ予測可能」なものであるべきであると、バリ行動計画に記載されています。しかしながら、現状の短期資金では、日本の「鳩山イニシアティブ」のように、既存のODAやすでに約束されていた資金(クールアースパートナーシップ)も含まれていたり、不安定な民間投資や炭素市場に依存していたりと、新規で追加的かつ予測可能という要件を満たすことができていません。
⇒FoEは、新規で追加的かつ予測可能な公的資金であることを求めます。 |
3) ガバナンス、制度
気候変動資金を管理するための新しい基金の創設に向けて、気候変動枠組み条約の下で設置する案と、既存の機関を活用する案が出ています。
途上国は既存の国際金融機関への不信感から、条約の下に置くことを求めています。一方で、先進国はこれまでも、政治・経済的な関係を優先し、独自のルールを設定できる二国間援助や世界銀行や地域開発銀行のスキームを活用するべきだと主張してきました。
この場合、資金が新規で追加的なものなのか、何に使われたのか、セーフガードが確保されたのか等の評価が困難になります。さらに、大規模なオフセット目的の国や事業に支援が集中し、本当に資金を必要としている気候変動に脆弱な地域等に公平に分配されないことが懸念されます。
特に、現在日本政府が進める「二国間クレジット」制度では、国連に認証されない炭素クレジットを大量に発行し、日本の2020年までの排出削減に利用され、炭素市場も混乱させる可能性があります。さらに、現在、国連交渉でも認められていない原子力やCCS等も対象事業に含まれており、このようなスキームが容認されてしまうと、各国に都合の良い様々なルールが設定され、排出削減が進まず、また環境破壊や住民の権利の侵害等多くの問題が生じることが懸念されます。
⇒FoEは、条約の下に、環境社会配慮が確保され、途上国からのダイレクトアクセスが可能となる新規の資金メカニズムを設置することを求めます。 |
【適応】
途上国が最も関心を寄せる議論の一つが適応です。途上国の社会経済に大きな打撃を与え続ける気候変動影響への適応対策を進めるには、先進国からの十分な補償と能力向上、体制強化が必要です。しかしながら、現在までの気候変動資金のほとんどは緩和に充てられています。途上国からは、気候資金の緩和と適応への均等な分配が求められています。
今回の会合では、技術的なサポートや情報共有、協力の促進するための適応委員会の設置については議論が前進していますが、まだまだ課題は残ります。資金との関連づけや、損失および損害の対処のためのメカニズムの早急な設置が求められていますが、一部の先進国が反対をしているようです。
途上国支援に関連する議論では、根本的に先進国と途上国の捉え方のずれがあります。先進国は「援助」であると考えるので、しばしば緩和交渉との道具として使おうとします。しかし一方で、途上国は気候変動問題を引き起こした先進国の責任に対する補償(気候債務の返済)であると考えます。先進国は気候変動資金を活用した気候変動対策の主体となる途上国の主張を理解し、歩み寄る努力が必要です。
お問い合わせ:
開発金融と環境プログラム 担当:柳井 真結子
携帯(メキシコ): 9981080357 TEL: +81-3-6907-7217/ FAX: +81-6907-7219
E-mail: yanai@foejapan.org HP: https://www.foejapan.org