大規模農業プロジェクトによる先住民族の権利侵害と環境破壊に国連が懸念を示す(インドネシア)

国連の特別報告者が、インドネシアの最東端にある南パプア州メラウケ県の”Indonesia’s Food Estate Project”と呼ばれる大規模農業地域プロジェクトにより、プロジェクトの対象地に住む先住民族コミュニティを強制退去させ、合意なく森林を伐採し、反対する人たちを軍隊を用いて弾圧することで5万もの人々に脅威を与えていることに対して、懸念を表明した。

このプロジェクトでは、インドネシアの食糧生産の向上による食糧安全保障の確保を目的としているが、特別報告者は10.9万ヘクタール以上の泥炭地やサバンナを含めた森林破壊や生物多様性の喪失、FPIC原則(注)を含めた先住民族が持つ権利の侵害、軍事力を行使した脅迫があると指摘している。

人権侵害および環境破壊の報告が増加する中、特別報告者は書簡で詳述されたすべての申し立てに対し、インドネシア政府と政府軍へ詳細な回答を求めるとともに、このプロジェクトの十分な評価とリスクの防止、緩和、救済策が実施されるまで、関連するすべての活動の一時停止を検討したか否かを政府に尋ねた。

その回答において、インドネシア政府は国の法令順守を理由に申し立てを拒否するとともに、国の食糧安全保障を向上させるプロジェクトであると強調したうえで、先住民族の権利と環境保護に配慮していると主張している。

この問題を取り扱うNGOは国連によるモニタリングの強化、調査団の派遣、FPIC原則の遵守を強く求め、このプロジェクトがパプアの先住民族の文化を消滅させるだけでなく、政府や企業による土地奪取を助長する可能性があるとして警鐘を鳴らした。

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(中根杏)

注)FPIC原則:自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意
ある事業が先住民族などの土地、領域、資源などに影響を及ぼす恐れがある場合に、その事業に対して先住民族などが同意するか否か判断する権利/原則とされる
引用元:https://www.gef.or.jp/wp-content/uploads/2023/04/Final_FPIC-Guideline_Guidance_jp201503.pdf

 

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