インターン報告:国際シンポジウム「気候危機とたたかうアジアの人々」第2部
FoE Japan インターン生の藤原瑞貴です。
第2部は、『脱炭素政策の裏側で~各地で進む、誤った気候変動対策』というテーマで「アジアにおける化石燃料の拡大」「プラスチック問題と気候危機の関係」「日本が推進するGX戦略の課題」そして「炭素市場の問題点」が論じられました。この部では特に、日本を含む先進国がいかに間違った気候変動対策をしているかや、それが発展途上国にどれほどの被害や問題を背負わせてしまっているのかについてが国際的な枠組みの点から説明されていました。プレゼンテーションの主な内容は以下の通りです。
アジアにおける化石燃料の拡大(FoEバングラデシュ Bareesh Chowdhury氏より)資料(日本語)
2021年に日本、韓国に引き続き中国も海外での石炭火力事業への投資中止を発表した一方、中国とインドが今でも一番多くの新規の石炭火力発電建設を推し進めています。「クリーンな代替燃料」として、LNG(液化天然ガス)の拡大が南アジアでも広まっているのが現状です。LNGや石炭は、脱炭素への移行のための燃料だと主張されていますが、本当にそうなのでしょうか?
プラスチック問題と気候危機の関係(FoEスリランカ Chalani Rubesinghe氏とFoE韓国のHyein Yu氏より) 資料(日本語)
石油の消費のうち4~8%、温室効果ガス排出の3.4%を占めるプラスチック。人間だけでなく自然界にも100年から1000年にわたって被害を及ぼしかねません。プラスチック汚染に関する政府間交渉委員会 (INC)でのGlobal Plastic Treatyも紹介され、次の5回目に向けての目標も聞くことができました。
日本が推進するGX戦略の課題(FoE Japan 深草亜悠美氏より) 資料(日本語)
温室効果ガスの歴代排出量が6位である日本は、脱炭素の先陣を切る必要があります。しかしそれとは裏腹に、排出削減と経済成長の両立を目指すGX戦略には「グリーン」の定義がありません。化石燃料との混焼で使われる水素やアンモニウムを「脱炭素燃料」と位置づけ、化石燃料の延命を目指しているのが現状です。また、温室効果ガスの排出削減は原子力や二国間クレジットの制度に頼っていることも問題だと議論されていました。真のグリーントランスフォーメーションのために、「フェアシェア(気候変動への歴史的責任に見合った量の取り組みを行うこと)」が必要とされているのです。
炭素市場の問題点(FoEマレーシア Shamila Ariffin氏より) 資料(日本語)
マレーシアの先住民族の慣習地を例に、炭素市場とカーボン・オフセットというコンセプトの問題点を辿りました。カーボン権の取引を許可するこの市場では、温室効果ガスをたくさん排出する先進国とあまりしない途上国の間で問題が生じています。実際今回取り上げられたマレーシアの慣習地では、先住民族の伝統的な地権がないがしろにされ単一農業などに使われる自体が発生しています。炭素市場という考え方は、地元住民や地元住民の土地に対する権利を考慮していかなければならないという訴えが述べられていました。
感想
一番自分にとってショッキングだったのは、3つ目の「日本が推進するGX戦略の課題」でした。みなさんは、GX(グリーントランスフォーメーション)についてどれくらいご存じでしょうか?私は今回このお話を聞くまで、てっきり再生可能エネルギーへの移行の話だと思っていました。しかし、上記のようにここでの「グリーン」に定義がないというのです!結局は目先の対処法や数値の減少に飛びついて経済成長を優先してしまっているこの社会を変える必要があります。
共にインターンをしている宮脇直樹さんは、下記のように感想を共有してくれました。
自国の発展のための利益追求と環境保護はあたかも両立が可能であるように見せている事に、彼らの余裕を感じてしまい、あまり賛成できる政策ではないと感じた。個人的には、現状維持で豊かな生活をする事と、今起こっている気候変動を止める事は不可能に近いのでは?と思ってしまった。
私も現在就職活動をしている身として、間違った対策の一部に大企業のアピールしている事業と遠くないこともあったように感じました。一消費者としてすべきことと、それだけではだめで社会構造の変化も必要だというバランスに難しさともどかしさを覚えた日でした。
「プラスチック問題と気候危機の関係」も大変勉強になりました。気候変動に取り組む団体にとってプラスチック問題は重要なものである一方、FoE Japan含め多くの団体であまり取り上げられていないのではないでしょうか?もちろんそれがよくないという話ではなく、いろいろな社会問題はつながっているので、このような団体に関わる者としてこのような機会を使って自分で理解を深めていく必要性を実感しました。改めてプラスチックの話を聞けたことはとても有意義で、プラスチックに関してどのような国際的取り組みが進められているのか、消費者の任務は何かを考えるきっかけとなりました。
すべてを話すことはできないのですが、「アジアにおける化石燃料の拡大」も「炭素市場の問題点」もどちらもアジア全体の中でのお話で、今回のシンポジウムならではだなと思いました。
第2部のまとめはこのような感じになります!
参加した方はぜひ学びを振り返って、参加できなかった方はアーカイブ動画を見てみてください!
インターン報告:国際シンポジウム「気候危機とたたかうアジアの人々」第3部 へ続く
インターン報告:国際シンポジウム「気候危機とたたかうアジアの人々」第1部
【国際シンポジウム】気候危機とたたかうアジアの人々〜「公正な移行」の実現にむけた日本の役割〜
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