ナイジェリアの農民ら、シェルに対する訴訟で勝訴 - 多国籍企業に対する画期的な判決
2021年1月29日、ナイジェリアの農民らがFoEオランダ(Milieudefensie)とともにオランダ・ハーグの裁判所で提起していたシェルに対する訴訟で、農民側とFoEの訴えが認められ勝訴しました。
ニジェールデルタの三箇所で発生していた石油汚染については、シェル・ナイジェリアの責任が認められ、同時に親会社であるロイヤル・ダッチ・シェルの注意義務(Duty of care)違反が認められました。また判決では、石油汚染によって生じた損害について4人の原告のうち3名の原告及び影響を受けた村人に対し補償を行うこと、シェルに対してナイジェリアのオイルパイプラインに石油漏れを検出するシステムをもうけることを命じました。今回の判決は、オランダの多国籍企業の海外での活動における注意義務違反を認めた、初めての判決です。
この数十年、ニジェールデルタでは大規模な石油汚染による被害で数百万人もの人が苦しんできました。毎年汚染により16,000の乳児が死亡しており、デルタエリアの人々はそれ以外のナイジェリアの地域と比べ、10年も寿命が短くなっています。FoEオランダの訴訟は、シェルの石油流出の影響を受ける3つの村での被害を中心に提起されました。流出した石油は、今でも十分に回収されてはおらず、新たな石油流出が定期的に発生している状況です。
原告の一人で、ゴイ村の農民のエリック・ドー(Eric Dooh)は、「ついに、シェルの石油流出で苦しむ人々にいくらかの正義がもたらされました。しかしこれはほろ苦い勝利でもあります。原告に参加していた私の父を含む二名は、生きてこの訴訟の結果を見ることが叶いませんでした。しかし、この結果はニジェールデルタの将来に希望をもたらしました。」
農民とNGO側の弁護士を務めたチャンナ・サムカルデン(Channa Samkalden)は「数年にも及ぶ訴訟の結果、ついに正義がもたらされましたが、Ikot Ada Udo(注:原告の中の一名)の訴訟はまだ続いています。シェルの石油流出への責任だけでなく、原告側が持つ権利が認められました。この訴訟は、ヨーロッパの企業が海外でも責任を持って振舞うべきであることを示しました。」
FoEオランダの事務局長であるドナルド・ポールズ(Donald Pols)は「これは影響を受ける農民にとって素晴らしいニュースです。シェルが損害を補償しなければならないことは非常に大きなことです。これは、世界各地で不正に関与しているすべてのオランダの多国籍企業に対する警告でもあります。環境汚染、土地の奪取、搾取の犠牲者が、企業との法廷闘争で勝つ可能性が高まりました。発展途上国の人々が、多国籍企業を前に権利を失っている状況ではもうないのです。」とコメントしました。
多国籍企業への規制が必須
この訴訟はほぼ13年続き、多国籍企業の活動によって損害を受ける被害者が正義を得ることがいかに難しいかを示しています。FoEグループは、企業に対して海外事業で引き起こした損害への責任を負わせるための野心的なヨーロッパおよび国際的な法整備を求めています。すでに多くの市民が、拘束力のあるデューデリジェンス法を導入するよう欧州委員会に求めるオンラインアクションに参加しています。
企業に対し責任ある行動を求め活動しているFoEヨーロッパのジル・マカードル(Jill McArdle)は次のように述べています。「今日は、石油会社の汚染と人権侵害の犠牲者すべてにとって希望に満ちた日です。しかし、正義がなされるのに被害者が13年も待たされるべきではありません。欧州企業にサプライチェーンで起こったことに対して責任を負わせるために、今より良いEU法が必要です。何千人ものヨーロッパの市民がEUに対し、企業に説明責任を負わせる新しい法律の提案を要求しています。」
ナイジェリアでの日常的な油流出
何十年にもわたりかわされた約束や、プロジェクト、報告、訴訟にもかかわらず、ニジェールデルタはひどく汚染されたままです。油流出は今も毎日おきているのです。ナイジェリア政府やシェルが行うと約束した浄化作業も、10年間が約束と準備についやされたままで、まだ行われていません。シェルの従業員がサボタージュしているというFoEオランダとナイジェリアによる報告もあります。
プレスリリース原文はこちら:https://www.foei.org/press_releases/victory-oil-shell-nigeria