国交省の公平性に欠けたリニア準備工事提案 撤回を求めよう!

開発と人権2024.7.10

IMAG2555~3(写真:山梨実験線)

リニア静岡工区を巡り、大井川の減水を懸念する静岡県と準備工事の早期着工を求めるJR東海の話し合いが膠着状態の中、7月9日付けで国交省が双方に対して「提案」を発表しました。

以下国交省HPから:
「水資源・自然環境への影響の回避・軽減とリニア中央新幹線の早期実現を両立させることが重要であることについて、累次にわたり、静岡県、JR東海とも認識の共有を確認してきたところです。この共通認識の下、国土交通省より、静岡県及びJR東海に対し、大井川の水資源及び自然環境への影響が軽微であると認められる範囲内で、国の有識者会議の議論等と並行して、速やかに坑口の整備等を進めることを提案いたしました。」

国交省提案:https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001352937.pdf
報道発表資料:https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001352938.pdf

提案:

1.JR東海は、国の有識者会議における議論等、必要な検討・手続きが終わるまで、 トンネル掘削工事に着手しない。

2.静岡県は、坑口等整備の速やかな実施を容認するものとし、7月の早い時期を目途に、必要な手続きを進める。

3.JR東海は記2.の必要な手続きの終了後、坑口等整備を行うが、その際、国の有識者会議の今後の議論等の結果、坑口の位置、濁水処理施設等に変更が必要になった場合には、当該変更を行うことを前提とする

 

トンネル工事等の本体工事に関しては有識者会議の結論を待つとありますが、本体工事のための準備工事(宿舎建設やヤード建設等)を一刻も早く始めたいというJR東海の意向を十二分に汲んだ提案となっています。
本来、国は中立の立場であるべきですが、国交省自らが設置した有識者会議の結論すら出ていない段階にも関わらず、事業有りきの提案を行い、また、有識者会議の結論により計画変更もあるという先の読めない工事の早期着手を促す等、無責任極まりない提案です。

一方、このところの大雨により、リニア工事のための作業用道路等が土砂崩落の影響を受けており復旧の見通しもたたないとの報道もあります。
国交省にとっては流域住民、そして現場の作業員の安全よりも、2027年開業がそれほど重要なのでしょうか。

本日7月10日17:00~国交省が静岡県に提案の説明を行います。
YouTubeの静岡県チャンネル「shizuokapref」または、静岡県のホームページ「ふじのくにネットテレビ」により、リアルタイムで配信予定です。

国交省に公平性に欠けた無責任な提案の撤回を求める声を送りましょう!

FoE Japanの参加するリニア新幹線沿線住民ネットワークでは、国交省に提案撤回を求めるアクションを呼びかけています。
提案撤回を求める声は、以下のFAXやオンラインフォームにて送付することが出来ます。
また、下記に上記住民ネットワーク事務局の参考文例です。

送付先:
国土交通省あて FAX番号 03-5253-1634
静岡県知事室充て 〃   054-254-4032
※静岡県宛てにも激励や国交省に撤回を求める声を届けた旨を添えてコピーを送りましょう。

国交省の「国土交通ホットラインステーション」の「鉄道関係」の「1.新幹線」の意見募集のフォームから意見提出できます。
(※1000字以内)
https://www1.mlit.go.jp:8088/hotline/cgi-bin/u_hotline08011.cgi

リニア新幹線沿線住民ネットワーク参考文例〉—————————————————————
国土交通省鉄道局長殿
国交省は静岡県、JR東海に対する提案を撤回し、
静岡工区有識者会議の審議を冷静に見守るよう求めます

国土交通省は7月9日、リニア中央新幹線の静岡工区の準備工事を認める趣旨の提案を静岡県とJR東海に提示しました。
基本は明らかに、JR東海の早期着工意図を勘案したもので、トンネル本体工事と準備工事は一体なものとして工事着工を認めないとする静岡県の意志を覆そうとするものです。
国交省による静岡工区有識者会議の趣旨について、静岡県は国交省がJR東海に対し指導的な役割を果たすよう期待していると伝えられています。
静岡県知事は先月下旬のJR東海社長とのトップ会談で、準備工事は本体工事と同じものであり、6月中の着工を認めない姿勢を示しました。本来ならば少なくとも中立的な行司役を務めるべき国交省が、JR東海による早期着工をあと押しすることは、静岡県民の意志を曲げるものであり許せません。
静岡県知事が示している有職者会議の結論を待ち、静岡県の同意が得られれば協定を結び着工を図るべきだと考えます。準備工事を済ませればそれを既成事実として位置づけ、本体工事につなげるという進め方は、沿線各地でJR東海が実施しているやり方です。
静岡県内だけでなく沿線各地でリニア中央新幹線の工事が大幅に遅れています。残念ながら、東京都、神奈川県、山梨県、長野県、岐阜県、愛知県は知事がリニア中央新幹線期成同盟会の会長となり、工事や供用についての沿線住民の不安や疑問を取り上げることなくJR東海の事業推進を後押ししています。
静岡県知事はリニア中央新幹線の実現には反対ではないと明言していますが、それには大井川水系の水問題解決と南アルプスの自然環境の保全が必須条件となっていることと推察します。
このような状況にあっても、工事の手続き的な整理や区分が今先決だという国交省の考え方は、県民の命と貴重な自然を必死に守ろうとしている静岡県の姿勢を甘く見ているとしか言えません。
私たちは国土交通省の提案を撤回するよう強く求めます。

2020年7月10日
飯田リニアを考える会の参考文もこちらにあります。
http://www.nolineariida.sakura.ne.jp/2020-07/2020-0709.html

 

関連:7/11 19:00~【オンラインセミナーのご案内 ~ FoE現地報告会シリーズ4】リニアは止められる?~「大井川」をめぐる静岡県とJR東海の対立とは

 

関連するトピック

関連するプロジェクト