【COP25 Vol.7】 COP25閉幕―主要議題で合意に至らず。評価できる点も

気候変動2024.7.10

12月13日に交渉最終日を迎える予定だったCOP25。土曜深夜も交渉が続いた後、日曜昼過ぎに閉幕しました。気候変動がもはや目の前の危機として認識される中、先進国は気候危機の現実から目をそらし、国際市場メカニズムなど「誤った気候変動対策」を推進していることをFoEグループは批判してきました。

 会議終盤、主要議題であった国際市場メカニズムや目標引き上げは合意に至らず、これらの論点は来年の中間会合に持ち越されることになりました。しかし、既に発生・拡大している損失や被害に対応するため、途上国提案を基にした支援制度の強化が盛り込まれました。また、温室効果ガス排出の賠償責任を負わないとする文言を求めた米国の主張は途上国によって拒否されました。国際市場メカニズムに合意がなかったことは、むしろ多くの排出を許すルール決定に至らなかったという意味であり、今後も国際市場メカニズムをめぐる戦いは続くことになります。

FoEグループは、温室効果ガス削減に対する拘束力を持たないパリ協定では1.5℃目標達成は難しく、そもそもパリ協定自体がとても弱い枠組みになってしまったことを批判してきました。

私たちに残された「カーボン・バジェット(炭素予算。温度目標達成と整合する、温室効果ガスの累積排出量の上限値)」はほとんどありません。一刻も早く、社会全体の脱炭素化を行わなくてはいけません。しかし、温室効果ガスの排出は増え続けています。1.5℃目標達成のためには、2030年前でに2018年比で55%の排出削減を行わなくてはいけません(UNEP Emissions Gap Report 2019)。

現在の気候危機に対する責任が大きく、資金や技術を持つ先進国にこそ大きな削減義務があるはずですが、目標引き上げや次回の長期資金目標に関する交渉結果は乏しく、途上国にとって残念な結果に終わりました。

 一方で損失と被害の賠償責任を認めないという文言をどうしても含めたかった米国の主張は日本を含む先進国に支持されたものの、途上国の強い反対で最終的に落とされました。今回のCOPで損失と被害に関する支援強化のための専門家グループとサンティアゴネットワークの設立も決定され、それは評価できる点といえます。

来年のCOP26はスコットランド・グラスゴーで開催される予定で、4年連続ヨーロッパでCOPが行われることになります。特にアジアやラテンアメリカの途上国や市民社会の参加への負担は大きくなるので、参加の機会確保が課題です。また来年は京都議定書が終わり、パリ協定が始まる年でもあります。この10年は「(再び)失われた10年」と表現されることもあります。排出は増え続け、被害は拡大しています。パリ協定の実施はそれぞれの国にかかっていますが、各国が公平性をもって削減に取り組むためルールや、1.5℃目標達成のためにどのように各国目標を引き揚げさせるのか、国際市場メカニズムなどの誤った対策を推進させないためにもCOPの場での戦いも重要です。

FoEグループはこれからも現場でたたかう人々とともに、グラスルーツの取り組みを進めるとともに、国際レベル・国内レベルの政策をウォッチしていきます。

*COP25の交渉結果・合意内容に関する詳細な報告は後日掲載予定。

(深草亜悠美・高橋英恵・小野寺ゆうり)

 

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